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ファイアーエムブレム:外伝“八神将と人竜戦役”

返信数:16  最終更新:2011-05-16 00:33

ファイアーエムブレム封印の剣、ファイアーエムブレム烈火の剣に於いて、未だ語られることのない人竜戦役の話。
全てフィクションです。


○八神将とは○
人竜戦役で活躍した人類側の英雄。英雄ハルトムート、小さな勇者ローラン、狂戦士テュルバン、騎士の中の騎士バリガン、神騎兵ハノン、大賢者アトス、聖女エリミーヌ、謎多き者ブラミモンド、の八人。戦役後は、各地に分かれて復興に努めた。
(Wikipediaより抜粋)


○人竜戦役とは○
エレブ大陸で千年前におきた人類と竜族の間の戦争。人類の侵攻に端を発した。当初は個々の能力が圧倒的に優る竜族が優勢であったが、次第に個体数に勝る人類が戦線を覆していった。これに対して竜族は生体兵器「戦闘竜」とそれを大量に生み出す母体「魔竜」の開発に成功、数的不利を挽回し、戦線は膠着状態に陥った。そこで人類側は決戦兵器「神将器」を「八神将」に託し、「魔竜」の篭る竜族の拠点「竜殿」を襲撃。しかしその戦闘において竜族と「神将器」の強大な魔力が相干渉し、「終末の冬」と呼ばれる事象が起こり、竜族はその個体能力を激減させてしまった。結果、人類は戦争に勝利し、生き延びた竜族はエレブ大陸から追われる事となった。
(wikipediaより抜粋)


○話の形式
話は原作通り章ごとに。
登場人物の性格について、既に公式で決められているのはそれに合わせます。それ以外は創作です。


厨2全開、黒歴史メーカーなんて気にしません。
自己満足。

投稿
──ローランは同じ夜、自室にて本を読んでいた。──


「何故だろうな、ふいに資料が読みたくなるとは。」
ローランは棚に置いてあった竜についての本に目を遣っていた。
『人に於いて恐ろしく、脅威となるモノ、竜。彼らは我々の前に現れ、妻子を喰らっていく。山に入っては生き物を捕らえ、糧として喰らう。吐く炎は幾万度にも達し、モノを全て焼き尽くす。竜は‥‥』
人と竜の戦いが始まって、この類の書物が世に出回るようになった。人は叡智を持って竜に挑む、それを象徴するかのような社会現象であった。人々の間では、この様な本が流行っていた。
「何故このような戦いになってしまったのか‥‥‥。竜だって平和を望んでいるだろうに。」
部屋を照らす蝋燭の炎がゆらゆらと揺れる。
そこへ戸を叩く音がした。
「‥‥? 誰だ、入って良いぞ。」
扉は静かに開いた。オスロだった。
「すいません、こんな時間に。なかなか眠れないもので‥‥。」
彼は静かに頭を下げ、近くの椅子に腰を下ろした。
「そんなんで訪ねたのか。」
ローランは薄ら笑いを浮かべて、机の上の本を閉じた。
「その本は‥‥。」
オスロは本に気づき、興味を示したようだった。「俗世によくあるような本だ、竜についての記述がなされている。」
ローランは少し俯き、何かを考えているようだった。カーテンが静かに揺れる。しかし風はない。風ではない。蝋燭の火も不穏な空気を悟るかのように落ち着かないでいた。
「竜のことで気になることがあるんですね。」
オスロは何かを感じ取ったようであった。
「気にしないでくれ、誰だって考え事の一つや二つはあるさ。」
ローランは額に空いた穴を隠すような表情を浮かべ、オスロの視線を遮った。
「遅くにすみませんでした、誰かと話がしたかったもので。少しほっとしました。」
彼は一礼して部屋を出ようとした。おや、と壁に目を遣ると、一つの絵画の表面に黒いゴミがついているのに気づいた。
「あぁもう、綺麗なのに台無しじゃないか。こんな時に不吉だ。」
とゴミを払おうとすると、それはなかなか落ちなかった。くっついているのではないが、どうしてか落ちない。彼は思いっきり摘み、そのまま屑籠に入れた。そして何もなかったかのように出て行った。

一人残ったローランの部屋を静寂が包んだ。時折外から聞こえる啜り泣くような音が、少し怖くも感じた。
床についたローランをイヤな胸騒ぎが襲う。しかしそのまま彼は静かに寝てしまった。
∽第7章:忍び寄る影∽

「‥‥イドゥンよ、そなたが此処へ連れてこられた所為は分かるか?」
男は一人の少女を目の前に、そう言った。
「私で‥‥何か力になるんでしたら‥‥‥。」
少女は今にも崩れてしまいそうな表情で、眼前に迫る脅威に、恐怖と尊敬の念を持って受け止めようとしていた。
「わしらの為なのじゃ、可哀想だが仕方なかろう。」
一人の長老が言った。彼も男と等しく、体が大きく膨大なエネルギーを体に持つようだ。
その長老は、他の長老達と共に、少女を囲んだ。彼女は面を上げる様子もなく、ピクリとも動かなかった。先ほどの男が床に模様を焼き付けていく。赤い髪と眼、彼には容易いことだろう。少女を術式が囲む。一つの線から線までが不気味に光り出した。
「済まないな、娘よ‥‥。」
光が辺りを包む頃、長老の小言だけが、やけに大きく響きわたっているような気がした。






遙か聳えるハルモニア山に、不気味な天然の岩山、竜にとっては恰好の住処だ。現にそこには何匹もの竜が巣喰い、アジトを形成していた。
そんな砦の最奥部にある小部屋では、軍議がなされていた。
「我々の消耗は激しく、長期戦による善戦は期待できないかと。ここは長老様達が“アレ”に成功するまで待った方が良さそうだ。」
また彼も図体が良く、この軍の参謀を務めているようだ。
「そうか、では引き続き火竜石による力の抑制を行った方が良さそうだ。ニンゲン共の中には優れて魔道に秀で、我々の力を汲み取り場所が分かる者もいると聞くからな。」
隊長らしき風貌の男はそう言って席を立つと、その場を後にした。
「では引き続き隠遁を続ける、何かあったらすぐに知らせてくれ。ニンゲン達に見つかったら戦が始まる。しかし今は戦力が足りないのだ。君達も戦いたくて疼くだろうが、どうか堪えて欲しい。」
軍師は質素な石室の質素な机に似合わないような、赤い花瓶に入った一輪の花を見つめてそう言った。他の男達も椅子から立ち上がり、彼に一礼してその場を去った。彼は一人石室に残った。

──見てろ人間共め今に私は奮起してみせるさ。この平和な大陸の和を乱し、荒らした罪を‥‥屈辱的に贖罪させてやる──
「やぁ、みんなどうだい、作戦の程は。」
そういって夫妻は、テーブルの脇にあるソファーに腰を下ろした。
「これはこれは、公爵様、いかがなさいましたか? 未だ取り決めが終わっていません、何かご用がなければ‥‥」
とそこで、公爵は遮るように
「勿論ありますよ、ローラン殿。私もこの作戦に参入させていただきたくてね。」
顔色一つ変えずにそう言った。
「なりません、貴方様にはここの指揮をとって戴きたい。ここを離れて貰うわけにはいきません。」
ローランが言うと、顔色一つ変えずにこういう。
「指揮なら妻がとれば良い。私の妻は有能でね、才色を兼ね備えている。一人居れば十分さ。」
「そうね、貴方がいなくて少し心細くなりますわ。」
妻が合わせて返す。そこへオスロが割入った。
「何か狙いがあるんですね、公爵という身分の方がここまで話に入ってくるとは。」
的を射たのだろうか、公爵はソファーの脇にある観葉植物に目を遣った。
「君達はアトス様を知っているかい?」
「はい、かの大賢者様ですね。」
とローラン。
「私は彼に会いに行きたい。私事も兼ねてだが、この度の戦についてちょいと助けになると思うんだ。」
「助け‥‥ですか?」
七人はそっと、公爵の話に耳を傾け始めた。
「エルヴィン侯爵家の要請のことは私も知っている、そこでアトス様が竜に対抗する武器を精製なかさったそうだ。私はそれを受け取りにいく。」
立ち上がって彼は窓辺まで歩み、窓とレースのカーテンを広げて、続けた。
「そこで、その強力な武器を扱えるような猛者達に、この度の戦への加担を皆に要請頼みたい。こういうのもなんだが、多分、君達五人ではまだ足りない。この世で最も優れた各武器使いが必要だ。」
黙って話を聞いていた七人だが、エルドルが口を開いた。
「じゃぁ情報模索に加えて、その人材探しと言ったところか。大変だな。」
「あてもなく探すんですか? 私には荷が重そうですわ。」
とメシレル。そこでローランが尋ねた。
「もし見つからなかったり、協力を拒否した場合にはどうなさいます?」
「心配ない、かのアトス様の要請だ。みな話を聞くに違いない。それに本当に優れた武人であれば、協力を惜しまないだろうと信じている。」
「分かりました。では、皆よ、作戦に以上のことを追加する、心してかかれ!」

気が付くと、もう昼を過ぎていた。太陽が西に傾く頃は最も気温が高くなる、宮廷も負けないくらいに輝き、そして冷静でいた。
∽第6章:行動へ∽

暁光の隙間から、木の葉の隙間を縫って小鳥のさえずりが響きわたる。ハルモニア山は、リキア−サカ間に聳える自然豊かな山だ。たくさんの生き物が住み、人間の手が殆ど行き渡っていない、自然の要塞のような山だ。


「5大隊長がお見えです、ローラン殿失礼します。」
翌日、応接間に7人は集まった。昨夜はゆっくり休養をとったのだろう、顔が幾らか冴えているように見える。
「これから各々5大隊に行動して貰う。これより5大隊はそれぞれ番号で呼ぶから覚えておいてくれ。」
そう言うと、ローランは机に置いてあった四つ折りの紙を見せた。
「1大隊はエルドル、2はマナハ、3はカルラ、4はフリード、5はメシレルだ。」
紙を文鎮で机の端に固定し、次に地図を取り出した。
「これから1〜5大隊にはそれぞれ、ベルン・イリア・サカ・リキア・エトルリアを調査して貰う。一応の交戦の時のため、こちらからは各地方に使者を送るから、頭に入れて置いて欲しい。」
「そんなんで平気なのか? ベルン地方みたいな血の荒ぶった戦闘貴族集団の領地を侵すのでさえ、俺には無謀な作戦だと思えるが。」
エルドルが口を挟んだ。
ローランには想定済みのことだったらしく、すぐにこう返した。
「そこで、一人の雄王を頼ることにする。名はハルトムート。ベルンで最も有力な公爵だ。彼は武力だけでなく、叡智も兼ね備えている。我々の言葉を受け入れてくるだろう。」
そこへオスロが口を挟む。
「しかし、幾ら叡智があろうと、彼も立派な軍人です。そう簡単に我らの行動を受諾するでしょうか‥‥?」
オスロの経験だろうか、とても心配そうな面持ちだ。
「心配ない、実は私は彼と面識がある。そんな人物ではないと私は心得ている。」
「分かりました、ではその言葉に賭けてみます。」
まだ表情は変わらないが、受け入れてくれたみたいだ。
「ありがとう、オスロ。」
するとカルラが口を開いた。
「サカは私の出身地だから分かるけど、遊牧民族よ。調べるも何も、不穏な空気なら父なる天が教えてくれるし、少し周りと違うくらいはすぐに分かるけど。」
サカ平原は確かに遊牧民が暮らす、自然を愛する民族だ。言うことは確かに納得できる。
「では、カルラを中心に、何かあったらすぐに報告をしてくれ。おそらく、竜の情報が最も少ないところだとは分かってはいるが‥‥。」
とローラン。
「分かった。」
すると、そこへリグレ公爵夫妻が入ってきた。
オスロは歓声の中、ゆっくりと前に立った。

「皆さん、初にお目にかかる人もいると思います、オスロと申します。この軍の軍師としてやらせていただいてます。」
周りを見渡して、話を続けた。
「今日は軍隊を隠密型に振り分けたいと思います、静聴下さい。」
オスロは軍の振り分けを簡潔に話した。あちらこちらから、感嘆の声が聞こえる。
「詳しくは宮廷大広間に掲示します。各個、しかと頭に入れて置いて下さい。」
ローランとオスロは、殆ど時間がないにも関わらず、分配を済ませてしまった。しかし二人の顔には疲れが見えず、遠くを見通す目だけが特に印象に残るほどだった。
「解散の前に、エルヴィン侯爵軍長エルドル、リキア伯爵軍副長マナハ、リグレ公爵軍騎士長カルラ、魔道長フリード、祭司長メシレルはこの場に残って下さい。少し話がありますので。」
初めての集会にも関わらず、何のいざこざもなけ終わった。太陽は西に少し傾いているが、広場には輝かしい陽光が降り注ぐ。

「しかし‥‥フリード、まさか君がこんなにも実力者とはね。隠居してるから、てっきり非正規兵なのかとばかり‥‥。」
ローランは最初に口を開いた。
「公爵様のお客方にはよく言われますよ、普通居ないですからね、こんなの。それより‥‥、話というのは?」
言われて気が付くようにローランはこう返した。
「おっ、すまない忘れていたな。オスロ、お願い。」
ローランに言われ、オスロは口を開いた。
「はい。ここであなた方を集めたのは、分けた5大隊のそれぞれ隊長になって貰いたいからです。貴方たちは実力者ですから、他に任せられません。」
5人は動揺を見せずにただ聞いていた。
「急な話だな、まぁ俺に異論はないが。」
とエルドル。
「私で適役なら、嬉しいです。」
とマナハ。ローランは聞くやほっとした様子だった。
「まぁ取り敢えずそういうことだ、カルラもメシレルも問題ないね?」
「命令なら。」
「異議はありませんわ。」
返事を聞くと、オスロは5人に隊のリストを渡し、目を通すようにと話した。また、今後の進軍の様子を事細かに話し、気づけば外は紅蓮色に染まっていた。それぞれを部屋に帰し、2人も部屋に戻った。

ローランはただ心配な事があった。もしこの作戦で竜と交戦してしまった場合のことだ。逃げられればそれで良いのだが、その後の対処についてだ。彼は椅子にもたれ掛かり、蝋燭で照らされた薄暗い部屋の中で長い間考え、そのまま就寝した。
∽第5章:分隊∽

その日、ローランは朝早く起床した。少しの間静かに窓の外を眺めていたが、一つ昨夜の会議で話し合うことを忘れていた、と足早に寝間を後にした。
ドアを頻りにノックする音でオスロは目を覚ました。未だ日の昇らぬような早暁の事である、彼は少し不思議に思った。ベッドからおもむろに起き上がり、まだ冷えた床を足の裏全体で感じながら、彼はドアへと近づいた。ドアを開くと、そこにはローランが立っていた。

「こんな時間にすまないな。一つ、軍事集会の前に話し合わなければいけないことがあってね。」
ローランは、同盟軍全体のユニット別総計人口リストを机の上に開いた。
「まずはこれを見てくれ。軍を分けるに当たって、やはり大中小隊内でのユニット比率を揃えなくてはならない。隠密行動だが、万一の場合に備えて戦闘態勢を敷かなければならないからだ。その分配を今、速やかにやりたいと思う。」
オスロは一通り目を通したが、浮かない顔をしてローランにこう問いかけた。
「この多さ、今すぐにできるでしょうか? 暫定振り分けならば、そんなに時間を要さないとは思いますが‥‥。」
「問題ない、それでいくつもりだ。」
ローランは顔色一つ変えず答えた。
「しかし‥‥、暫定ともなると、また曖昧な情報のために、軍の中でも混乱があるのでは?」
オスロの心配はそこにあった。過去にオスティア軍を編成する際にも、やはり混乱が起こっていたからだ。
ローランは少し考えるように黙った。紅茶を一口口にし、答えた。
「ならば今終わらせれば良い話だ。小話をしている暇が無駄だ、今すぐ作業に取りかかるよ。」
二人は長らくの間議論を重ねていった。最初は真っ暗なうちに集まった二人だが、夜が更けた後まで疲れを忘れて取り決めをしていった。

日が丁度真南の最高高度に達した頃、城門付近の大広場で大集会が行われた。軍に所属する兵士も多いが、中には希望民兵も何人かいた。
「よくぞ皆集まってくれた。これより、我が同盟軍たちの同志諸君のための集会を行う。内容については、こちらのオスロから話をしてもらう。」
ローランの威勢の良い声で、集会は始まった。兵士たちは一同、前に立つオスロの姿に注目した。
公爵は続けた。
「多くの貴族が危ないことに気づいてはいるだろうが、みな自分の権威を死守することに夢中さ。でも誰かが変えていかなくてはならないんだ。」
彼は青年の蒼目を見てしばらく黙り込んでしまった。どうしてか、ローランも動くことができなかった。
「公爵様、言わずとも彼らは分かっています。それだから此処まで足を運んできたのですよ。」
フリードが口を開いた。彼は横目で合図を送った。ローランの表情がゆるみ、続けて言った。
「どの貴族が何をしようと、我々の意志は変わりません。オスティアを出る時から、もとより覚悟は決めていました。」
彼の態度を見て公爵は立ち上がった。
「よし決まりだな! これより私達は盟友だ。お互いを頼りにしていこう!」
謁見の間に歓声が溢れた。今日ここに希望の光が現れたのだ。それも世に珍しい、辺境の貴族と都会の貴族との。

ローランは客間に戻った。くつろぐ暇もない、すぐにオスロを呼んだ。
「竜の居場所は未だに不確定だ。これからどう動いていくかを考えてもらいたい。いくつか考えてみたのだが‥‥やはり君の意見も聞いておきたくてね。」
机に地図を広げて、ローランは神妙に語る。いくら広大な屋敷とは言えど、この大部隊を長らく屋敷に泊めておくわけにもいかない。速やかな行軍計画が必要になる。オスロは閃いたように口を開いた。
「まずここは、各国からの情報を収集するのが先決ですね。まだ何も分からないのに下手な動きをすれば、出頭を叩かれてしまいます。私が思うには、軍をまず5大隊、そこから50中隊、それを10小隊に分け、1小隊4人の10000人体制で隠密行動に出るのはどうでしょうか。広い範囲を知るのにも、それなりに人員が必要になるでしょうし。イリア・サカ・ベルン・エトルリア・リキアの5地方を大隊ごとに配置、それから諸侯領ごとに中隊を配置していけば良いかと。勘違いされては困るので、予め諸侯にも協力要請を出せば問題はないかと。」
その他、事細かな計画を話した。流石先代から仕えているだけあって、その内容はとても深いものであった。
「やはりオスロは有能だ。まさかこんなにも具体的なモノとはね。やはり君の案を採用しよう。これは明日の集会で伝えるが、構わないか?」
「問題ありません。」
オスロは机の上の紅茶を飲み干すと、ローランに声をかけた。
「今夜はもう遅いですから、どうぞお休み下さい。」
ローランとオスロは部屋へ戻った。暖かな夜だった。
ローランの関心は、すっかりその青年の言葉にあった。青年は微笑しながら、続けてこう話した。
「これはこれは、失礼しました。申し遅れました、私、リグレ公爵家に仕えているフリードと申します。貴方がたの訪れ先が我が主のところとは、また運命的な出会いを致しましたね。」
フリードと名乗る男、どうやら本物の様だ。山奥で魔道の研究に勤しんでいるのだろう。外というのに、辺りには書物が積み重なっている。
「貴殿は今は暇か? 良ければ公爵家までの安全なルートを案内してもらいたい。」
ローランが尋ねると、青年は快く了解してくれた。彼は、恩に着ると礼を言った。


支度を済まし、軍はフリードの案内のもと、山を下っていった。オスティア側とは違った山麓の不思議な景色が広がる。反対側では反乱していた河の数々だが、こちらは穏やかに流れながら軍に沿うように流れている。
エトルリア地方に入ってからは、何事もなく行軍が進み、リグレ公爵家までたどり着くことができた。最初は軍を見て何事かと思った番兵達だったが、状況を察して中へ招き入れた。公爵家は外から見ても分かるように、とても広い敷地を持っている。商業も文化も盛んなエトルリアならではの建築様式である。並んでリグレ公爵家は多くの私兵を持ち、エルヴィン侯爵家の軍勢を遙かに凌ぐほど。助力してもらえるならば、今回の行軍も成功に納まり、戦力の著しい拡大が望める。フリードの案内で、屋敷の奥にある謁見の間へと導かれた。
未だ若干若いところが残りながらも、魔道と執政の腕は確かにある、容姿もしっかりとした男性が待ちかまえていた。
「この様な御時世に遠方遙々と、ここまで御苦労様です。大したおもてなしができるかは分かりませんが、どうぞごゆるりと。」
礼儀正しく挨拶をすると、ローランも同じように挨拶をした。通例、伯爵の身分の者と侯爵の身分の者が、この様に同等に挨拶を交わすことは少ないが、そこの所からも彼の人格の良さが伺えるだろう。
「この度の大陸全土の戦いに起きまして、我々リキア地方にも竜達の力が及んで参りました。まだ大した動きはないモノの、これ以上の静観は民達の生活を脅かすばかりです。しかし、それにはまだ力が足りません。この度、貴公等のご助力を賜りたく、この様に参りました。」
真摯な思いを伝えようと、ローランは力説した。
「私たちも竜達の動きには常に目を見張らしてはいるが‥‥、うん、確かにここ最近の動きには不穏な物が多いね。」
∽第4章:峠を越えて∽

二日後の早暁に、軍は城を跡にした。目的のリグレ公爵家は、エトルリア地方の南西に位置する。行軍が上手く行けば、恐らく10〜15日で到着するだろう。

長閑な田園風景を眺望しながら、隊列は山間へと入って行く。美しい自然の環境音と動物たちの鳴き声が、ハーモニーを織りなして軍を歓迎する。
先頭のローランが足を止めた。
「‥‥? 何だこの音は?」
水平線の彼方から聞こえる轟音、確かにそれはローランの耳へと入ってきた。
「斥侯を出す。誰か私と共に来てくれ。」
ローランの期待に応えようと、数多の兵士が名乗りを挙げた。普段甲冑からは見えない兵士たちの笑顔が、見える気がした。
ローランは軍の兵士たちを一人一人よく知っている。今回はリグレ公爵家への遠征になるから軍は莫大な人数ではないが、それでも1万はいる。その兵士たちを各々知るのは大変なことだが、彼はよく知っていることこそ上役の役目、纏めるときにも纏め易くなるからと、わざわざ一人一人覚えているのだった。
そんな彼だ。この数多の挙手から一人を絞り、手を取って先へと進んだ。


「川が氾濫している‥‥。」
ローランは表情を歪めた。
「いかがなさいます? この辺りに迂回ルートがあるか、兵たちに聞くのが宜しいかと思います。」
無理もない、この辺境の土地だ。知っている者の方が少ないだろう。川はあざ笑うように波を立て、静かに激しく流れていた。


斥侯の報告によって、やむを得ず峠に進路を取った軍は、オスティア−エトルリア間の山岳を進んでいた。空は青々と澄んで、行軍は順調に進んだ。
山の中腹に差し掛かるところで、一軒の小屋を見つけた。この何もないところに誰が、と疑問は湧くものの、民間人の生活を脅かしてはいけない、として関わらずに歩を進めた。
しかし、軒先に一人の若いローブを羽織った青年がいた。年齢は20を超すか超さないか。隊列に気づくと、笑みを浮かべて近づいてきた。
「この様な辺境まで何か? 私は決して禁断の闇魔法なんか開発してませんから、どうぞお帰り下さい。」
何か勘違いをしているようだ。オスロが後ろから現れて、事の経緯を説明した。男は状況がようやくつかめたらしく、再び口を開いた。
「おぉ、貴方達は我が主の御客人であったか。これは失礼しました。」
兵士達を見回して、何か考え事を始めたが、ローランがそれを遮るように言葉の真意を聞いた。
「我が主‥‥とは?」
夜になると、峠は闇に飲まれる。月明かりが何とか照らすぐらいだ。昼の内の行軍を余儀なくされ、ローラン達はできるかぎり急いで進んだ。
峠の道はあまり舗装されておらず、輸送隊は山の麓でキャンプを強いられた。

坂が緩やかになる頃、隊の眼前に古びた砦が現れた。人影はないが、草木が踏みつぶされている。そこを獣が通っている。確信を持って前へと進んだ。

‥‥見張りに気づかれたようだ、静まりかえっていた砦がヤケにざわついている。
「各小隊、前へ!」
ローランの指示と共に軍は砦へと突っ込んだ。敵の戦陣が現れた。
「重装歩兵隊は盾を重ねバリケードを張り、敵を怯ませろ! 剣士隊は遊撃を、弓兵隊は後ろから援護せよ。」
巧みな戦術を使って先陣を斬り、砦の中へとなだれ込んだ。勢いのついた軍を押さえられず、賊たちは次々に追撃を許した。
赤いカーペットの敷かれた広い部屋に出た。賊長と思わしき大男が居る。
「聞けっ! お前たちの民への愚行は聞いている。数々の大罪、許すわけにはいかないぞ‥‥!」
ローランが叫ぶ。
「くっ、オスティアかそこらの正規軍と言ったところか。こちらとて飯を食べるにはやるしかねぇんだよ!」
賊長が返す。壁に掛けられていた狂牛の頭が鈍い音と共に床に落ちた。
その刹那、両方は衝突した。金属の固い音が悲鳴のように響く。斧と剣が交錯し、接戦となった。
次の瞬間、ローランの剣が賊長の腹をとらえた。
「くっ‥‥くそが‥‥!」
彼は凍ったように動かなくなり、そして力が抜けるように床へ倒れた。下っ端たちは混乱し、殉死する者もいた。八方に散り散りに逃げ、姿は見えなくなった。しかしローランは追撃をしなかった。兵士たちの治癒と安全を第一にし、彼らはテントへと戻っていった。初陣は成功に収まった。


後日、オスティア城へと報告に上がった。
「そうか。そなたの働き誠に見事であった。感謝するぞ。」
侯爵は満足そうな顔を浮かべ、手に茶と菓子を握る。
「お主も疲れたろう、休養は不可欠だ。少しここで休まれよ。」
そういってローランに茶を渡す。紅く光るその液体は、綺麗に澄んで底までもが見えた。

ローランは報酬と休養を受け取ると、また軍の訓練に戻り励んだ。これからが彼にとって重要な日々になってくる。
彼は他の誰よりも積極的に訓練に励んだ。部下からもその姿を尊ばれ、信頼を更に厚く築いていった。今日も城内は彼の威勢の良い声が響きわたっている。
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メーカー任天堂
発売日2003年4月25日
JANコード4902370506471
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