ストーリーモード、フリービルドモードを一通りプレイしてみての感想を。

良い点

ストーリー
ドラクエの外伝ということで、発売前までは例の如くストーリーはあって無いようなものだと思っていたので、今作にもさほど期待していなかったのだが、実際にプレイしてみるととてもよく考えられたストーリーだと感じた。
勇者が竜王に敗北した後のアレフガルドを舞台に、荒廃した世界を復興させていくことが本作の終始を通しての目的であり、専ら何かしらのモンスターを倒すことを目的としていたこれまでのドラクエシリーズと比較すると、かなり新鮮味があるものとなっている。
また、ストーリーの終盤では、竜王の誘いに乗ってしまった勇者の心理にも強く言及しており、終始興味をそそられるストーリーだと思った。

世界観
「世界はブロックでできていた」のキャッチコピー通り、見渡す限りの地形が全てブロックで構築されている。
このゲームはよくMine Craftというゲームと比較されがちだが、あちらはゲーム内に存在する全てのものをブロックで表現しているのでどうしても違和感があるのだが、こちらは木や花などのオブジェクトや登場人物はブロック化していないなど、ブロックで表現するものとしないもののメリハリがあり、さほど違和感を感じさせない。
また、リアルさよりもアニメのような可愛らしさを追求した温かみのあるグラフィックも、ドラクエの世界観にマッチしている。

操作性
今作もヒーローズと同様、主人公の操作方法はとても分かりやすくまとめられており、10分もプレイすればすぐに主人公を思い通りに動かせるようになっている。

自由性
今作の魅力は、何と言っても自己流の建物や街を建築できることにある。
使用可能なブロックや家具の種類などのコンテンツ数はかなり多く、概ね自分の思い通りの建物を建てることが可能。
また、ストーリーモードでは街の住人に”こんな部屋を作れ”、”あんな部屋を作れ”と依頼されるわけだが、基本的に指示されるのは部屋の中に置く家具の種類と最低限必要な数だけであり、プレイヤー毎に建物の形状や家具の配置が違ってくる点はかなり面白い。
ただし、中には設計図を渡されるケースもあり、これについては悪い点の方で詳しく後述したい。

チャレンジ
チャレンジとは、ストーリーモードの各章にそれぞれ設けられている隠されたミッションのこと。
普通にプレイしていては絶対に分からないようなものも多く、ストーリーモードだけでも十分やり応えのあるものとなっている。
ただし「○○日以内にクリア」という類いのチャレンジについては悪い点に後述したいと思う。

BGM
ゲーム内のBGMは歴代のドラクエシリーズのBGMをオーケストラ風にアレンジしたものだが、いずれも神曲揃い。
しかも各場面によく合っており、使い方も上手いと感じた。

悪い点

視点
屋外にいる間は特に気にならないのだが、天井のある屋内や洞窟などの狭小空間に入ると、壁や扉などに主人公が隠れてしまい、主人公の周囲がどういう状況になっているのか視認できなくなるような挙動が気になる。
一応R3ボタンで視点を修正できるが、それでもかなり悪い方だと思う。

UI
UI絡みの気になる問題点は主に2つ
以下に掲げる。

●アイテム作成時に個数指定できない
作業台でアイテムを作る際、1個ずつ(1度に複数個作るものの場合はその個数ずつ)作るか、持っている材料を全部使ってアイテムをたくさん(最大99個)作るかの2択しかない。
したがって、例えば材料はたくさんあるがアイテムを3個だけ作りたいとなった場合に、1個ずつ作ることを3回も繰り返す必要があり面倒。
作業台を使う機会は非常に多いので、すぐにでもアップデート等で修正してもらいたいところ。

●アイテムの持ち替え
主人公は同時にアイテムを10種類まで持ち歩けるが、アイテム欄は横一列になっている。
そのため、例えば左から6番目のアイテムにカーソルが合っている状態から左から1番目のアイテムを使用するためには5回も方向キーの左を押す必要がある。
普段はそこまで気にならないが、HPが残りわずかな状況ですぐにやくそうを使いたい場合などではかなり不便に感じる。
全く使わないR2ボタンやL2ボタンにアイテムをお気に入り登録して、すぐ使えるような機能があればもっと良かった。

敵との戦闘
まず主人公が装備できる武器に個性がない。
どの武器も使い方は敵に近付いて殴る、ただそれだけ。
一応大砲などのギミックを作って戦闘に活かすことはできるが、折角いろんなモノを作り出す能力があるのなら、リーチの長いヤリ、振ると魔法弾が飛ぶ杖、遠距離の敵を攻撃できる弓、周囲の敵全てにホーミングするブーメランなど、主人公の携行武器にもっと個性を持たせても良かったと思う。

また、敵の当たり判定が分かりづらく、しかも敵に触れるとダメージを受けるにも関わらず、武器のリーチが短いため敵にかなり近付く必要があるなど、戦闘面でのゲームバランスはあまり良くない。

設計図
DLCなどで配布されている設計図は特に問題無いのだが、主にストーリーモードにおいて、街の住人から設計図を渡されて”この通りに作れ”と指図されるのはいただけない。
設計図では必要なブロックや家具の数だけでなく、その配置の仕方までが既に決められており、そこにプレイヤーのセンスが介入する余地はない。
即ち、誰が作っても全く同じものが出来上がってしまうのだ。
各プレイヤーの好みが出来上がる街に反映されるゲームなだけに、それを阻害する要因になっていると思えた。

チャレンジ「○○日以内にクリア」
明らかにゲーム内容と方向性がずれている。
このゲームは時間をかけて、じっくり自分の思い描く街を作っていく過程を楽しむゲームなので、そもそも急いでクリアするというチャレンジ内容がゲーム内容とマッチしていない。

高さ制限
拠点の旗の高さから、上に31段、下に6段までブロックを積んだり掘ったりできる。
ストーリーモードではまず気にならないのだが、フリービルドモードでは大規模な建築をするとこの高さ制限に引っかかることがあり、それゆえにそういう建物を建てるのを諦めざるを得ない状況になることがある。
雲を貫くほど高い塔や、岩山の上に立派な城を建てたいと思っていた人は相当数居られるのではないだろうか?

ビルド石の範囲
ビルド石とはフリービルドモードにおいて、自分で作った建物をオンライン上に公開したり、逆に他の人が公開している建物を自分の島にダウンロードできるオブジェクトのことである。
問題なのはビルド石で公開できる範囲が、横幅24マス×奥行き24マス×高さ16マスとかなり狭いこと。
そのため、精々2~3階建ての小規模な建物しか公開できず、その気になれば巨大な建物も作れるのにとても勿体無いと感じた。

総括

ドラクエとブロックメイクの融合はシリーズ初の試みであるが、ドラクエのRPG性を崩すことなく上手くブロックメイクに落とし込んであり、両者の良さを引き出すことに成功している。
本作はここ数年のスクエニのゲームの中でも最高クラスの完成度を誇っていると言っていいだろう。

一方で、ストーリーモードについては概ね満足なのだが、肝心のフリービルドモードについては不満点が結構多い。
しかもその不満点が、悪い点に挙げたように、やり込めばやり込むほどに浮上してくるものがほとんどであった点が悔やまれる。
高さ制限やビルド石の範囲をはじめ、フリービルドモードなのに自由性の範囲が狭く、プレイヤーの創造意欲を断念させてしまう仕様が非常に惜しいと感じた。
本レビューにおいて、このゲームの評価を5つ星ではなく、あえて4つ星にしたのは、これが主な理由である。

しかしながら、大好きなドラクエの世界を自らの手で作り上げていく喜びは何事にも代えがたいものである。
私自身もまた、時間を忘れて没頭してしまうほどであった。
自由性の範囲が狭いと前述したが、それでも限られた範囲内であれば本当に自由なモノ作りを楽しむことができる。
もし、少しでも本作に興味を持っている方がいるなら、是非手に取っていただきたい、そんなゲームだと感じた。