どうも、キューホもろくに進行しておりませんが、ブログの方で連載していたポケモン小説が完結したので、楽が出来・・・じゃなくて、より多くの人に読んでもらおうと、ここにも載せます。以下注意点。
・基本なんでも有り。擬人化(?)らしきものも
・意味もなく暗くなるかも
・チートまがいな技を発動するかも
・キャラ崩壊の危険性有り
・時代はイッシュ地方だけど、基本ガン無視。
・一応、時間的にはBWのED後、七賢人を見つけた後くらい
以上が許せる奇特な方はご覧下さい^^
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mochizo No.10780044 2011年03月10日 00:27:59投稿
引用
「俺の事、弟子にしてください!」
PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第一話「弟子にしてください!」
「え〜、ヤダ。」
「お願いしますっ!!」
「ヤダ、帰れ。」
こんなやり取りが、かれこれ2時間近く続いている。
(粘りますねぇ、あの子…。)
半ば呆れ顔で、眼鏡をかけた青年—燭陰(ショクイン)は、2杯目のコーヒーの残りを飲み干した。彼の視線の先には、必死に頭を下げて懇願する少年と、それを冷たくあしらいながらノートパソコンを操作している女性がいる。少年とは今日初めて会ったが、女性の事はよく知っている。
「師匠、イヅチ君の話くらい聞いてあげても良いのではないですか?」
燭陰は、少年—イヅチに助け舟を出すように、師匠と呼んだ女性に声をかけると、女性はこの上もなく不機嫌そうな顔をして、言い放った。
「うっさい、んなことはアタシに勝ってから言え。ボケ。」
燭陰は彼女に弟子入りしてから、数年経つのだが、相変わらず半人前扱いのようだ。師匠が溜め息をつきながら、イヅチに聞いた。
「大体、ここカントーも隣のジョウトも有名なトレーナーは多いだろ。なんでアタシなんだよ?」
「シロナって人から、師匠の事を聞いたッす!」
「…やっぱりか、あのボケ女。」
イヅチの口から出たのは、カントーから遠く離れたシンオウ地方のチャンピオン、シロナである。実力者中の実力者を『ボケ女』呼ばわりしている辺りから、あまり彼女に対して、いい思い出を持っていないようだ。
「で、そのボケシロナはアタシの事、そう言ってた?」
「ポ、ポケモンマスターに一番近い人…だって、言ってたッす。」
質問に素直に答えたイヅチの顔を師匠は、初めて一瞥した。
「ふぅん、そうなんだ。で、あんたはポケモンマスターになりたい…と。」
「はいッす!」
「ふふっ。」
彼女の問いに意気込んで答えたイヅチの姿を見て、燭陰は思わず吹き出してしまった。おかしかったからではない、同じ理由で彼女の元にやってきた者は、イヅチが初めてでは無かったからだ。
少なくとも、ただで断られる事は無いだろう—燭陰はそう直感した。
—続く—
mochizo No.10780050 2011年03月10日 00:29:24投稿
引用
「テメー、何笑ってんだよ?」
「いえ、別に。」
まるで昔の自分みたいだ、などとはとてもじゃないが言えない。罵詈雑言が飛んでくるのは、火を見るより明らかだ。
「つってもよ〜。アタシの所にいて修業したトコで、ポケモンマスターになれる保証なんてねーぞ。」
正直な所、燭陰もその意見には同感だった。燭陰自身もポケモンマスターになる修行などした事はないからだ。それでもイヅチは食い下がらない。
「それでもいいッす!師匠のもとでバトルの修業を積むッす!」
「弟子にするとは言ってねー。」
実の所、師匠がこの様な態度を取る事は珍しい事ではない。燭陰以外にも弟子は何人かいるが、誰一人として楽に弟子入りした訳ではない。
「・・・帰る。」
「はい。」
「ちょっ、待ってください!」
突然師匠がノートパソコンをたたみ、席を立ち、カフェテリアから出て行った。大して話も聞いてもらえずに席を立たれて、困惑しつつ後を追おうとするイヅチだが、彼の肩をポンッと叩いて燭陰が囁いた。
「なるべく頑張ってついて行った方が良いですよ。見失うと、弟子入りも何もありませんからね。それではお先に。」
それだけ言うと、燭陰は早足で歩いていく師匠の後を追っていった。他人事ではなく、自分も彼女を見失うと夕食抜きになるからだ。ハッと我に返ったように、イヅチもその後を追う。
二人より先にポケモンセンターを出た師匠は、ボールベルトにセットされているモンスターボールから、一つを取り出し、軽く投げる。空中でモンスターボールは開き、閃光と共に、青空の色を映したような蒼い巨体と燃えるように紅い翼を持つポケモンが現れた。ポケモンの名は、ボーマンダ。数多く存在するポケモンの中でも希少なことで知られるドラゴンタイプのポケモンだ。
師匠は迷うことなくボーマンダに飛び乗ると、手早く指示を出した。
「帰るぞ、オウリュウ。ただし、いつもの三分の二の速度でな。」
指示に対し、オウリュウは頷くと、翼を羽ばたかせ、巨体を浮かび上がらせ、加速して飛び去った。
「少し早すぎるんじゃないですかね・・・。」
溜め息をつきながら、燭陰も自身の飛行用ポケモンであるシンボラーに乗って、師匠の後を追う。ここから拠点としている場所までは、そこそこ距離がある。今のオウリュウの速度なら、追いつく事は簡単だが、わざわざ無理をして速く飛ぶ事も無いので、見失わない程度に距離をとってついて行く。しばらく飛んでから振りかえると、イヅチを乗せたオニドリルが猛スピードで追ってくるのが見えた。その様子を見て燭陰は呟いた。
「あんなにとばすと体力がもちませんよ。」
−続く—
mochizo No.10780052 2011年03月10日 00:30:35投稿
引用
師匠がポケモンセンターを出てから1時間半程経った。空が次第に紅く染まるなか、イヅチはまだボーマンダを追っていた。かなり速度を出しているせいか、兄弟子と思われる眼鏡をかけた青年と彼を乗せたシンボラーは追い抜いてしまった。それでも、ボーマンダとの距離は一向に縮まっていないように感じられる。
「急がなきゃ・・・。オニドリル!」
更に速度を上げようとオニドリルに指示を出そうとしたイヅチをいつの間にか追いついてきた燭陰がたしなめた。
「無理をしてはいけませんよ。バテて動きが遅くなれば確実に見失ってしまいますからね。」
「じゃあ、どうすれば良いんッすか!?」
自分でもやつあたりに近い物言いとは思ったが、イヅチの口調は激しくなってしまう。
「私は、見失わない方が良いとは言いましたが、追いついた方が良いとは一言も言ってませんよ。」
にこやかに燭陰が言ったその一言にイヅチはハッとした。そんなことにも気付かないなんて、よほど自分は焦っていたのだろう。彼の言うとおりだ、オニドリルに無理をさせるべきではない、そう判断し、ボーマンダの姿を見失わない様に注意しながら、速度を少し落としてついて行くことにした。
やがて、空がうす暗くなり始めた頃、ボーマンダは、ある川の上流にある湖の畔に降りて行った。
「あれは・・・!」
少し遅れて、ボーマンダに続くような形で降りて行くと、湖畔に大型のヘリコプターが止まっているのが見えた。
「驚きましたか?あれが移動式拠点として使っているテンペスト号です。」
「テンペスト号・・・?」
「ほら、もう地面ですよ。」
「は、はい!」
ヘリコプターに見とれているうちに地面が近付いていた。ゆっくり降り立ち、オニドリルを労いながらボールに戻すと、ボーマンダから降りた師匠が不機嫌そうな顔で腕を組み、立っていた。
「・・・遅い!速く入れ、晩飯にすんぞ。」
「分かりました。」
「え、あ、はいっ!」
状況が飲み込めないイヅチだが、ここまで来て帰る気はない。勇気を出して、師匠と燭陰に続いてテンペスト号に乗り込んでいった。やや緊張しながら付いてくるイヅチを横目にした燭陰に師匠が小声で言った。
「テメー、入れ知恵したろ?あまり速度を出すなって。」
「さぁ、何の事ですかね。」
「ったく、悪い弟子を持ったもんだぜ。」
とぼける燭陰に憎まれ口を叩きながらも、師匠の顔からは先ほどまでの不機嫌そうな表情は消えていた。
—続く—
mochizo No.10780055 2011年03月10日 00:31:30投稿
引用
中へ入って少し歩くと、金属製のドアが見えてきた。師匠と燭陰の後についてドアの前まで行くと、ドアは向こう側から開いて男の声がした。
「おかえりなさい。」
「おぅ、ただいま。」
ドアの向こうから現れたのは、青年だった。彼も燭陰と同じく、おそらく師匠の弟子の一人なのだろう。それにしても、そのいでたちは少々厳つい。師匠はTシャツとデニム、それに上着といった服装。燭陰はきっちりとしていながらも機能的な法衣の様な服を着ている。イヅチ自身も師匠と同じような組み合わせの服装なのだが・・・、彼の服装は全く異なっていた。
まず、身体を包んでいるのは、丈夫そうな生地で作られた迷彩服、更に肩にはライフル銃と思われる武器を掛け、腰には日本刀と思われる刀をさげている。まるでどこかの戦場から飛び出してきたかのようだ。服装から感じられる印象をそのまま顔に移したように、精悍な顔立ちに鋭い目つきをしている。明らかに『なんだ、こいつは?』といった表情でイヅチを見ていた青年に師匠が指示を出した。
「こいつに試験を受けさせる。とりあえず飯だ、ブライ、空いてる席を教えてやれ。」
「・・・ラジャー。」
ブライと呼ばれた青年は、『ついてこい』と手招きして、師匠と燭陰の後から部屋の奥へ入っていった。後について、部屋に入ると、中は広く、10人くらいは楽に使えそうなテーブルとイスが置かれており、既に2人が席に着いていた。
「おかえり、ししょー!」
「おかえりなさい、師匠。」
席に着いていた2人が師匠にあいさつをする。1人はおとなしそうな青年で全体的に柔らかそうな印象を受ける。そして、もう1人なのだが・・・、全く表情が読めない。それもそのはず、声の低さからおそらく男性であろう人物は、コウモリの翼が生えた犬の着ぐるみをまとっているのだ。強烈な存在感に戸惑っていると、ブライに怒られてしまった。
「こっちだ、早く来い。」
「!はい。」
慌てて、ブライのいる席まで行くと、そこに座るように言われたので座ると、既に師匠と燭陰も席に着いていた。ブライが離れた席に着いた頃、部屋の奥の『厨房』と書かれたドアが開き、良い匂いと共に湯気の立つ料理が乗ったトレイを持ったルージュラとヨノワールが出てきた。ルージュラとヨノワールから料理を受け取り、全員に行き渡ったところで師匠が口を開いた。
「皆、このチビが何なのか、気になっているだろう。正直なところアタシにも分からない。テメ—らの弟弟子になるのか、そうでないのか、これから決めることにする。まぁ、とにかくまずは飯だ。冷めない内に食おう。いただきます。」
「「「「「いただきます。」」」」」
師匠の声と共に食事が始まったが、イヅチは、口の悪い印象を持っていた師匠が『いただきます』を言ったことに内心驚いていた。
それにしても・・・、勢いのまま着いてきたが、これから何が起こるのだろう・・・、そう思いながらイヅチはルージュラとヨノワールが持ってきたソバ飯を口に運ぶのであった。
—続く—
mochizo No.10780057 2011年03月10日 00:32:49投稿
引用
何事も無く夕食が終わり、一息ついていたイヅチだったが、その様子を見ていたブライがやや苛立った声で、
「何を休んでる?試験がある、早く来い。」
「は、はいっ!」
驚いて飛び上がるようにして立ちあがったイヅチと彼を案内していくブライを見送りながら、燭陰はひそかにイヅチに同情した。
ブライに連れられイヅチは、食事をした部屋から、通った事のない別の通路を通り、『研究室』と書かれた部屋に案内された。
「ここだ。」
促されて中に入ると、バトルフィールドらしきスペースのある、様々な機材のある部屋だった。奥に置かれているデスクのイスの上からしゃがれた笑い声がして、イヅチは一瞬驚いた。最初はイスには誰も座ってないように見えたのだが、よく見ると小柄な老人が座っていた。
「フォッホ。お前さんがここに来るとは珍しいのぅ。武器に不満でもあるのかの?」
「いや、違う。隊長がこいつに試験を受けさせると言ったものでな。」
そう言いながら、ブライは後ろにいるイヅチを指でさした。老人は、目を細めてイヅチを値踏みするように見ると、ニヤニヤしながら言った。
「ほーっ、それこそ珍しいの。あの姫様が新しく弟子をとるとはのぅ。」
「・・・本人にその呼び方したら、殺されるぞ。」
「フォッホッ!まぁ、気をつけるわい。ほいじゃ、説明しようかの。とりあえず、お前さんが手本を見してみい。」
老人がデスクの機材をいじりながらブライに言うと、ブライは不機嫌そうな顔を更に不機嫌そうにして、吐き捨てるように言った。
「冗談じゃない。あんたが口で説明すりゃいい話だ。」
「おりょ?もしかして、後輩の前で失敗するのが怖いのかの?」
老人のその言葉に、ブライの目の色が変わった。ライフルや日本刀を外し、バトルフィールドの中に入って、苛立った声で言った。
「良いだろう。やってやる、始めろ!」
「ほいじゃあ、始めるとするかの。坊主もよく見とれよ。」
老人は、そう言うと機材のボタンを押した。その瞬間にブライは走り出し、地面に触れたと思ったら、離れた場所の地面を触れる。見ても何をやっているのか分からずに、イヅチは老人に訪ねた。
「これは・・・、何をしてるッすか?」
「あやつが触っとるところをよく見てみい。赤い円が見えるじゃろ?」
「あ、はい。見えるッす。」
老人は頷くと、天井を指差した。よく見ると、天井には無数のライトが設置されており、それらのライトからの赤い光がバトルフィールドに円を描いていたのだ。
「ありゃあの、一定時間内にどれだけ正確に次々に出てくる赤い円を触れられるかを試しておるのじゃ。まぁ、理由については姫様に聞くのじゃな。」
「これが、試験・・・。」
イヅチの目の前で、ブライは素早く、的確に赤い円に触れていった。やがて、電子音が時間切れを知らせると、ブライが戻ってきて言った。
「・・・どうだ。失敗などしておらんぞ。」
「おりょー?わし、失敗するとか、言ったかのー?」
「喰えない爺さんだ。俺は自分の訓練に戻るぞ。後は頼む。」
惚ける老人に悪態をつきながら、ブライは武器を取って部屋から出ていこうとする。
「見て行かんのか?」
「関係無い。」
老人の問いに短く答えると、ブライは去っていった。ブライの動きに驚いているイヅチに老人は苦笑しながら言った。
「これこれ、坊主は何をしにここまで来たのじゃ?」
その言葉で我に返ったイヅチは、恥ずかしそうに頭を掻くと、バトルフィールドの中に入って、元気良く言った。
「試験の内容は分かったッす!お願いします!!」
「ほぅ、自信ありげじゃの。まぁ、やってみい。」
「うッす!!」
イヅチの力強い返事と共に試験は始まった。
・・・数時間後。研究室にやってきた師匠が呆れ顔で言った。
「・・・ぶっ倒れてんじゃねぇか。フマ爺、結果はどうだった?」
「見ての通りじゃよ。散々転んで、何度も失敗して、最後には満点で合格しおった。」
疲れ果てて、バトルフィールドの真ん中で泥だらけになって、仰向けに気を失っているイヅチを見ながら、師匠が優しい顔で微笑みながら言った。
「ま、そんなとこだろうと思ったよ。アタシが連れてきた奴だからね。」
師匠の言葉にニヤつきながら、フマ爺が言った。
「おりょ〜?弟子にするつもりは無かったんじゃないのかの?」
「さてね、アタシは気紛れなんだ。あんたも知ってるだろ?」
師匠の言葉に、フマ爺は笑いながら頷いた。
「フォッホッホッ。そうじゃったの。」
試験に合格し、弟子入りが決まった事など知らぬイヅチは、泥だらけで傷だらけだったが、どこか満足そうな顔をしていた。
—続く—
mochizo No.10780064 2011年03月10日 00:34:52投稿
引用
「・・・!試験は?弟子入りは!?」
状況が飲み込めずに混乱するイヅチの耳に笑い声が聞こえた。
「ふっ、起きたようだな。昨夜は気絶するまで頑張ったらしいが、元気そうじゃないか。」
声のした方を見ると、部屋のクローゼットの前に昨夜の夕食の時に見た着ぐるみのトレーナーがいた。今は、犬の頭の部分を脱いでいるのでその表情がはっきり見える。声から男だと思っていたが、顔は白く整っており、睫毛も長い。美女と言われて想像すれば、おそらくこんな顔になるだろう。とりあえず、自分がどのような経緯でこの部屋にいるのかを聞く必要がある。
「・・・あの、俺・・・どうして?」
PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第6話「弟子入り認定!」
「大丈夫。試験は合格らしい。後で、師匠に確認しに行くと良い。試験の後、気絶してたお前を俺がこの部屋に連れてきて、寝かしてたって訳だ。」
とりあえず試験に合格したらしい事を知り、胸を撫で下ろしたイヅチは、着ぐるみのトレーナーに礼を言った。
「ありがとうございます。お姉さんが俺をこの部屋で休ませてくれたんッすね。」
ところが、礼を言ったはずなのに、見る見るうちに着ぐるみのトレーナーの顔が険しくなっていく。何か悪い事でも言っただろうか?そう思う間もなく、着ぐるみのトレーナーが詰め寄ってきて、イヅチの両肩を掴むなり、大声でこう叫んだ。
「オ・レ・はっ!お・と・こ・だぁッ!!」
「ええええっ!?」
数分後、ようやく着ぐるみトレーナーの怒りが収まり、昨夜食事をした部屋に案内されると、研究室の老人と燭陰が談話していた。近づいて行くと、2人はこちらに気づき、挨拶してきた。
「おはようございます。昨夜は頑張ったそうですね。話はフマさんから聞きましたよ。」
「フマさん?」
「わしの事じゃよ、坊主。お前さん、なかなかやるじゃないか。姫様も感心しとったぞ。」
「姫様?」
首をかしげるイヅチをおかしそうに見ていたフマ爺だったが、突然、彼めがけてフォークが飛んできて、テーブルに刺さった。
「感心した覚えはねー。後、姫様って呼ぶなっつーたろ。」
フォークが飛んできた方向を見ると、師匠がルージュラ、ヨノワールと共に朝食を持ってきていた。機嫌は悪そうだが、弟子入りのことも確認したいのでイヅチは師匠に声をかけた。
「あの・・・、師匠・・・。」
「ほら、配膳手伝う!」
「は、はいっ!」
とりあえず、朝食が先のようだ。師匠や燭陰らと配膳していると、入り口で敬礼しながら、ブライが入ってきた。
「おはようございます。師匠!」
「おぅ、また早朝トレーニングしてたのか?まったく、真面目だな、オメー。」
もう1人の青年も合流し、朝食を終えた後、イヅチは師匠に部屋に呼ばれた。師匠の部屋までは、着ぐるみの男に案内してもらった。
「ありがとうございます。えっと・・・」
「俺の事は、サムって呼んでくれ。」
「サムさん、ありがとうッす。」
「じゃあな、しっかりやれよ。」
何をしっかりやるのか分からないが、とにかく部屋に入る事にした。ノックすると、入るように言われたので、ドアを開け中に入ると、師匠がイスに座り、何かの書類を見ていた。
「あの・・・、師匠・・・。来ました・・・ッす。」
「おぅ、一つ聞くが、昨日の試験の意味、分かるか?」
「えっ・・・?」
入っていきなり質問をぶつけられ、驚いたが、考えて答える。
「えっと・・・、ポケモンマスターには、体力が要るって事ッすか?」
答えながら、師匠の顔色をうかがうが、ニヤニヤ笑っているだけで良く分からない。
「あの試験はな、目を試してたのさ。」
「目?」
「そう、いくらポケモンの動きが優れていても、トレーナーがその動きを把握できなきゃ意味が無え。味方と相手の動きを把握できてこそ、的確な指示が出来るって事さ。それが全くできないよう奴なら、弟子にしてやるつもりはなかったけど、オメーは合格した。」
一見、直接バトルとは関係ないようで、実は関係していたのだと、イヅチが感心していると、師匠が書類を置き、まっすぐにイヅチを見て言った。
「オメーを弟子にしてやってもいい。ただし、手加減はしない。ビシビシしごくからな。アタシはオメーの師匠であり、最強の壁であり続ける。オメーのつとめは、アタシを超えることだ。守れるか?」
今までのような、どこか相手を馬鹿にしたような言い方ではない。イヅチを弟子と認め、導く覚悟を感じられた。そして、イヅチの答えは決まっていた。
「はい!俺、絶対に師匠を超えて見せます!!よろしくお願いします!」
—続く—
mochizo No.10780067 2011年03月10日 00:35:56投稿
引用
イヅチの返事に満足したのか、師匠は初めて見る暖かく優しい顔で笑った。
「よっしゃっ!じゃあ、兄弟子を紹介すんぞ。ついてこい。」
「はいっ!」
やっと弟子にしてもらえた事の嬉しさと、師匠の笑顔にドキドキしながらイヅチは師匠の後についていくのであった。
PARTY・PLAN〜小部隊計画〜第7話「兄弟子達」
師匠の部屋から出ると、食事をした部屋から甘い匂いがしてきた。どうやら木の実の匂いのようだ。部屋に入ると、サムと優しそうな青年がポロックを作っていた。
「おぅ、ポロック作りのとこ悪いな。新しい弟子になったイヅチだ。せいぜいしごいてやれ。」
「イヅチッす、よろしくお願いします!」
師匠の紹介の後で、イヅチが挨拶をすると、サムが朗らかに返してくれた。
「弟子入りが決まったか。ま、よろしくな。」
口調からして、どうやら今朝の事はもう気にしてないようだ。ふと、熱い視線を感じて振り向くと、優しそうな青年がイヅチの顔を見つめていた。
「あ、あの・・・、よろしくお願いします・・・ッす。」
何故見つめられているのか気になりつつ、挨拶をすると、どこか怪しげな笑みを浮かべながら、挨拶を返してきた。
「僕はセンケイ。イヅチ君、ヨロシクね☆それより、君、カワイイね。今度、一緒の部屋で寝n・・・ヴッ!?」
センケイが全部言い終わらない内に、師匠の教育的制裁が加えられた。
「弟弟子を口説くな、変態・・・。」
しかし、センケイは反省した様子も無く、師匠に言った。
「ヤダなぁ〜、ボクも段階は踏みますよ〜。あと、ししょーも守備範囲ですから☆」
センケイの言葉を聞いて心底げんなりした様子の師匠が頭を抱えて、溜め息交じりに言った。
「あ〜っ、なんでこんな変態馬鹿を弟子にしたんだろ。自分でも分かんねー。イヅチ、誤解はしねーでくれ。変態馬鹿だが、腕は立つ。」
「あ、はい・・・。」
この人とはあまり関わりあいたくないな・・・、イヅチはそう思いながら返事をした。
「この部屋は談話室だ。食事にも使うけどな。テンペスト号に乗ってる時に集合する時はここだ。覚えとけよ。」
どこか変な空気になった所で、サムが話題を変えてくれた。
「ついでにテンペスト号の部屋も案内するか、行くぞ、イヅチ。」
「ハイッす!じゃあ、また後で。」
2人と別れたイヅチと師匠は、研究室のある通路へと足を進めた。通路の途中にある部屋のドアを開けると、師匠が手招きしながら言った。
「ここがトレーニングルームだ。とはいっても、簡単なトレーニングしか出来ねぇけどな。見てみな、やってるぜ。」
部屋を覗くと、バトルフィールドがあり、燭陰とブライがポケモンを出してトレーニングしていた。どうやら、タッグバトルを想定したトレーニングの様だ。燭陰はジャローダ、ブライはルカリオを出している。相手のポケモンはピクシーとジュペッタだが、トレーナーは付いていない。互いに技を出しているが、上手くかわしたり、相殺している。すると、師匠が来ている事に気付いた双方は、一時トレーニングを中断してこちらに近づいてきた。
「無事に弟子入りできたようですね。燭陰です。これからよろしくお願いします。」
「フンッ。せいぜい逃げ出さんように精進することだな。」
丁寧に挨拶した燭陰に対し、ブライはどこか不機嫌そうに挨拶した。彼が怒らせるような事をしただろうか、内心そう思っていると、燭陰達と挨拶を交わした師匠に呼ばれた。
「何してんだ、次行くぞ。」
「はいっ!」
少し慌てて師匠の後についていく。部屋を出て少し歩くと、通路の突きあたりに、他の部屋のドアとは違う頑丈そうなドアが見えてきた。すると、今までノックなどせずに部屋に入っていた師匠が珍しくノックして、部屋の中の人物に声をかけた。
「おーい、斑鳩〜。入るぞ〜。」
「あいよ〜。」
部屋の中から、野太い声で返事が来たのを確認すると、師匠はドアを開けて中に入る。師匠に続いて、部屋に入ったイヅチはびっくりした。どうやら、操縦室の様なのだが・・・、はっきり言って部屋が汚い。いや、汚いというものではない、大地震が来た後の様な散らかりようだ。
「いーかげんに片付けろよな。仮にも操縦室だぜ?」
「分かってるよ。操縦には支障が無いようにしてるからよ。」
ゴミに埋もれないように備え付けたものらしいハンモックに中年男が寝そべっていた。男は師匠の後ろにいるイヅチに気付くと、先程まで読んでいた大人の雑誌を閉じて起き上った。がっしりした体形の大男だった。
「新入りか?」
「まぁね。イヅチだ、根性はそこそこあるようだ。」
男は、ズボンで手を拭いてイヅチに手を差し出して言った。
「俺は、このテンペスト号のパイロットをしてる斑鳩ってもんだ。まぁ、仲良くやろうや。」
「はい、よろしくお願いします。イヅチッす!」
挨拶を返し、手を握ると、強く握り返され、ガハハと笑いながら背中を叩かれた。かなり気さくな人柄の様だ。
「ったく・・・、汚ねぇな〜。あ、そうそう、後1時間したら基地に帰るぞ。準備頼むな。」
師匠が片付けながら、そう言うと、斑鳩は敬礼しながら言った。
「お任せを!ばっちり飛んでやるぜ。」
操縦室を出た後、談話室に戻ると、師匠が言った。
「つーことで、これで案内はほぼ終わり、後は基地に着いてからな。適当にトレーニングでもしてな。」
それだけ言うと、師匠は自分の部屋に戻ってしまった。本格的に修業をするのは、基地とやらに戻ってからなのだろう。イヅチはとりあえず、トレーニングルームに行ってみることにした。
—続く—
mochizo No.10780078 2011年03月10日 00:37:57投稿
引用
イヅチ 男 年齢14歳 出身地 ジョウト地方北部
本作の主人公。一応、ジョウト地方のバッジコンプリート。カントーのバッジは現在3つ。性格的には、熱血ぢゃないサトシを目指してますもう分かってるかもしれないけど、『〜ッす。』が口癖。家族構成については、いつか出す予定。
師匠(名前は決まってるけど未公開) 女 年齢不明(20代前半くらい?)出身地 不明
イヅチの師匠となった凄腕トレーナー。実力については不明だが、シロナと親交があるらしい。性格的には、ブラックラグーンのレヴィを少し大人しくして、常識的にした感じを目指す(またかい)過去については、いずれ。ポケモン無しでも強く、燭陰曰く『機嫌の悪いリザード並み』とのこと。
燭陰(しょくいん)男 年齢23歳 出身地 カントー地方東部
師匠の1番弟子。実力については、おいおい。ポケモンの能力を上げながらのバトルを得意としている。性格的には、基本的には常識的かつ温厚、ただし、起こるとヤバい。ブライとは幼馴染である。名前の由来は、中国の神話に登場する神の名前から。
ブライ 男 年齢22歳 出身地 カントー地方東部
師匠の2番弟子。実力的には、四天王並み。攻撃力の高いポケモンを好む。性格的には、冷静かつストイック。本人曰く、「1番弟子は自分。」とのこと。強さに対する欲望が強い。
フマ爺 男 年齢60は過ぎてる 出身地は不明
師匠の弟子ではなく、技術者として協力している人物。師匠に恩があるらしい。自称「お茶目なインテリ爺ちゃん」師匠のことを『姫様』と呼ぶのは、昔の職場の影響。
サム 男 年齢24歳 出身地 ジョウト地方コガネシティ
普段は、犬の着ぐるみ(特注品)を着て生活している。素顔とは裏腹に、かなり男らしい性格。特殊防御力の高いポケモンの扱いに長けている。アクション俳優として働いてたらしいが、次第に二枚目俳優として扱われ始めたことに嫌気がさして退職、トレーナー修業中に師匠に出会い、弟子入りした。
センケイ 男 年齢21歳 出身地不明
自称「愛を求める素敵お兄さん」。実力もあるが、育成やコンテストも好きである。性格については、軽さやウザさ、エロさが目立つが、計算高い一面も。状態異常を活用した戦法を好む。南国訛りがある。
斑鳩(いかるが) 男 年齢30代前半 出身地不明
彼もフマ爺と同じく、師匠の弟子ではなく、移動式拠点テンペスト号の専属パイロットである。昔はある組織でパイロットとして働いていた。部屋が汚いくせに、風呂には入ってたりする。豪快で大らかな性格。よく師匠とフマ爺と一緒に酒を飲んだりしてる。
今のところは、こんなところかな。またキャラが増えてきたら、整理という名目でやろうとおもいます( ̄ー ̄)ニヤリッ それではっ
mochizo No.10780089 2011年03月10日 00:40:22投稿
引用
「勝負あり、そこまで。」
「フン・・・。」
「うう〜っ。」
燭陰は、もう何度目か分からない判定を下しながら、溜め息をついた。トレーニングルームにやってきて、ブライとトレーニングを始めたイヅチだったが、さっきからブライからの洗礼を受け続けている。要するに、ブライとトレーニングをしているが、ブライのポケモンの攻撃を上手くしのげずに、負け続けているのだ。
「全くなってないな。相手の技をしのぐのは基本中の基本だ。」
「もう一度、お願いします!!」
(よくやりますねぇ・・・。)
その様子を見ながら、燭陰は時計を確認した。もうじき基地に到着する時刻だ。
「2人とも、もうすぐ着きます。ここまでにしましょう。」
「分かった。」
「はいッす・・・。」
イヅチはどこか不満そうだったが、燭陰の言葉に従った。3人が談話室に行くと、サムとセンケイ、フマ爺が師匠と話をしていた。
「おぅ、その様子じゃ、派手にやられたな?」
こちらに気付いた師匠がニヤニヤしながらイヅチに話しかけてきた。どうやら表情で分かったらしい。
「まぁ、弟子入りして半日も経ってねぇからな。これから厳しくしごいてやるよ。」
「うッス・・・。」
正直言って少しは腕に自信があったが、まだまだらしい。軽くへこみながら、イヅチは返事をした。その直後、艦内放送が入った。
『こちら操縦室、間もなく基地に到着する。着陸に備え、速やかに着席せよ。繰り返す、速やかに着席せよ。』
放送の後、席に座って待っていると、数回上下に揺れた後、静かになって、また放送が入った。
『着地成功、着地成功。物資の搬入を開始せよ。』
放送の後、どうすればいいのか戸惑っていると、サムが助け船を出してくれた。
「お前に会う前に、買い出しをしててな。それを基地に運ぶんだ。倉庫に行くぞ、ついてこい。」
「はいッす!」
サムや燭陰達の後に続いて倉庫に着くと、買い出しで購入したらしい荷物が置かれていた。
「ほら、これ持て。基地の倉庫まで案内するから、ついてこいよ。」
「うッす!!」
サムに渡された段ボールを抱えて、イヅチはサムの後をついていく。テンペスト号から出ると、目の前には洞窟があった。どうやら山にある洞窟を改造して基地として使用しているようだ。洞窟に入ると、センサー付きのライトがつき、足元が見える程度に洞窟を照らした。やや湿った空気を感じながら歩いていくと、大きな金属製の扉が見えてきた。扉の前まで行くと、監視カメラがあったらしく、扉近くのスピーカーから声が聞こえた。
『おかえりなさいませ、サム様。そちらの方は?』
「師匠の新弟子だ。師匠と他の連中は後から来る。開けてくれ。」
『了解しました。』
返事と共に扉がゆっくりと開いていく。扉が完全に開いたタイミングで師匠達も荷物を持って追いついてきた。
「うわぁ・・・。」
師匠達の後に続いて、扉を抜けたイヅチは飛び込んできた光景を見て感嘆した。ここが洞窟の中である事を忘れてしまうほど、きれいに整備されていたのだ。よくアニメなんかで見るような秘密基地そのものだ。思わず見とれていると、サムに呼ばれた。
「何してんだ?こっちだ。」
「あ、はいッす!」
慌ててついていくと、『倉庫』と書かれた扉が見えた。いつの間にか先頭を歩いていた師匠が扉の前まで行くと、自動ドアだったらしく、扉は独りでに開いた。サムに続いて倉庫の中に入ると、特大の冷蔵庫と冷凍庫、山積みにされた段ボールがあった。さらにそれらに何が入っているか、すぐに分かるように表示までされている。
「イヅチ、お前が持ってんのは、即席ラーメンだ。分かったな?」
「了解ッす。」
「よし、じゃあ、置いたら入り口で待ってろよ。」
そう言うと、サムは自分の荷物を置きに行った。かなり親切にしてくれているあたり、面倒見の良い性格なのかもしれない。テンペスト号に置かれていた荷物を運び込んだ後、サムが基地の中を一通り案内してくれた。最後に案内されたのは、『コントロールルーム』と書かれた部屋だった。サムがノックをしながら、中にいるであろう人物に了解を得た。
「おい、スレイグ。いるか?師匠に用事を頼まれて来た。」
『分かったわ。今開けるから待ってて。』
ドアに内蔵されているスピーカーから、明るい声が聞こえると、電子ロックが解除される音がして、ドアが開いた。サムに続いて部屋に入ると、部屋の中には無数のディスプレイがあり、部屋の真ん中にそれを操作する為のものであろう操作盤があり、その前に置かれた大きな椅子に一人の少女が座っていた。サムとイヅチが自分の前に来るまで待つと、少女はおもむろに口を開いた。
「その子が、イヅチ君?」
「ああ、詳しい事は師匠から聞いてるだろう?」
「ええ、ちゃあんと準備してあるわよ。はい。」
少女の問いに対してサムが答えると、少女は一枚のカードをサムに手渡した。サムとスレイグと呼ばれた少女はともかく、イヅチは何が何だか分からない。
「あの・・・、どうして俺の名前を知ってるんッすか?」
少女はイヅチの疑問に対し、にっこり笑いながら答えた。
「だって、師匠から基地に着く前に聞いてたもん。私の名前は、スレイグ。師匠の弟子であり、この基地のメインシステムを管理しているの。今、サムに渡したのは、キミの部屋の鍵よ。」
なるほど、自分がトレーニングをしている間に、師匠が話をつけてくれていたようだ。
「何か不備があったら、いつでも言ってね。私にできる事なら力になるから。」
「ありがとうッす!」
「じゃあ、サム、後はお願いね。」
「任せろ。イヅチ、行くぞ。」
スレイグに礼を言って、コントロールルームを出た後は、サムがイヅチに割り当てられた部屋に案内してくれた。
「ここらへんが居住区になっててな、ここがお前の部屋。向かいはブライの部屋で、右隣は俺、左隣は・・・、まぁ、後で紹介する。とりあえず中に入って様子を見てみろ。」
「はいッす!」
サムからカードキーを受け取り、ロックを解除して部屋に入る。中は八畳ほどで、ベッドと壁にクローゼット、デスクとエアコンがあるだけのシンプルな部屋になっていた。イヅチは自分の部屋のカードキーを見つめながら、新たな生活が始まった事を実感し、胸が高鳴るのを感じた。
—続く—
mochizo No.10780095 2011年03月10日 00:41:36投稿
引用
「あの〜、サムさん。これから何をしに行くんッすか?」
「顔合わせだよ。みんなに紹介しとかないと、不審者と間違えられて攻撃されるかもしれないからな。」
「本当ッすか?」
自分の部屋を確認した後、イヅチはサムに連れられ、大広間へと向かっていた。先程サムに案内されたから、場所は分かるのだが、顔合わせということなので、全員集合するためにサムも一緒に来たのだろう。
やがて大広間の入り口まで着くと、サムにドアを開けるように言われた。不思議に思いながらも、ドアを開けると、歓声と共にクラッカーの鳴る音がした。驚きつつ中に入ると、師匠や燭陰達、そして兄弟子であろう数名が、テーブルに並べられた料理と共に待っていた。
「「「ようこそ!D.L.hackへ!!」」」
「えっ…!!」
クラッカーと歓声から、自分に対する歓迎である事は予測できたが、『D.L.hack』という言葉は聞き覚えが無い。
その様子に気付いたのか、チャイナ服の上に白衣をまとった少女が近付いてきて耳打ちした。
「D.L.hackというのは、師匠と私達の組織名ヨ。人数がそれなりにいるから、一応ネ。私、シンシア言うネ。」
多少訛りがあり、自己紹介も兼ねていたが、師匠が自分と弟子、仲間の事をそう呼んでいる事は分かった。
「さあ、行けよ。主役が突っ立ってる場合じゃないだろ。」
サムに促され、皆がいるところまで歩いていくと、車椅子に乗った少年が近付いてきて握手を求めてきた。
「初めまして、ボクは天馬。イヅチ君でしょ、よろしく!」
「こちらこそ、よろしくッす。」
見たところ、歳も近そうだし、友好的だ。きっと良い友人になれるだろう。天馬と握手を終えたと思ったら、急に別の手が伸びてきて、強く手を握られた。いつの間にか天馬の横に来ていた男に握手されているようだ。いきなりの事に驚きつつ、男の姿をよく見ると、青と黄色の派手なライダースーツを着ている金髪の男だ。自信家なのか、口元には笑みが浮かんでいる。
「よく来たな!俺様は神速の男、輝脚だ!!世界最速最強になる男だ!覚えとけよ!!」
輝脚に激しく腕を上下に振られながら、イヅチは、かなり濃い人間だなと、密かに思った。
一通り、歓迎の言葉を受けると、部屋の奥を見るように言われ、言われるまま見てみると、部屋の奥にバトルフィールドが設置され、師匠が待っていた。
「おせーぞ、イヅチ。ポケモンを出せ。一対一でテメーの実力を見てやるよ。」
その言葉を聞いた時、イヅチは歓迎された事よりもずっと嬉しかった。こんなにも早く師匠とバトルする機会が与えられるとは思ってなかったからだ。
「うッす!お願いしますっ!!」
勢いよく返事をしながら、モンスターボールを選び、ポケモンを繰り出す。緑と白を基調とした体を持つ人型ポケモン—エルレイドと呼ばれるポケモンだ。イヅチにとってのパートナーであり、一番良く育てているポケモンである。イヅチのポケモンを確認すると、師匠もモンスターボールからポケモンを繰り出した。
「オォォノッ!!」
大きな鳴き声と共に現れたのは、黄色と黒、赤で彩られた長大な体を持つポケモンだった。巨体を支える2本の足は太くがっしりとしているが、前足は比較的小さい。巨体から伸びる尾も石柱の如く太く力強い。しかし、何より特徴的なのは、長い首の先に付いた頭と口の横から生え、頭の後ろまで伸びた刃の様な巨大な牙だ。それは紛れもなく、オノノクスと呼ばれるポケモンが持つ特徴である。
「いきなり、オノノクスかよ。まさかトマホークじゃねぇだろうな。」
「かもしれないね〜。ししょー容赦ないから。」
オノノクスの姿を確認したサムが呟くと、それに応えるようにセンケイも言った。
「どちらか一方が戦闘不能になったら、終わりだからな。先攻はやるから、本気で来い。」
「分かりましたッす!!」
勿論、イヅチも手加減する気などない。オノノクスは強力なドラゴンポケモン、長時間の戦いは不利になるだけだ、そう判断し、エルレイドに指示を出した。
「サイコカッター!!」
「レイドッ!」
指示を受けたエルレイドが構えると、周囲に半透明の刃が無数に現れた。そして、オノノクスに狙いを定めると、それらを一気にオノノクスめがけて撃ち出した。サイコカッターは、エスパータイプの大技だ。エルレイドのタイプと一致しており、命中率も悪くない。上手く急所に当たれば大ダメージも狙えるだろう。しかし、
「トマホーク、アイアンテール。」
「オォノッ!!」
師匠の指示を受け、トマホークと呼ばれたオノノクスが無造作に、しかし力強く尾を振った。振られた尾は、完璧なタイミングでサイコカッターと激突する。その一撃でほとんどのサイコカッターは粉砕され、一部は跳ね返された。
「「!!」」
思いもしなかった相手の対応に驚きを隠せないイヅチとエルレイドの姿と師匠とオノノクスを見比べながら、サムが呆れたような声で言った。
「マジでトマホークじゃないか・・・。新入りが相手出来るレベルじゃないだろ・・・。」
センケイも頷きながら続けた。
「だよね〜。何せ、師匠ご自慢の六頭竜の一体だもん。」
—続く—
mochizo No.10780102 2011年03月10日 00:42:53投稿
引用
「リーフブレード!!」
「つじぎり。」
エルレイドの渾身のリーフブレードをトマホークが払いのけるようにして放ったつじぎりが易々と受け止める。決して非力なポケモンではないエルレイドが押し切られ、態勢を崩す。しかし、追撃は来ない。あくまで、師匠はこちらの出方を見ているのだ。ならば、
「エルレイド、影分身!」
「レイドッ!」
指示を受けたエルレイドが高速で動きながら、残像を作り出し、トマホークを取り囲む。影分身—残像で分身を作り出し、相手の攻撃を命中しにくくする技だ。これなら、相手の隙を突くチャンスが増やすことが出来る。しかし、師匠は動揺した様子も無く、淡々と指示を出す。
「トマホーク、アイアンテール。」
「オォォノッ!!」
トマホークが指示に従い、頑丈そうな脚で地面を踏みしめる。そして、巧みに体重を移動させながら、巨大な尾を振る。尾にぶつかった分身は溶けるように消えてしまうが、まだ残っている。が、次にトマホークが起こした行動にイヅチは驚愕する。トマホークはアイアンテールの勢いのまま回転し、全ての分身を薙ぎ払ったのだ。更にアイアンテールは本体のエルレイドも引っかける形で転ばせた。態勢を整え、隙を作るつもりが、いとも容易く先程の状態に戻されたのだ。
「あの程度の影分身では、六頭竜攻略の鍵にはならん。あの調子では、ダメージを与える事も出来んな。」
「発想は悪くなかたけどネ。レベル差開き過ぎヨ。」
ブライの評価に対し、シンシアも正直な意見を言った。その最中も反撃しようとするイヅチとエルレイドだが、ある時はタイミングをずらされ、またある時は力押しに持ち込まれ、徐々に消耗し始めていた。
ここは、多少のリスクはあっても、大技を使うべきだ、そう判断し、イヅチはエルレイド最強の技を指示した。
「インファイト!」
「レェイドッ!!」
指示を受け、エルレイドは鬼気迫る勢いでトマホークに肉薄する。インファイト—防御を捨て、攻撃に特化した格闘タイプの大技だ。今までの戦いで、長い首や尾を活かした攻撃が目立ったトマホークだが、懐に飛び込んでしまえばチャンスはある、そう判断したうえでの指示だった。それに対し、師匠は、思いもしない指示で対応した。
「トマホーク、出力半分で逆鱗。」
「オノォッ!」
指示を受け、トマホークがエネルギーを纏いつつ動き出した。今までのリーチを活かした攻撃とは明らかに異なる体ごとぶつかっていく動きだ。結果的にエルレイドは、トマホークの逆鱗に飛び込んでいく形になってしまった。
「しまった、かわすッす!!」
必死に回避を指示したイヅチだったが、勢いのついた体は急には止まれない。むしろ、急な指示で硬直したエルレイドがもろに攻撃を喰らう結果となってしまった。ドシンッ、重い音とともにエルレイドの体は軽々と吹っ飛ばされ、バトルフィールドの真ん中に落下した。
「エルレイドッ!!」
エルレイドに駆け寄りイヅチに師匠が言った。
「そこまでのようだね。まあまあってとこかな。シンシア、治療してやりな。」
「了解ネ。お薬塗りますヨ〜。」
師匠に従い、シンシアが駆け寄ってきた。手には薬らしきスプレーが握られている。どうやら、彼女は治療を得意としているようだ。その後、無事に治療を施されたエルレイドをモンスターボールに戻し、歓迎会を続けた。歓迎会が終わった後、皆で片付けをしていると、スレイグがイヅチに話しかけた。
「なかなかやるじゃない。六頭竜相手に健闘するなんて。」
「六頭竜?」
聞きなれない言葉にイヅチが首を傾げていると、天馬が教えてくれた。
「六頭竜と言うのはね、師匠が持っているポケモンの中でも最強クラスの6匹のドラゴンポケモンの事だよ。師匠のオノノクス—トマホークも六頭竜の内の一体なんだ。」
「負けた事なら気にしなくていいわ。私達でも正直キツい相手だもん。」
「六頭竜・・・。」
確かに話を聞く限り、弟子入りして間もないイヅチが勝てるようなポケモンでは無かったようだ。だが、イヅチは何故かワクワクしていた。いつかきっと、六頭竜と互角以上の戦いが出来る位に強くなろう、イヅチは決意を新たにしたのであった。
—続く—
mochizo No.10782521 2011年03月10日 21:58:59投稿
引用
シャアーッ・・・。シャワーから出た暖かい湯が疲れた体を伝っていく。しなやかでありながら力強い体には、何者かに切り裂かれたような爪痕が痛々しい古傷として残っている。
「・・・何やってんだろうね。アタシも・・・、愛なんて、温もりなんて求める資格なんて無いクセにさ・・・。」
自室のシャワールームでシャワーを浴びながら、師匠は呟いた。最初に弟子を取ると決めた日から、いつも自分に言い聞かせている事。自分は幸せになる権利なんて無い、そう言い聞かせてきたのに。何故か、あいつらといると自分に甘くなってしまう、そんな自分がいた。
ピルルルル・・・。電話が鳴っている音が聞こえ、シャワーから出て、身体を拭きながら電話に出ると、聞きなれているが、あまり聞きたくはない声が聞こえた。
「久しぶり。元気にしてる?」
「オメーか、このボケ。」
シンオウ地方チャンピオン—シロナ、自分が弟子を取るよりも昔に出会った変な奴。付き合いも長く、何度も戦い、協力した仲ではあるが、彼女と自分は違う生き物の様に思う。いつも笑みを浮かべてはいるが、何を考えているのか分からない。それに今回の様に面倒事を持ってくる。
「・・・その様子では、イヅチ君を弟子にしたのね。」
「うっせー、アタシは保母じゃねー。」
「でも、弟子にしたんでしょ?」
・・・いつもと同じ、こちらの心の中を見透かされているようだ。実力的には負けない自信はある。だが、何故か相手にしたくはない。
「オメーこそ、イッシュで面白い奴にあったそうじゃねーか。」
「ふふ、さすがにあなたの情報網は広いわね。ええ、本当に素晴らしい出会いだったわ。」
「素晴らしい出会いね・・・。」
「ところで、その子があるポケモンを連れた青年を探しているそうなんだけど・・・、何か知らないかしら?」
「自分で探せばいいじゃねーか。オメーの好きな分野だろ?」
彼女が言っている人物に心当たりがない訳ではない。だが、確証はないし、今は彼に会うべき時ではないと思ったので、言わない事にした。
「・・・分かったわ。何か分かったら連絡してね。じゃあ、挑戦者を待たせているから。」
(まったく、大変だな。)
シロナの事ではない。待たされていた挑戦者が、だ。チャンピオンと呼ばれる人物は何人か知っているが、どいつもこいつも変わり者だと思う。もっとも、連中からすれば、自分も充分変わってるらしいが。
『言わなくて良かったのか?あの電波野郎の事。』
「必要ねーよ。これ以上タダ働きするのも癪だし。」
聞きなれたオウリュウの声にきっぱりと答える。奴の事をシロナに教えなかった理由の一つは、自分と奴が同類だからだ。
『あと、あの新入り坊主に端末、渡しとかなくていいのか?』
「あ、ヤベ。忘れてた。」
弟子になった連中は全員持っている物があるのだが、イヅチに渡すのを忘れていた。時計を見ると、まだ9時半頃だった。派手に修業はしていたが、まだ起きている可能性もあるだろう。明日にのばしても忘れてしまうだけだ。面倒だが、渡しに行く事にしよう。師匠はタオルで髪を拭きながら、部屋を出た。
「う〜ん、むにゃむにゃ・・・。」
師匠の判断とは裏腹にイヅチは部屋で熟睡していた。師匠とのバトルの後、テンペスト号でやった試験と兄弟子達とのトレーニングもして、疲れ切っていたのだ。
コンコン。
「イヅチー、起きてっか?イヅチ〜?・・・入るぜ?」
師匠は部屋のドアをノックして確認するが、当然返事は無い。焦れた師匠は勝手に入る事にした。
「ケーチィ、出てこい。」
「シィ・・・。」
「アタシごと、部屋の中にテレポート。」
シュン・・・。部屋の主に許可を得ぬまま、テレポートで中に入った師匠は、ベッドで熟睡するイヅチに微笑みながら近づき、
ベシッ!!
「起きろ、ボケ。」
いきなり頭をしばいた。案の定イヅチは目を覚まし、状況が飲み込めず、キョロキョロしている。師匠は勝手にベッドに腰掛けると、イヅチの顔に渡し忘れた物を押しつけた。
「あぅ、なんッすか?師匠・・・何でここに?これは?」
「悪いな。とりあえず目ぇ覚ましな。」
寝惚けるイヅチに師匠が言った。
—続く—
mochizo No.10782531 2011年03月10日 22:00:10投稿
引用
「オメーにこれを渡すのを忘れてた。ホムンクルス9だ。」
寝惚け眼のイヅチに、師匠は携帯電話を渡した。
「ふぇっ?ホムンクルス・・・?」
『初めまして、イヅチ様。ワタクシはホムンクルス・システム、子機端末番号12番にございます。なんなりとお申しつけを。』
「わっ!?」
いきなり携帯電話が話しかけてきて、イヅチは驚いて一気に目を覚ました。
「な、何ッすか?ホムンクルス・システム?」
「あ〜、やっぱその説明からになるか・・・。12番、頼むわ。」
『かしこまりました。ホムンクルス・システムとは、師匠が開発されたトレーナー総合サポートシステム搭載人工頭脳—つまり、トレーナーの手助けをするコンピュータプログラムの事にございます。メインシステムは基地にあり、人工衛星を介し、ワタクシ共の様な子機に情報が送られています。主な使用方法といたしましては、ポケギアとしてお使い頂ける他、ポケモン図鑑、更にモジュールを追加することでパソコンとしても使用頂けます。動力は電気エネルギー、充電式で一回の充電で約1週間はご使用頂けます。他にご質問はございますか?』
良く分からない単語が出てきたのと、あまりに多くの内容を一気に話されたので理解しきれずにイヅチが固まっていると、師匠が笑いながら言った。
「ホムンクルスは、アタシも兄弟子の連中も持ってるからね。互いに連絡を取り合ったりするための物さ。便利な携帯ってところさ。」
そう言われれば、なんとか分かる。しかし、こんな物まで作ってしまうなんて、師匠はやっぱり凄いと思うイヅチだった。
「用事はそれだけ。そんじゃ。」
「ありがとうございました!」
師匠は用事だけ済ませると、ケーチィ(ニックネームらしい)のテレポートで出て行った。
「おはようございます!」
「ええ、おはよう。もうすぐ朝ご飯ですよ。」
「イヅチ、師匠を起こしてきてくれないか?」
「分かったッす。」
イヅチが弟子入りしてから、一週間が経った。まだまだ、兄弟子達の実力にはほど遠いが、少しずつ相手の動きが見えるようになってきた。
それに、分かった事もある。例えば、師匠は朝に弱い。起きられない事は無いらしいが、お酒を飲んだ次の日は間違いなく起きてくるのが遅い。
昨夜はフマ爺や斑鳩と遅くまで飲んでいたらしいから、間違い無いだろう。
「師匠!朝ですよ!!起きてますか?」
師匠の部屋の前まで行って、大声で呼びかけるが返事は無い。もう一度呼ぼうかと考えていたら、ドアが開いた。だが、ドアの向こうに立っているはずの師匠はいない。それもそのはず、ドアを開けたのは師匠ではなく、オウリュウなのだ。わざわざドアを開ける位なら、オウリュウが起こせば良いと思うのだが、何故かオウリュウは師匠を起こそうとはしないのだ。
「師匠、入りますよ〜?」
一応確認を取って中に入る。イヅチの部屋よりも広いのだが、様々な資料が収められた本棚がいくつかあり、手狭に感じる。更に立派なデスクの上には、パソコンもある。部屋の奥にあるベッドに師匠は寝ていた。昨夜は結構飲んだのだろう、布団からのぞいている髪の毛はボサボサだ。
「師匠、朝ですよ。起きてください!」
遠慮がちに何度か揺すると、うめき声を上げながらモゾモゾと起き出した師匠だったが、その姿を見て、イヅチは赤面して後ろを向いた。それもそのはず、起き出してきた師匠は下着しか身に着けていなかったからだ。センケイなら、喜ぶ場面であるが、イヅチにも自尊心はある。
「お、俺、外で待ってるッす!!」
「・・・どうしたんだ?アイツ・・・。」
慌てて部屋から飛び出していったイヅチを見て師匠が不思議そうに言うと、何かを察した様にオウリュウは溜め息をついた。
—続く—
mochizo No.10782535 2011年03月10日 22:00:57投稿
引用
着替え終えた師匠と共にイヅチは食堂へと向かった。食堂に着くと、テンペスト号にいたヨノワールが師匠にコーヒーと新聞を運んできた。これは燭陰から聞いたことだが、基地で働くポケモン達の多くは師匠のポケモンらしい。どうりで師匠の言う事を聞いてたはずだ。
「おはよう、いつも悪いな。」
師匠はヨノワールに礼を言うと、新聞を広げコーヒーを飲み始めた。食堂には既に皆が集まっているが、ブライだけがいない。おそらく、早朝トレーニングをしているのだろう。
「おい、フマ爺!勝手にテレビ欄だけ抜くんじゃねーよ。」
「年寄りのお茶目じゃ。大目に見てくれい。」
師匠とフマ爺がどうでもいい会話をしているうちに朝食がきた。基地の食料の多くは保存の効く物だが、外側の山に畑を作っているらしく、たまに新鮮な野菜や木の実が出る。山一帯を師匠のポケモン達が守っているらしく、山の中を歩くだけで実戦的なトレーニングになるとのことだ。勿論、そのポケモン達が畑も守っている。
朝食を配り終えた頃にブライが食堂にやってきた。
「おぅ、遅えじゃねぇか。飯食おーぜ。」
いつもの調子で話しかけた師匠に、ブライは真剣な顔で切り出した。
「師匠、朝食の後で手合わせ願えませんか?」
その一言で、先程までほのぼのとしていた食堂の空気が張り詰めた。イヅチも言われた『弟子の務めは師匠を超えること』をブライはやってのけようというのだ。ブライの申し出に、師匠は不敵な笑みを浮かべて応じた。
「それは、アタシへの挑戦と受け取るよ。全力で相手する、分かったな?」
「はい、全力で相手します!」
初めはギスギスするかと思ったイヅチだったが、特にそんなことも無く、いつも通りの朝食を終え、数時間後、山の中にあるバトルフィールドで師匠とブライのバトルが行われることになった。
「ブライ君は勝算があるのかな〜?」
「勝算も無しに挑みはしないだろう。」
センケイの言葉にサムが応じた。バトルを見学する為にイヅチ達は、バトルフィールドの周りに集まっていた。
「イヅチ、隣いい?」
「天馬、いいッすよ。」
遅れてやってきた天馬にイヅチは答えた。天馬とは歳も近いのですぐに仲良くなった。
「天馬は・・・、師匠と戦った事があるッすか?」
何気なく聞いたことだが、天馬は答えてくれた。
「・・・あるよ。こてんぱんにやられたけどね。圧倒的な差がある事を思い知らされたよ。ブライは僕の何倍も強いけどね。」
「そう・・・ッすか。」
ちょうどそのタイミングで師匠とブライがやってきた。ブライはいつも通りの装いだが、師匠はいつものような服装ではなく、きっちりとした制服にマントを纏っていた。どこの制服かは定かではないが、何かの文字・・・、アルファベットの刺繍が黒の線でつぶされていた。
「アタシは、最後までオメーの最強の壁として戦う。このアタシを倒してみろ。」
師匠の言葉に深く頷いて、ブライは言った。
「俺が今まで積み重ねてきたものを全て懸けて戦います。」
そして、両者はバトルフィールドに入り、モンスターボールを取りだした。審判を務める事になったスレイグがバトル開始を宣言した。
「ルールは、3対3。ポケモンの交代は自由。先に相手ポケモンをすべて倒した方の勝ちとします。それでは、試合開始!!」
—続く—
mochizo No.10782542 2011年03月10日 22:02:05投稿
引用
「試合開始!!」
スレイグの声と共に、両者はモンスターボールからポケモンを繰り出した。
「いけ、ウィンディ!!」
「行ってきな、アンタレス。」
ブライが繰り出したのはウィンディ、炎タイプのポケモンの中でも強力な部類に入るポケモンだ。それに対し、師匠が繰り出したのはドラピオンの様だ。ばけさそりポケモンと言うだけあり、特殊な体形をしている。
「先制を譲ってやる。どこからでも来い。」
「はい!ウィンディ、神速!」
「ディ!」
指示を受けたウィンディが巨体からは想像もできない速度でアンタレスに襲いかかる。
「アンタレス、受け流せ。」
「ドラァッ!」
師匠は全く動じず、アンタレスに指示を出す。アンタレスは突撃してきたウィンディの腰を長い腕の鋏で掴み、軌道を逸らすようにして神速をかわした。アンタレスの横を空振りする形で通り過ぎたウィンディを見るや否や、ブライは次の指示を出した。それに対し、師匠も迎え撃つ。
「インファイト!!」
「つばめがえし。」
力を込めたウィンディの攻撃と、アンタレスのつばめがえしが激突して火花を散らす。互いの力はほぼ互角に見える。
「距離を取れ!」
「ウィンディを逃がすな。捕まえろ。」
素早く後ろへ飛び退いて距離を取ろうとするウィンディに、アンタレスが長い腕で掴みかかる。空中で上手くかわそうとするウィンディの頬を巨大な鋏が掠めたが、捕まる事無く距離を空ける。
「ワイルドボルトッ!!」
「ディッ!!」
ジグザグに疾走しながら、ウィンディは電撃を体に纏い突撃をかける。アンタレスを撹乱しようというのだろう。
「アンタレス、構えろ。」
「ドラァ・・・。」
動揺したアンタレスをいさめるように師匠が言った。すると、アンタレスは急に落ち着いて、タイミングを計るかのように鋏を打ち鳴らす。
「今だッ!」
好機と判断したブライは指示を出し、ウィンディは一気に距離を詰める。
「そこだ、捕えろ。」
「ドラアァッ!!」
鋏を振りかぶってウィンディを捕えようとするアンタレスの腕をかわし、強烈なワイルドボルトがアンタレスの顔面に炸裂した。いくら強固な体を持っていても、生き物の弱点である顔面に攻撃を喰らってはタダでは済まないだろう。しかし、間違いなく大きな一撃を与えたはずのブライは、驚愕の声を上げた。
「何っ!?」
ウィンディの体が宙に浮いている・・・、いやアンタレスの鋏に捕まり身動きが取れなくなっているのだ。ワイルドボルトが命中するすんでのところで、アンタレスの二本の腕の内の一本がウィンディの脇腹を掴み、突撃を止めたのだ。
「振り払え、フレアドライブ!」
「毒々。」
炎を纏いもがくウィンディの頭をアンタレスは口まで引き寄せ、紫色の液体を吹きかけた。毒々—相手を猛毒の状態異常に陥れる技だ。身動きさえ取れれば容易くかわせた技をウィンディはもろに喰らった。猛毒を受け、動きの鈍ったウィンディに師匠は追撃した。
「ベノムショック。」
「ドラァ!」
ウィンディを捕えたアンタレスの鋏に紫色の電撃が走り、ウィンディの体を駆け巡る。ベノムショックは、毒状態の相手に使用すれば最大の威力を発揮する技なのだ。逃れることも出来ずに、ベノムショックの直撃を受け、完全に沈黙したウィンディをアンタレスは無造作に投げ飛ばす。受け身も取れずに地面に叩きつけられたウィンディは、気を失っていた。
その様子を見たスレイグは、判定を下した。
「ウィンディ、戦闘不能。よってアンタレスの勝ち!」
—続く—
mochizo No.10782549 2011年03月10日 22:03:04投稿
引用
ウィンディを倒されたブライは次に繰り出したルカリオで激戦の末、師匠のドラピオンのアンタレスを戦闘不能にする事に成功した。
「少しはやるじゃないか。次はこいつだよ。」
アンタレスを戻し、師匠が別のモンスターボールから2体目のポケモンを繰り出した。
「ガアァァァッ!!!」
モンスターボールから現れたポケモンはガブリアスだ。強力なドラゴンタイプのポケモンなのだが、その身体が桁外れにでかい。通常のガブリアスの倍はある。ただ、鳴き声をあげただけで空気が震える。
「ゼティス・・・。」
ガブリアスを見た天馬が震える声で呟いた。
「知ってるんッすか?」
「師匠が誇る六頭竜のNo.2だよ。かつてある山で『暴君』と呼ばれてたバケモノだよ。それを師匠が捕獲したんだ。」
「暴君・・・。」
ふとブライを見ると、手が震えているようだった。恐らく、以前にゼティスと戦った事があるのだろう。それにしても、師匠の弟子の中でもかなりの腕前であろうブライが震える程の相手だ。それだけの実力があるのだろう。師匠はどこか楽しそうにゼティスに語りかけた。
「よう、今回のブライも気合い十分だぜ。全力で相手してやろう。」
「ガアァァッ!!!!」
師匠の言葉に反応するようにゼティスは地面を踏みしめ、大きく吼えた。また、空気が震え、技を使ってもいないのに地面が揺れた。
「バレットパンチ!!」
「噛み砕いてやりな。」
高速で拳を叩きつけようとするルカリオに対し、ゼティスは巨体からは考えられない程の速度で喰らい付こうとする。
「・・・!よけろぉ!」
ブライが普段の態度からは考えられない形相で指示を出す。ルカリオもそれに素早く反応し、急制動をかけて仰け反るようにして巨大な顎から逃れた。鋼タイプと格闘タイプのルカリオに悪タイプ技の噛み砕くは、効果が今一つだ。しかし、あんな巨大な顎による渾身の噛み砕くをまともに喰らって無事に済む保証は無い。牙からは逃れたものの、ゼティスは身体ごとぶつかるように技を繰り出したので、ルカリオは巨体を支える太い足に蹴られて吹っ飛ばされてしまった。技ではなく、動かした足にだ。それだけでも、その攻撃力の片鱗が伺える。しかし、ブライも負けてはいない。
「体勢を立て直し、気合い玉!!」
素早く起き上ったルカリオはエネルギーを球体に凝縮させ、ゼティスに投げつけた。しかし、師匠は回避を指示せず、気合い玉はゼティスに直撃し炸裂した。炸裂による土埃の中から、地の底から響くような不気味な声が聞こえてきた。
「グガガガガガ・・・!」
最初は師匠がゴーストタイプのポケモンに入れ替えて、気合い玉を無効化したのかと思ったイヅチだったが、
「わ、笑ってる・・・?」
そう、気合い玉の直撃を受けたのにも関わらず、ゼティスは笑い声をあげていた。まるで、強敵に出会えた事を喜んでいるかのように。
「瞬間発動、逆鱗50%。」
「ガァッ!!」
指示を受け、ゼティスは腕を振りかぶり、ルカリオに殴りかかった。
「よけろッ!!」
「ルカッ!!」
かわそうとしたルカリオだったが、それよりも早くゼティスの逆鱗が直撃した。鈍い音と共にルカリオは派手に吹っ飛ばされた。逆鱗は暴れまわって攻撃するドラゴンタイプの大技だ。しかし、追撃は無い。ゼティスも暴れる様子も無く、師匠からの指示を待っているように見える。
「どうなってるッすか?逆鱗なのに・・・。」
「逆鱗の瞬間発動・・・、師匠が編み出した戦法の一つだよ。通常の逆鱗の様に疲れるまで攻撃し続けるんじゃなくて、瞬間的に逆鱗のダメージを叩きこむんだ。よほどの信頼関係が無いと不可能な戦法さ。」
天馬の言葉を聞いて、イヅチは慄然とした。圧倒的な攻撃力を有するゼティスと、技に磨きをかけ新たな戦術を生み出す師匠のコンビネーションに死角らしいものを感じなかったからだ。
「ルカリオ、戦闘不能!よって、ゼティスの勝ち!!」
ルカリオが起き上ってこれないと判断し、スレイグが判定を下した。
「よくやった、ゆっくり休め。」
ブライはルカリオを労いながら、モンスターボールに戻した。そして、師匠をまっすぐ見つめ、静かに言った。
「次が俺の最後のポケモンです。ここから、逆転して見せます。見ていてください。」
そして繰り出したポケモンは、師匠のオウリュウと同じポケモン—ボーマンダだった。互いの存在を確認し、双方ともに唸り声をあげた。
—続く—
mochizo No.10782568 2011年03月10日 22:05:46投稿
引用
「ギャオォォォッ!!」
ブライが最後に繰り出したボーマンダが特性いかくを発動した様だ。これで師匠のガブリアス—ゼティスの攻撃力は低下したはずだ。しかし、師匠は構わず容赦ない攻撃を開始した。
「瞬間発動、逆鱗出力70パーセント。」
「ガアァァァッ!!」
先ほどよりも鋭い動きでゼティスがボーマンダに突っ込んだ。
「飛んで避けろ!!」
「ギャオッ!」
指示に従い、ボーマンダは強烈な一撃を巨大な翼で舞い上がる事で回避した。標的を見失った逆鱗はフィールドに命中し、地面を爆砕した。まるで、大砲の弾でも命中したかのようだ。空振りにより生じた隙をブライは見逃さなかった。
「つばめがえし!」
ドラゴン・地面タイプのガブリアスであるゼティスに有効なのは氷タイプとドラゴンタイプの技だ。しかし、ブライが指示したのは飛行タイプ技のつばめがえしだ。必ず命中するという長所はあるが、威力は高くは無い。しかし、イヅチの目の前で見た事の無いつばめがえしが披露された。指示を受けたボーマンダは空中で高速回転を始め、小さな竜巻となってゼティスに突撃していった。その様子を見て師匠も素早く反応した。
「回転を止めろ。噛み砕く。」
両者の攻撃が正面から激突した。高速回転が加わったつばめがえしと、攻撃力は低下したものの破壊力抜群の噛み砕くが火花を散らす。体格差とゼティスが地面に立っている事を考えるとゼティスが力ずくで押し切るかと思ったイヅチだったが、必死に踏ん張ろうとしたゼティスはつばめがえしに弾かれる形で吹っ飛ばされた。
「グガアァァァッ!?」
驚きの声と共に、ゼティスは地面に落下して派手な土埃を上げた。これを攻め時と判断したブライは、一気にたたみかけた。
「流星群!!」
「ギャオォーッ!!」
ボーマンダは素早く上空に舞い上がり、圧縮したエネルギーの塊を隕石の如くゼティスめがけて降らせた。起きあがる直前だったゼティスは避ける間も無く、その全てに被弾した。凄まじい轟音と爆炎がバトルフィールドを駆け巡った。土煙の中からゼティスが姿を見せた。ドラゴンタイプ最強の技である流星群の直撃を受けてなお、戦闘不能にはなっていないようだ。いや、むしろピンピンしているようにさえ見える。
「グガガガガガッ!!!!」
強烈な攻撃を受けたにも関わらず、ゼティスは笑い声を上げる。
「怯むな!ドラゴンクロー!!」
「ギャオォォッ!!」
ボーマンダは間合いを詰め、斬りかかろうとする。師匠は不敵に笑って反撃に転じた。
「やるじゃないか。ゼティス、岩雪崩。」
「グガガガッ!!」
笑い声を上げながら、ゼティスが地面を激しく抉って岩石もろとも大量の土砂を天空高く投げ飛ばした。その量にイヅチは驚き、岩雪崩がボーマンダに襲いかかるのを見ていた。
「かわせっ!!」
雨のように降り注ぐ岩石や土砂を回避していくボーマンダだが、その全てをかわす事は出来ず、数発を立て続けに受けて体制を崩してしまう。
「全弾命中は避けたか。じゃあ、これでどうだ?逆鱗出力全開。逆鱗砲。」
「「「「!!!!」」」」
師匠の指示を聞いて、イヅチを除く全員が血相を変えた。
「やべぇ!!」
「師匠、本気だ!!!」
「イヅチ君、伏せて!!」
「えっ!?何ッすか?」
「いいから!」
イヅチの目の前で、ゼティスは今までにない動きをした。大きく息を吸い込み、全身にエネルギーをみなぎらせていく。そして、エネルギーを口に収束し始めた。ブライもボーマンダに指示を下そうとするが、まだ土砂は落ち続けており、思うように動けないようだ。そうしているうちに、ゼティスの口の中にエネルギーの塊が出来あがった。
「撃て。」
師匠の指示と同時に、限界まで高められたドラゴンのエネルギーが解き放たれた。破壊光線かと思ったが、比べ物にならないほどの轟音と閃光を伴い放たれたエネルギーは、土砂や岩石ごとボーマンダを吹き飛ばした。
—続く—
mochizo No.10782581 2011年03月10日 22:07:23投稿
引用
ゼティスの攻撃に吹き飛ばされたボーマンダは必死に空中に留まろうとしたが、力尽きて地面に落下した。その様子を見て、スレイグが素早く判定を下した。
「ボーマンダ、戦闘不能!よってゼティスの勝ち。ブライ、三体全て戦闘不能とみなし、師匠の勝ち!!」
勝敗がつき、両者が礼を交わすのを見ながら、イヅチは天馬に聞いた。
「ブライさんのボーマンダのつばめがえしと師匠のゼティスの逆鱗砲って、何なんッすか?」
「えっと、あれはね・・・」
天馬が難しい顔をして答えようとしていると、サムが近付いてきて教えてくれた。
「俺が説明しよう。まずは、ボーマンダが使ったつばめがえしだが、あれは師匠がアレンジを加えたものだ。それをブライが自分なりに分析して独力で習得させたものだ。師匠はつばめがえし・旋壊と呼んでいる。つばめがえしに高速回転を加え、威力の向上と遠心力で相手の攻撃を弾く効果を付与させることに成功しているんだ。もっとも、師匠のオウリュウが使えば、あなをほるの要領で地中を潜行できるけどな。次に、ゼティスの逆鱗砲だが、あれはゼティスしか使えない荒技でな、一日に一発が限度で、しかも直線にしか撃てない。そのうえ、エネルギー充填に時間がかかる。おまけに撃つには、一定以上の体力が必要だ。だが、威力にすれば通常の逆鱗3発を上回っている。文字通りの最終兵器と言うやつだ。だいたいは今回の様に岩雪崩などで相手の動きを制限してからでないと使えないようだな。ちなみに瞬間発動式の逆鱗は、通常の逆鱗の7割程度の威力しかないんだが、ゼティスは有り余る怪力と異常なほどの闘争本能で不足気味の威力を補っているんだ。どれも師匠が技に改良を加えた結果さ。」
「・・・やっぱり、師匠はすごいッす!」
サムの説明を聞き、目を輝かせているイヅチに天馬が補足した。
「どうやらブライは、一気にゼティスを逆鱗砲が撃てなくなるまでダメージを与えるつもりだったようだね。」
イヅチ達が会話している間に、治療担当のハピナスとラッキーが戦ったポケモン達を医務室へ運んでいった。それを横目にしながら、師匠はブライに語りかけた。
「一瞬、ヒヤッとしたよ。バトル中にできた瓦礫を盾にして何発か流星群を防いで無ければ、逆鱗砲を封じられるとこだった。」
「・・・勝てなくても、ゼティスと相打ちする位の気持ちで行ったんですが・・・。」
「まぁ、いいさ。楽しいバトルだった。」
師匠の言葉に、ブライは一瞬、ほんの一瞬だけ少年の様な笑顔を見せた。だが、すぐにいつもの鋭い目つきに戻り、敬礼して基地に戻っていった。
「ハクリュー、アクアテール!」
「チャーレム、ドレインパンチ!」
両者の技が真っ向から激突し、火花を散らす。師匠とブライとのバトルを見た後、イヅチは天馬を誘ってバトルのトレーニングをしていた。自分が目指す相手の力を見て、じっとしていられなかったのだ。天馬とのバトルは初めてだったが、ポケモンの体力を上手く利用したバトルスタイルに善戦するも負けてしまった。でも、不思議と、その負けですら自分の成長に繋がると思えた。
「急な話だけど、明日、シロガネ山に行こうと思う。荷物持ちに3人くらいついて来い。」
その夜の夕食の後で師匠が突然話を切り出した。実の所、師匠がきまぐれに行動を起こす事はそう珍しい事では無いのだが、シロガネ山の様にかなり険しく、容易く立ち入れない場所は珍しかった。
「・・・彼に会いに行くのですか?」
「さぁね。」
どうやら事情を知っているらしい燭陰が師匠に聞いたが、師匠はいつも通りに受け流した。どういう訳かは分からないが、シロガネ山は誰でもいつでも行けるような場所では無いし、珍しく強いポケモンが数多く生息していることで有名だ。もしかしたら師匠の強さの秘密が分かるかもしれない、イヅチはそう思い、手を上げた。
「俺を連れてってくださいッす!」
その様子にその場の全員がポカンとしている。そんなにおかしな事を言っただろうかとイヅチが首を傾げていると、天馬が助け船を出してくれた。
「師匠がシロガネ山に行く時は、山の麓からテンペスト号無しでポケモンの力だけで行くんだよ。それに師匠はかなりのハイペース、おまけに荷物もあるし、相当大変なんだ。」
なるほど、進んで行きたいと言いにくいのだろう。そうイヅチが納得していると、燭陰と輝脚が手を上げた。
「じゃあ、私も行きましょうか。」
「俺様も行くぞ!」
これで、イヅチを合わせて三人になった。それを確認すると支障は頷いて言った。
「んじゃあ、頼むわ。明日、朝5時起きな。斑鳩ひとっ飛びよろしくな。」
「任せな。ばっちり飛んでやるぜ。」
こうして、イヅチが師匠についていく形でシロガネ山に行くことが決まったのであった。
—続く—
mochizo No.10782589 2011年03月10日 22:08:23投稿
引用
スレイグ・D・フレイパルク 女 年齢18歳
師匠の弟子の中では比較的若い。大富豪の娘(らしい)だったが、家業を継いだり、親の決めた婚約者と結婚するのが嫌で家出、師匠に出会い、弟子入りした。特殊攻撃を得意とするポケモンを好む。基地のコンピュータの管理をしている。ちなみに基地のシステムは、ホムンクルスにより管理されているが、一部人の手で管理する方式を取っている。
天馬 男 年齢16歳
師匠の弟子の中で最年少。幼い頃から足が不自由で、特注の車椅子を使って生活している。以前は1人でポケモンバトルの旅をしていたが、しょうがいで差別されるのが嫌になっていたところで師匠に出会い、弟子入りする。ポケモンの体力を上手く使うバトルスタイルが得意。
輝脚・ストーム・閃光 男 年齢24歳
現役ライダー(自称)の男。最強最速のトレーナーになる事を目標としている。とにかく速さにこだわるが、よく師匠にウザいと言われていたりする。自室にバイクと、整備スペースを設けており、弟子の中では一番広い部屋にいる。もちろん素早いポケモンを好む。
シンシア・スー 女 年齢20歳
師匠の弟子の一人であり、防御力の高いポケモンを好む。外国の人間らしく、特有の訛りがあるが、会話に不自由はしない。家事は出来る方だが、料理に関しては量の加減が出来ない。一応、ポケモンドクターの資格を持っているらしい。
ホムンクルス 性別不明 起動してから6年7ヶ月
師匠が開発した人工知能搭載型ポケモントレーナー支援システム。様々な言語に対応しているほか、特定のポケモンの会話を翻訳することも可能。メインコンピュータは基地にあり、携帯電話型の子機で情報を閲覧する。ちなみに子機は防水加工に加え、強度も高い。
こんなところでしょうか。それぞれの過去なんかもいつか書いたり書かなかったりまたキャラが増えたら、3を追加したいと思います。