お店や施設の住人のお話　〇フータ５〇

〇フータ〇
エピソード５「ムシ嫌いを克服します!」

【１話】
フゥ……
ここだけの話、わたくし筋金入りに苦手なんですよね、ムシ…
そ、そんなコト言われましても…
人には得手、不得手というモノがですね…
…分かりました
あまりイイワケばかりしているのもなんですし、
なによりわたくしは△△村の博物館長!!
多少のムシぐらい平気で触れるようにならねば!
とりあえず後ほど妹のフーコにでも相談してみますです!
妹はね、意外と平気なんですよね、ムシ…
たまにチョウチョとか眺めて、ウットリしてるぐらいですから
どこが?!
あなた、チョウチョのお腹とか見たコトないんですか？
プニプニしてて、今にもプシュッって汁とか飛び出しそうで…
ああ、キモチワルイ…


【２話】
ムー……
こないだわたくし、ムシ嫌いを克服するって言いましたけど…
あれから毎日、特訓をしてるんです、ハイ
それはもう過酷な特訓でしてね…
思い出すだけで目が回りそうになるんですけど、
「大昆虫図鑑」あの大きな図鑑をガバッと開いて…
ムシの写真をオモムロに触るんです
うわぁ… もう思い出すだけで脂汗とか出てきちゃいました!
こないだなんかイモムシの顔がアップになった写真を見ていたら、
だんだん眩暈がしてきて…
ああ、キモチワルイ…


【３話】
ハァ……
ムシ嫌いを克服する特訓なんですけど、芳しくなくって…
昨日も「大昆虫図鑑」片手に床に突っ伏しているトコロを、
妹に揺すり起こされ呆れられる始末ですよ…
エエ…ここまで相性が悪いと、むしろ切ないぐらいですよ!
切ないといえば夏にはこんなコトもありましたっけ…
あなたの手の平ぐらいあるでっかい「ガ」がですね、
夜中に突然この博物館に飛び込んできたんです!
あぁー… なんか思い出しただけでブルーになるんですけど、
結局あの夜はマスターのトコロにかけこんで、コーヒーをチビチビやりつつ
「ガ」が出て行くのを待ってたんですよね…
朝になるまで!
いやはや、あれはわたくしの人生の中でも、指折りの切ない体験でしたよ…


【４話】
ウムム……
ムシ嫌い克服の特訓を続けて大分経ちますけど、
一向に効果が出てくれなくって…ちょっとブルーなんです
これでもわたくしにだって目標があってですね、
夏にはフーコをキャンプにでも連れて行ってやりたいんですよ…
あのぐらいの年頃って、まだまだ遊びたい盛りでしょ？
だからですね…頼れるアニキと星空の下でキャンプ!
コレに喜ばない女の子なんているハズないですよ
いやぁ、思えばわたくし、これまで頼りないアニキでしたからね…
海に行ってはフナムシがいてキモチワルイ…
山に行くとモンシロチョウですらキモチワルイ…
言ってて情けなくなってきちゃいますよ


【５話】
ホホー……
恥ずかしながら、ムシ嫌い克服の特訓の件…
あれ、ヤメにしましたです、ハイ
昨夜も「大昆虫図鑑」をツンツンしているうちに、
いつのまにか気絶していたわたくしなのですが、
目を覚ますとフーコのやつがカイホウしてくれてまして、
こんなコトを言うんです
「おにーちゃん、もうやめようよ…」
「人に苦手なモノがあるのは当たり前じゃない」
「それも含むておにーちゃんはおにーちゃんだから…」って
…わたくし、生まれてこのかた、こんなに嬉しかったコトはなかったです、ハイ!
ふだんあまり構ってやれないというのに、
フーコが優しい子に育ってくれていて…
わたくしは本当に嬉しいんですよね、ホホー!
こんなスバラシイ事は世界中のアカデミーの論文を紐解いたって、
めったに載ってるものじゃありませんです、ハイ