この小説は神話に実際に出てくる神様を元に世界観(登場人物やキーワードなど)を練りあげて作った小説です。その神様をモデルに作った登場人物は飽くまでも私のイメージで作った性格や名前なので、本当に神話に詳しい人からすれば見苦しい部分もあると思いますがご了承ください。
途中にある神話解説は結構中途半端な知識で書いてあるので悪しからず・・・
物語の進め方については、1話に付き、一つの事件が起こるというスタイルを取っています。part.1、part.2というのはそれを分割するための物だと思ってくれれば結構です。
前作『LOST HOUSE』と比べればクセの強いキャラクターが多くなっている・・・かな。
目次のようなもの
第一話 死神の鎌
・プロローグ ページ.1
・part.1 ページ.1
・part.2 ページ.2
・part.3 ページ.4
第二話 狡猾な真実
第三話 天空と巨人
第四話 ????
第五話 ?????
ハコキング
No.10927579
2011年04月13日 01:51:16投稿
引用
プロローグ
「歌姫サマ……明日の約束は果たしてもらうからね?」
幅の広い川を横切ってに渡る綺麗なボートの上に、二人の女性と一人の年老いた漕ぎ手の男が居たが、会話しているのは二人の女性のほうである。老人はただ細い、痩せ細った腕でボートを漕いでいるだけである。
会話している一方は、黒い布のコートを着た綺麗でお淑やかな印象を与える黒髪の女性で、もう一方は少し派手な服装を着ており、髪は金髪に染めていた。年齢に関して見た目から言えば、金髪の女性のほうがどう見ても若いだろう。
「そうすれば、私の息子をあの恐ろしい呪縛から開放してくださるのでしょうね?」
「えぇー、私を信用してよー。あたし、困っちゃうと頭が痒くなっちゃうんだから」
「……」
黒髪の淑女が呆れるように黙り込むと、漕ぎ手の老人は「お嬢様方、もうすぐ家につきますぞ」と声を掛けた。ボートの向かう先には、既に向かい岸がすぐそこにあった。
「そろそろお別れだね。おやすみなさい、歌姫サマ」
ボートから降りれる状態になった時、金髪の女性はそこから立ち上がり、ボートから降りた。そして、彼女がボートの傍から立ち去ろうとした時ーー黒髪の淑女は「待ちなさい」と言い、彼女を呼び止める。
「一つだけ聞かせてください。貴方達がこれからやる事はとても不可解です」
——なんですか。貴方達の目的は
その時、金髪の女性は彼女に顔を向けないまま口を開く。
「あのさぁー、うちが言うのもあれだけどー。ちょっと関わっているからって、首突っ込むの止めよ?」
彼女はこちらに顔を向けると同時に、顔をにんまりとさせ、頭を右手の中指で掻いていた。
「ね?"四上楠葉(しかみ くすは)"サマ」
ハコキング
No.10931520
2011年04月14日 22:48:37投稿
引用
・天野照子
「起きろ姉貴ィー!」
扉を叩く音と共にその向こうから聞こえる大きな声によって、ふかふかのベッドに潜り込んでいる彼女は目を覚ます。彼女は起き上がった後にあくびをしながら目を擦り、ついでに垂れていたヨダレも拭いた。彼女の長い髪は朝の日差しに跳ね返ってキラキラと輝いていたが、かなりボサボサになっていた。
そして、彼女が目覚まし時計を見ると、その針は7時を指している。
——あっ、やっべ。もうこんな時間かぁー……
心の中でそう呟いた後に彼女が扉に向かって「今行くから『ちょっと待ってろ』って親父に言ってくれー!」と叫ぶと、「んじゃあ、そしたら俺と"月人"はもう先行ってるからなぁ!」と返事が返ってきた。
それから少しの間の後に、階段を降りる足音が壁越しに聞こえてくる。
「……やれやれ。何で毎日学校にいくんだかな……」
彼女は床に足をつけた後に制服をタンスから引っ張り出し、適当に床へと放り投げた。それから、彼女はパジャマを脱いで制服へと着替えていく——
……彼女の名前は"天野照子(あまの てらこ)"である。先ほど扉越しに話しかけてきた末っ子の弟である"天野寿茶男(あまの すさお)"と、照子と同じ年の弟である"天野月人(あまの つくひと)"、そして父親の"天野薙(あまの なぎ)"の3人と共にこの家に住んでいる。
彼女は容姿こそとても綺麗なものの、それとは裏腹に男勝りの口調で話し、目つきも鋭い。更にはこの地域の学生の殆どを取り仕切っている。云わば俗に言う"スケバン"……のようなものである。が、家庭環境はさっきの会話から察するに意外に良好な方だ。
寿茶男は運動に関してならほぼ完璧で、どのクラスにも必ず一人以上は居る、“どんなスポーツも出来るタイプ”だった。性格こそは活発で陽気なものの、一家の中では一番の常識人で善人である。
月人は剣道に精通しているが、どちらかと言えば勉強面の方で目立つ方であり、照子や寿茶男と比べると成績は“天と地の差”と言ってもいい程優秀である。おっとりした性格ではあるものの、その素性は“裏”情報通であり、一度本気で不快にさせた相手の秘密をバラすことで精神的なダメージを与える照子以上の鬼畜である。
そして、彼女たちにとっての父親である薙は……本当の父親と言ってもいい。そんな存在である。
ワイシャツの第一、第二ボタンとブレザーのボタンを全てを開けっ放しにしているが、一応制服に着替え終わった照子は自分の鞄を持った後に自分の部屋から出て階段を降りた先にある洗面所に行き、ボサボサの髪をヘアアイロンで整える。
それを終えると、今度は朝食が置いてあるであろうリビングへと向かった。そこにはテーブルの上に置いてある朝食のサンドイッチと、黙々と台所で皿洗いをしている父親の薙の姿が見える。
「早く食べなさい。学校に遅刻しちまうだろう」
「はいはい……」
そんなごく普通の日常的な会話と共に照子は椅子のすぐ傍に鞄を置き、サンドイッチを手に取り一口、二口ですぐに皿を平らげた。見た目によらず、大きな口である。
「ごちそうさま。じゃあ、行ってきます」
「じゃあ、今日も学校楽しんでこいよ」
照子が学校に行く際の薙の口癖である。照子は、一々それに突っ込んでみた時期もあったが、今となってはもう諦めかけていて、言わせたままにしている。彼は余程、高校生活に思い入れでもあるのだろうか。
ハコキング
No.10931633
2011年04月14日 23:02:36投稿
引用
アマテラス(天野照子)
この物語の主人公となる不良少女“天野照子”のモデルになったのがアマテラスという神様です。
アマテラスは日本神話の主神となっている存在であり、小学六年生や中学二年生の時に習ったであろう日本史に“古事記”というのがあったはずですが、その中にそのアマテラスという神様が載ってます。そこでの名前は天照大御神(アマテラスオオミカミ)という長ったらしいものになっております。
アマテラスは太陽神という、名前の通り太陽を司る役目を持っているのですが、スサノオによってマジギレしたアマテラスが勝手に岩戸という洞窟の中に隠れたせいで、世界が暗闇に覆われてしまったり、少々自分勝手な一面もある模様。
ハコキング
No.10940442
2011年04月18日 01:49:59投稿
引用
ラジオ局のスタジオの準備室の前でべっ甲の眼鏡を掛けているスーツ姿の男が壁に寄りかかりながら、じっと立っていた。彼の名前は"芽留木聖(めるき せい)"という男で、刑事をやっている者だ。今は何をやらされているかというと、他の場所に割り当てられてしまった警備員の代わりにスタジオの入口である準備室の前の警備である。
普段ならば、そのような事は通常は考えられないのだが、芽留木は典型的なエリート刑事であり、鋭い洞察力と超人的な判断力によって数々の実績を挙げており、部下や同僚からの信頼も厚い。
——ブラボー!今日はなんて素晴らしい日なんでしょうか!
今日はなんとっ!あの伝説の歌姫が7年ぶりにこのスタジオへと舞い降りました!
DJの陽気な声がスタジオから漏れ出している。
……とまあ、そんなことは置いといて、何故に芽留木たちを初めとした警察がこのラジオ局に厳重な警備体制を敷いているかというと、一つ目の理由はさっきDJが口にした"歌姫"がこのラジオ番組に出演するためである。
その歌姫の名前は"四上楠葉(しかみ くすは)"という名前である。見る者を圧倒する美貌を持っていて、それは何年経っても衰える気配が見られない。
『彼女は不老不死の存在ではないのか』という声も多数上がるほどだ。彼女の透き通ったような歌声はオペラの歌唱はもちろん、バラードも得意とし、その夜を連想させる声から"夜の女王"とも呼ばれている。
そしてあれの理由の二つ目がこの街の"市長"がこの番組の常連リスナーだからだ。彼は市長というにはとても強大な存在である。
この街の中央にある"オリュンポスの山"の頂上にある市役所にいるが、そこの市長席へ座っている彼は常に超人なみの筋肉を見せつけるように上半身の服を脱いでおり、白い髪に白いヒゲ——そして、常に白く光る鋭い目は見る者に“貫禄そのもの”を直視させるだろう。
それに彼は7年前の"世界中に衝撃を与えた事件"をほぼ単独で解決させ、世界を救ったという実績を持っている。だから、彼は市長でありながら市長以上の権限を持っており、どちらにしろ世界は救世主である彼には逆らえない。
——にしても、その"夜の女王"と呼ばれている歌姫には、微かに違和感を感じるな……
何でそんな"仇名"が付いていて、しかも久しぶりの出演だというのに昼にやるんだろうか?
芽留木は微かにそう考えていた。だが、その些細で余計な思惑が失敗への僅かな可能性になることを知っていた彼はすぐにそれを払い除ける。
——チロリーン、チロチロリーンリーン……
扉の奥から足音……ではなくて何やら聞き覚えのあるオルガンが奏でる聞いてて悲しくなるメロディが近づいてきた。それを聞くいた芽留木は目を細くしながら溜め息をつく。
——やれやれ……またアイツの世話か……
そうして、廊下への扉が開けられると、その先には芽留木が思っていたとおりの人物が現れた。その人物は見るからに芽留木と同じ刑事で大柄ではあったが、何故か半べそをかいていて、しかも小型のオルガンを携帯している。
「うう……芽留木先輩ぃ……もうこんな酷い光景見てられませんよぉ……
警備という仕事の予想を遥かに絶する退屈さに苦しむ元気いっぱいの他の警察たちの光景なんてもう……」
そう言った後に携帯オルガンでまた物哀しいメロディを1フレーズ弾いた後に——
「見てられませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇん!!」
と情けない叫び声を挙げながら、計八本の指を全て同時にオルガンへ押し込んで不協和音を鳴らした。
「……とりあえずな……そのオルガンの音いつもうるさいからいい加減やめてくれないか」
ハコキング
No.10940531
2011年04月18日 02:24:22投稿
引用
メルキセデク(芽留木聖)
スーツ姿で眼鏡はべっ甲で頭の回転が早く、しかも職業が刑事というクールな印象を与えるであろう彼は天野照子と同じく主人公です。彼と照子を同じく私の連載小説であるLOST HOUSEで例えるなら秋崎と暁美の関係というよりも比良と秋崎の関係でしょう。
とまあ、余談はともかくとして、彼のモデルとなったのは神様ではなくてその部下である天使です。
名前はメルキセデクというのですが、アマテラス・ツクヨミ・スサノオの日本神話御三家や、シヴァ・ハデス・ポセイドン等の一度は聞いたことはあるであろう有名な神と比べたらマイナーですね。それでも主人公ですが・・・
そんなメルキセデクは平和と正義を司る天使であり、キリストが人間にとっての救世主であるのに対して、メルキセデクは天使にとっての救世主だからキリスト以上に偉大な存在だと言われているらしいです。
天使にとっての救世主という部分でをもう一人の主人公にするに相応しいと思ったのですが、ネットで集まる情報にも限りがあるからあまり情報が拾えない始末でございます・・・
ハコキング
No.10944640
2011年04月19日 22:17:55投稿
引用
授業に遅れて、11時50分に学校に着いた照子は、深夜に屋台でおでん屋をやっている事で有名な“御殿郡(おでん ぐん)”というネガティブな先生に謝りながら教室に入った。
「あー、先生すいません。本当は7時半までには学校出たけど、何かあたしに喧嘩売ってきた奴を小一時間カツアゲしたら授業遅れちゃいました」
「舐めてるだろ、お前……」
その後は何事も無く席についた。
「いやー、照子さんホントスゲエッスねー。喧嘩売ってきた奴を片っぱしからカツアゲするなんてマネ、あたいにはゼッテー無理ッスよ!」
「だってさぁ……金が全くねぇ状態で喧嘩売られたら、そいつの財布くらいカモりたくもなるだろーよ」
内容はともかくとして楽しそうに照子と喋っている薄青い髪の毛が特徴の少女の名前は"雨宮渦女(あまみや うずめ)"である。照子の小学生時代からの幼なじみであり、彼女を慕っている存在であった。口調こそは子供じみたチンピラと代わり無いものであるが、ボディスタイルは相当魅力のあるものとなっている。
「あっ、そうだ照子さん!照子さんの舎弟の中に高2の顔だけ女じみたヤローがいるじゃねぇッスか?」
「高2の顔だけ女じみた野郎……って、"大奈斗"か。アイツがどうかしたのか?」
「驚いたことになんと!なんと!実はソイツの母親が超美人の歌手で、今日久しぶりにラジオ局で歌うらしいッス!」
「あー、それで昼休みくらいに聞こうってか。んまぁ、一曲聞くくらいなら時間は……あるか」
「おー!流石照子さんッス!話が早いッスね!んじゃ、こんなクソかったるい授業が終わったら聴きましょッス!」
「クソかったるい授業で悪かったな……」
御殿が疲れたような目でこちらを見つめながら憂いに満ちた言葉を投げかけてきた。
ハコキング
No.10944760
2011年04月19日 22:31:46投稿
引用
アメノウズメ(雨宮渦女)
アメノウズメもアマテラス同様、日本神話に出てくる神で、漢字で書くと天鈿女命となります。
アメノウズメは芸能の女神として知られてますが、彼女に関するエピソードで最も有名なのは岩戸隠れしたアマテラスを出す為に、オモイカネの策略によってアメノウズメが裸でエロティックな踊りをして他の神々を笑わせるという、最近のごく普通の人間の脳みそではとても考えつかない方法で場を盛り上げ、気になって外の様子を見たアマテラスの隙を作り、そして岩戸から出すことに成功するきっかけを作りました。
ハコキング
No.10947404
2011年04月21日 00:54:18投稿
引用
というわけで、渦女の誘いに乗った照子はラジオで自分の後輩である"大奈斗"の母親の歌を聞くために、自分の弟である"月人"の教室へと入った。
だが、どうやら彼は居ないようだった。彼は昼休み中、いっつもここで(学校の中だが)ノートパソコンか携帯をいじっている筈だが、その姿が全く見当たらない。
「あれぇ?月人のヤローは何処行ったんッスかねぇ?」
渦女が文字通りに首を傾げながらそう言うと、「渦女さーん!」と誰かが凄い勢いで彼女に向かって抱きついてきた。あまりの勢いで渦女は「え」と反射的に呟いた後に成す術もなく倒れる。
照子が「まさか」と思いながら、そちらの方を向くと、渦女にこの世に存在する"可愛い"を全て集めて濃縮させて作り出したとしか言い様がない少女が渦女に抱きついてきた。
その少女の名前は"那典守子(だてん もりこ)"という名前で、サラッとした感じのショートボブの髪型にウサギの姿を型どったヘアピンと赤いフレームの眼鏡の組み合わせは単純ではあるが、"可愛い"以外の言葉に当てはまるものがないほどである。
その代わり、性格は果てしなく歪んでいる。
「キャー!渦女さん!この可愛い私のところに来てくださるなんて感激でございますー!」
そう言いながら、守子は渦女を"本気で"抱きしめていた。これが彼女の歪んでいるポイントの一つである。
「ちょっ、ちょっと!離して!あんたなんかと付き合うものですか!」
照子以外の相手になると喋り方が、がらっと変わる渦女も理解し難い変人だが……(照子相手になると話し方が変わると言った方が正確か)
と、早速呆れた照子は守子の後ろ襟を鷲掴みにし、持ち上げた。
「とりあえずさ……聞きてぇ事があるんだよ……」
守子は照子の貫禄のある言葉で黙りこんだと思ったら、今度は「はっ、はい……なんでしょうか……?」と言いながら——頬を真赤に染めた。
——来たよ……クソ面倒くせぇリアクションが……
照子はそう思いながら、"月人が何処に行ったか"を聞いた。
「あっ……人の弱みにつけ込むことしか能力がないあの汚れたネトゲ廃人兼、気持ち悪いオタク男は、なんか急に騒ぎ出して図書室に行ってましたよ。そう、あの黄色い服着た変人気取り——"書本蓮天(しょほん れんてん)"の所へ……」
「"書本蓮天(かきもと はすた)"だよ!絶対に面白がって言ったろ!つか、お前がさっき散々クソみたいに称した奴の姉の前でよくそこまで言えるよな!」
「そ、そんな……、酷いです……私が照子さんの前でふざけることなんてする訳ないのに……!ううう……」
「はぁ……面倒だわ……」
守子は散々男だけを貶したかと思ったら、急にハンカチをポケットから出して泣き始めてしまったのだ。
だが、聞きたい事は聞けた照子は呆れたような表情をしながらもそのまま無視して、渦女と共に図書室へと向かった。
ハコキング
No.10947431
2011年04月21日 01:08:19投稿
引用
ゴモリー(那典守子)
極稀に見る魔性の少女の守子のモデルです。
ゴモリーはソロモン72柱というソロモン王が過去に封じた悪魔の中の56柱目であり、唯一の女性なのですが、過去・現在・未来・隠された財宝について全てを知り、それを語り、老若問わず全ての女性に男性に対しての愛をもたらすという、悪魔の“悪”の字が全く見当たらない人です。(この小説では相当性格が歪んでありますが・・・)
大きな特徴としては大きなラクダに乗っていたり、腰に公爵夫人の冠を携えたりしているということですね。
ハコキング
No.10962093
2011年04月28日 00:05:41投稿
引用
ラジオ放送を聞く為に月人を見つけるべく、照子と渦女は図書室へと辿り着いた。すると、図書室の受付に気味の悪い印象を与える黄色のコートを着た青年がノンビリとした姿勢で分厚い本を読んでいた。フードを被っていたので、顔は良く見えないが、この学校で黄色いコートを着ているのは"書本蓮天(かきもと はすた)"だけしか考えられないので、すぐに彼だと分かった。
「おーい、蓮天ぁー」
「ん……キミは何時ぞやの女番長サンか」
「……"何時ぞや"って、もう散々会っただろ……」
蓮天はこの学校の図書委員の委員長であり、のんびりと本を読みながら受付の担当をしている黄色いコートの変わり者である。"蓮天(はすた)"を"れんてん"と呼ばれやすいが彼はさほど気にしてないようだ。
だが、彼は生徒であるにも関わらず授業を全く受けてなかったり、彼のコートと同じく黄色い色の表紙の本に何か書き込んだりしたまま深夜になっても帰らないなど、謎に包まれている。
「それで、何の用だい?女番長さん?」
「あー、その呼び方何か慣れねぇんだよ。いいから普通に"照子"って呼んでくれ。なぁ?渦女?」
「ん?えっ、あっ、はい!そっ、そうッスよね!
おい!蓮天!照子さんの言う通り——"女番長サン"じゃなくて——"照子さま"って呼——びなさい……」
「どうしたら、そんなにあたし以外の相手に人見知りになれるんだよ……」
「まぁまぁ、それはともかく、君たちの要件を聞こうじゃないか。グダグダな会話は詰まらないから嫌いなんだ」
「何偉そうに言ってんだよ——まぁ、言ってることは正しいけどな……
んで、"月人"を見なかったか?」
「月人クンかい?彼だったら、そこにいるじゃない」
そう言った蓮天が指を指した方を向くと、イヤホンを付けながら弁当を食って、何やらノートパソコンをいじっている、黒に近い青色の髪の小綺麗な青年の姿が見えた。あれこそが照子の弟である月人だ。
「おい、月人ぉ。よーやく見つけたぞ」
「お姉ちゃんこそ、何で入ってすぐに気付かなかったの。というか、ヤンキー共の喝上げ楽しかった?」
「……あたしからすればどうでもいい事だけど、やっぱし、お前だけは敵に回したくないわ……」
月人は前にも言った通り、情報通である。彼の持つ情報網はこの学校ではなく、この街でトップクラスと断言してもいいだろう。それ故に絶対に敵に回したくない人間に成り得る。
「あっ、そうだ。月人さん、照子さまの為に——このノートパソコンを——使わせても……」
渦女の言葉はここで止まった。
——はぁ……また人見知りモード発動かよ……
心のなかでそう呟いた照子は軽く、手のひらで渦女の背中を叩きながら口を開く——
「言え」
照子が貫禄のある表情で彼女に向かってそう呟くと、彼女は息を呑んだ。
「……このノートパソコンを使わせても——よろしいッスかあああぁあぁああぁああぁあ!?」
「いいよ」
渦女は常人には理解出来ない勇気の使い過ぎで、月人のあっさりとしすぎた返事にも戸惑う気に慣れなかった。その証拠に「ぜぇ……ぜぇ……」と息を荒くしている。
「あ、でも、僕の友人がフザケて送ってきたウイルスの仕業でまた使えるのに3時間は掛かるけどね」
「はぁ?」
「ぜぇ……ぜぇ——って、はい?」
「『はぁ?』とか『はい?』とか言われても困るよ。一応、修復はできるけどその過程が面倒臭いってレベルじゃないからさぁ……」
「……ほぉー」
「そんなことより、どうするッスか!!これじゃあ、大奈斗の母ちゃんの歌が聴けないじゃないッスか!!」
「ああ、それ聴きに来たの?じゃあ、他当たれば?多分、携帯でも聴けると思うよ?
壮大な人見知りの渦女ちゃんにはお姉ちゃん抜きじゃ無理だろうけど。
「というか、渦女はそんなに聞くのに必死だったの……?」
「ううっ……聴きたいけど、これ以上照子さんに迷惑はかけられないッスし……
あっ、そうだ!"麻凛町(おりんちょう)"の駅前交差点でも流れているはずだからそっちに行くッス!」
「はぁー?あそこ人多いじゃんかよ。あたしって、そういう、喧嘩が見世物になる所に行きたくねぇんだよなぁ……つーか、今思い出したけどまだ弁当食ってなかったし」
「うううっ!
——照子さんと一緒に行きたかったけど、仕方ないッスねぇ……じゃあ、あたい一人で聞いてくるッス……」
渦女はそう言った後、ちょっと残念そうな表情をしながら渋々とここから立ち去った。
「モテモテだね。スケバンさん」
「ほんとにね。お姉ちゃん」
「おめーら、それ挑発で言っているんだよな?
今すぐぶっ飛ばすぞ」
ハコキング
No.10962119
2011年04月28日 00:25:58投稿
引用
ツクヨミ(天野月人)
NARUTOとかでイタチが使っていた技として結構有名なので、見ている人は名前だけは知っていると思います。(といっても、僕はナルトは途切れ途切れにしか見てませんが・・・)
ツクヨミはアマテラス・スサノオと同じく、日本神話の御三家としても有名です。古事記では“月読命(つくよみのみこと)”と呼ばれてますね。
ただ彼の活躍は少なく、有名なエピソードと言えば保食神という、名の通り食べ物を司る神にお持て成しを受けたのですが、そのお持て成しの食べ物の出た所が余りにもショックすぎてつい殺してしまったというものです。
ハコキング
No.10964268
2011年04月28日 23:12:26投稿
引用
未だに芽留木がスタジオへの扉の前へ待機している中、先ほど現れた彼の後輩である大柄の刑事は、黙々と椅子に座って今度は"幸せの歌"をオルガンで弾いていた。
「……なんで、さっきまで物凄い勢いで悲しんでいたのに、急にその曲弾いてるんだ?」
「先輩には分からないです……冷静な推理や捜査のためには、ポジティブな気持ちはすぐにネガティブな気持ちにし、ネガティブな気持ちはすぐにポジティブな気持ちに切り替え無ければならないのです……!」
「それでポジティブになった気持ちをまたネガティブの気持ちに戻して、そこからまたポジティブな気持ちに——どういう頭をしたらそんな面倒な考え方が出来るんだか……」
「そのセリフもう数百回聞きました……」
「お前のその面倒な考え方を同じくらい聞かされる身にもなってみろ。というか、お前椅子でくつろぎ過ぎだ。今すぐ立て」
「ううっ……せっかく、くつろげてポジティブな思考になれると思ったのに、これじゃあ足の疲れすぎでネガティブな気持ちになってしまう……!」
「はいはい……それでいいんだろ……」
馬鹿らしい会話を繰り返している内に、また廊下への扉が開けられた。そこから中には行ってきたのは、ラジオ放送で姿がリスナーに聞こえないのにも関わらず、清楚で黒いドレスを着ている黒い髪の美女であった。そして、彼女こそが間違いなく、芽留木たちが警備員をやらされるハメになったきっかけの一人である。
「……あなたは"四上楠葉(しかみ くすは)"様ですね?」
芽留木が丁寧な口調でそう言うと、楠葉と呼ばれた女性は「はい。その通りでございます」と、妖しい微笑みを返した。
すると、芽留木はべっ甲の眼鏡を外した後に深くお辞儀をした。
「私共は“麻凛警察署(おりんけいさつしょ)”の者であり、今日のこの事態に限ってここの警備を任されました。この部屋を任された私の名前が"芽留木聖"、そして隣の者が"伊須羅譜入(いすら ふいる)"と申します」
そして、芽留木に続いて譜入と呼ばれたあの後輩刑事が深々と頭を下げるのを見た後、芽留木はべっ甲の眼鏡をまた掛けた。
「何かご不明な点はありますか?(普通にあると思うが……)」
「不明な点ですか……?まぁ、高が"老いぼれた女"が来た程度で警備を厳重にしたり、あなたの連れの何故かオルガンを弾いている刑事さんの存在とか、突っ込む所はたくさんありますが……そこまで追求するほどでもありませんね」
「恐縮で御座います」
と同時に芽留木は心の中で「"老いぼれた女"……?彼女はいくつだ?どう見ても20代後半くらいにしか見えないが……」とも思っていた。
そうして、楠葉はスタジオの中に入ったのを見ると、譜入は顔を赤くしながら幸せそうな顔をしていた。
「いやぁ、こんな素敵な女の人を見たのは初めてです……あの妖しい微笑みと言い、僕のハートをズッキュン!……です」
「そうしてズッキュンされた後にお前の存在を疑問視されたけどな」
すると、譜入はまた物哀しい表情になり、それに合わせて物哀しいメロディをオルガンで弾いた。
ハコキング
No.10964293
2011年04月28日 23:21:08投稿
引用
イスラフィール(伊須羅譜入)
ポジティブとネガティブのギャップの変動が激しい彼のモデルはイスラフィールという音楽を司る天使です。
大柄である・常にオルガンを持っている・ネガティブっぷりが半端ないという点はイスラフィール自身からの設定から取ってます。
大柄であるのは、地面に足をつけた状態で天まで頭が行き届くという点から、常にオルガンを持っているのは音楽を司る天使である点から、ネガティブっぷりが半端ないのは神が地獄で裁きを止めない限り涙を流し続けるという点から等……
ハコキング
No.11010129
2011年05月19日 01:43:15投稿
引用
一人で不良からカツアゲした金を使ってコンビニで買ったそばを照子は学校の屋上で淡々と食っている。ほぼ、彼女の専用スペースのようなものだ。その理由はどう考えても、彼女に勝てる者は誰一人居ないと信じているからだ。それは彼女のある“能力"に起因しているだろう。どちらかと言えば、追い出しているのは彼女の方だが。
しかし、そんな時にテニスボールを地面に跳ね返し続けながら歩いている、少し派手な髪型の少年がここへ訪れ、照子に話しかけてきた。
「よう、姉貴。いつ学校着いたんだ?」
「ついさっきだよ。4時間目の"御殿郡先生"の授業があっという間に終わった後に、渦女が何か『照子さーん、大奈斗のヤローの母親の歌を聴こうッス〜』っていう風にあたしを振り回した後、一人で麻凛町の方まで行きやがったんだよなー。携帯ある奴なんていくらでも探せるのに……
あっ、そういえば、あたし携帯持ってたんだけど家にまた忘れたんだっけ」
と答えた照子はそばを一口食べた。今、彼女と話している相手こそが、照子の弟である"天野寿茶男(あまの すさお)"だ。今日の朝に照子を起こした人物も彼である。
「——姉貴ぃ、せめて携帯くらいは持ってこうぜ……かばん忘れないだけまだマシだけどよ」
「はいはい……あっ、そうだ。お前は携帯持ってるんだろうな」
「あたりまえだろ、こっちはちゃんと持ってきてるぜ。で、その、なんだっけ……大奈斗の奴の母親の歌を聞くんだっけ」
「そそっ。まぁ、渦女には悪いけど一人で聴くことになるな」
「姉貴もやっぱりワルだな……とまぁ、そんなことは置いといて——ちょっと待っててくれよな。携帯でラジオ聴ける方法探してくるから。でも、ラジオなんて聞いたこと無いから時間掛かるかもな」
「んじゃあ、あたしは大奈斗を探してくるわ」
「アイツ今日学校来てたけど、ホントに来んのかよ?あの“無関心”という言葉しか当てはまりそうにない奴が」
「多分、大丈夫だよ。暇で死にそうになっている時は流石に来るって」
そうして照子はそばを立ち食いしながら屋上を出て行った。
ハコキング
No.11011129
2011年05月19日 21:28:37投稿
引用
スサノオ(天野寿茶男)
スサノオを語る際には有名な化け物である八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治し、奇稲田姫(クシナダヒメ)を助けるエピソードを忘れるわけには行かないでしょう。
そのエピソードはスサノオの力強さと勇敢さを示していますが、同時に彼はかなりの乱暴者なのでアマテラスを何度も怒らせ、終いには高天原を追放されてしまいます。八岐大蛇を対峙するエピソードはその後であり、クシナダヒメを助けた後は彼女と結婚し、出雲の須賀の地で暮らしました。そこで「八雲立つ出雲八重垣妻籠に八重垣作るその八重垣を」と詠いましたが、これは日本初の和歌として知られています。
ハコキング
No.11011833
2011年05月20日 14:11:46投稿
引用
——チャチャチャ、チャーン……
チャチャチャ、チャーン……
「その曲もオーケストラで有名だけどな……そのフレーズ何回繰り返す気だ」
「このフレーズの続きだけはどうしても忘れるのです……」
「楽譜持って行け」
「それも忘れるのです……」
「はぁ……(ここまで来るとどう返事を返せばいいのかわからなくなるな)」
あれから10分経っても、状況はやっぱり全く変わらない。話題がないときによくありがちな会話するほうが退屈になりそうな雰囲気だった。
しかし、遂に彼女の歌声が放たれる時がやってきた。
——さぁ!お次はついに本日のゲストの出番がやってきます!
そう!それは……夜の歌姫“四上楠葉”だー!
「おお!遂にやってきましたよっ!あの綺麗な方の声を僕も聞いてみたいです!」
DJの勢いの良い声に反応するように、急にポジティブになった譜入は素早く席を立ち、スタジオへと繋がる扉へと耳を押し付けた。
「やれやれ……」
呆れる様に芽留木が首を振ってから暫く経つ——
——!
——狂気、破滅、恐怖……
その全てを含んだ悍ましい歌声が響き渡る……
その歌声と共に芽留木と譜入は頭が暴れるようにズキズキと痛み、耐え難い息苦しさを感じ取った。
「譜入ッ——!早く“例の能力”で音を遮断しろ……!」
「す、すぐやります……!」
譜入が今にでも失いそうな意識を保ちながら両手を合わせて叩くと、彼と芽留木は何も聞こえなくなった。それは、あの悍ましい歌声からの開放を意味する。
これはこの世界に住む人間の特有の能力……と言っても、かなり急な話であるが、これはこの世界においての常識となっている。この世界にいる大半の人間がそれぞれ違った能力を駆使する。
その一例が譜入の"自分とすぐ近くにいる人間に掛かる音を遮断する"という能力である。その能力によって、芽留木と譜入はあの歌声を遮断している。しかし、その"すぐ近く"という範囲が、対象が彼の両腕の範囲内に収まる程度なので、譜入の能力を利用して歌声そのものを止めることまでは出来ない。逆に一度決めたら、彼が解除するまではどんなに離れても効果は続くが、この様に全ての能力には代償が付き物である。譜入の能力は、“効果が届く範囲が狭い”という欠点が代償になっている為、彼自身には特に代償は付かない。しかし、ほとんどの場合は体力が消耗したりするという代償が殆どである。
あの歌声もそんな能力の一つだ。歌い手が何を代償にして歌っているのか分からないが。
——くそっ……譜入に助けてもらったのは良いが、まだ少し頭が落ち着かないな……
さて、どうやってそこで歌っている彼女を止めるか……
窓越しからスタジオを覗いてみると、やっぱりあの悍ましい歌声を放っていたのは"四上楠葉"だった。隣にいたDJは倒れている。直接彼女を止めようとしても、スタジオへは社員証となるカードが無いと入れない。そして、芽留木も譜入も何故かそのカードを持っていない。
どうしようかと考えた芽留木はメモ帳とペンを取り出し、大きく『スタッフの方からIDカードを拝借するぞ』と書き、それを譜入に見せつけた。どちらも何も音が聞こえない状態だから当然のやり取りである。
それを見た譜入はビシっと敬礼した。本当は警察帽子を被ってない状態での敬礼は禁止されてるが……
それから5分経つ——近くには意外に誰も居なかったので、エレベーターのすぐ傍にある階段で21階から20階まで降りてからその先のすぐ近くに倒れている警備員からIDカードを取り出し、すぐにスタジオの準備室へと戻った。その警備員は幸い意識を失っているだけだったが、彼のポケットに入っていたIDカードを取り出した時はうつ伏せに倒れていたので、取り出すのに少し苦労した。
だが、スタジオ準備室からIDカードをスキャンし、スタジオへと入ったときには明らかに"何か"が不足していた。そう、それは"四上楠葉"である。それに気づいて驚いて声を出そうとしても、譜入の能力のせいで自分の声さえも聞こえない。
——彼女がここに居ないということは……もう彼女は歌ってない?
そう考えた芽留木は譜入に能力の効果を消すように促した。それに従って、譜入は能力を発動した時と同じ様に手を合わせて叩く。
すると、僅かながら色々な機械の起動音が聞こえた。つまり、譜入の能力は解除され、本当に楠葉は歌うのを止めたということである。
「彼女は何処に行ったんでしょうね……」
「分からない。だがその手がかりならあるはずだ」
「えっ!?この部屋の一体何処に!?」
「いや、別のところにある。それは……"エレベーターが今何処にあるか"というのを見ればいい。彼女はこの光景を見つけて追いかけてくる俺たちを警戒しているはずだ」
「おぉ、なるほど……!流石、頭の回転が速い!」
「この考え方には幾つか疑問点が残るはずだが、今は呑気に考える場合ではない。早く行くぞ!」
芽留木の判断に引っ張られるように譜入も急いで走る。そして、エレベーターの所まで到着すると、右のエレベーターは"14階"、左のエレベーターは"32階"……つまり最上階だ。
——やっぱり違和感があるな……?彼女は階段を降りて逃げたのだろうか?
いや、そしたら気づく筈だ。生憎あそこには隠れられるスペースなんて無いからな。
そう思ったとき、"上の方"からうっすらと女性の甲高い叫び声が聞こえた。
それを聞いて「まさか」と呟いた芽留木は急いでエレベーターのスイッチを押し、エレベーターが来るまでは「はやくしろ……!」と呟きながら待った。
「芽留木先輩……今のは一体……?」
「分からん!だが、いい事ではないのは確かだ!」
右側のエレベーターが着くと二人はすぐに中に入り、上から悲鳴が聞こえたので32階のスイッチを押し、そこへと向かった。その途中で芽留木は気がつく——
——32階最上階……そこはつまり、"社長室"がある所だ!
とても長く感じた数秒の後、エレベーターは32階へと辿り着き、すぐにエレベーターから出た。そして、その後すぐ目の前にあったのは、芽留木が恐れていた事態であった。
扉が開いている社長室の入り口で、一人の女性がこちらに背を向けて立ち尽くしている。その向こうにあるのは——
「やっぱりか……」
スーツを着た中年の男が口から血を大量に流しながら"死んでいた"。その男はこのラジオ局の社長——"白鳥頼傅(しらとり らいでん)"である。
そして、その前に立ち尽くしている女性が"四上楠葉"だ。彼女は未だに立ち尽くしていたが、暫くするとこちらを向いた。
「彼は私が殺しました——さぁ、逮捕してください……」
その時の瞳は曖昧な決意を感じると共に、何かに怯えている感じでもあった。
第一話『死神の鎌』part.1終了。
part.2へ続く……
Part.1 of the 1st story "The Death's Sickle" is the END.
And this story continues to part.2...
ハコキング
No.11011850
2011年05月20日 15:24:19投稿
引用
・天野照子(18歳,女性,高校二年生)
本作の主人公。“最強のスケバン”として周りから恐れられている。一応、長髪の黒髪美人であり、性格も不良じみている割に優しくはあるが、一度自分に喧嘩を売った相手には本当に容赦がない。集団で喧嘩を売られても全員痛ぶり、おまけに財布ごとカツアゲするという、いわゆる“逆リンチ”を普通にやれるほどの強さ。
第一話では彼女の幼馴染みであり、右腕的存在である人見知り少女の“雨宮渦女”から、彼女たちの後輩である“四上大奈斗”の母親の歌声を聴く為にラジオを聴ける人を探すことになったが、現時点では弟である“天野寿茶男”と一緒に聴くことになった。
・芽留木聖(25歳,男性,刑事)
今作のもう一人の主人公。過去の全てを見通せるのでは無いかと思うほどの鋭い洞察力、超人的な判断力を持つ超エリート刑事。その事によって多数の優秀な実績を残し、部下や上司からも信頼を集めている。
第一話では、後輩刑事にあたる“伊須羅譜入”と共に歌姫である“四上楠葉”の復帰をきっかけにしてスタジオの準備室の警備することになるが、事件を防ぐことは出来無かった。
・天野寿茶男(17歳,男性,高校二年生)
天野照子の二つ下の弟。髪型は少し派手で、尚且つ染めていたりもしているが、荒っぽい性格の照子とは少し違い、誰に対してでもフレンドリーで人付き合いが良い性格である。とにかくスポーツが万能で、そのせいでたくさんの部活からオファーが来たりするが、敢えてどの部活にも正式に入部せずに、助っ人として参加することにしている。
第一話では、成り行きで照子と一緒に携帯でラジオを聴く事にした。
・雨宮渦女(18歳,女性,高校三年生)
天野照子の幼馴染みであり、右腕的存在である。ルックスはとても魅力的であるが、何故か照子以外には人見知りし、喋り方が不安定になったりするという驚異の変人っぷりを誇る。
第一話では、照子ににラジオを聴こうと誘ったものの、人見知りが災いし、照子に申し訳ないと思ったのか一人で“麻凛町”にある野外ラジオを聴くことにした。
・那典守子(17歳,女性,高校三年生)
照子を慕っている一人……だが、可愛い女性に合えばほぼ100%の確率で本当の意味で可愛がり、渦女の様な見慣れた女性には合う度に抱きつく。ただし、男性に対しては例外無しに凄まじい敵意を見せつけるという、腹黒いというよりかは性格が歪んでいるタイプである。
第一話では照子に彼女の弟である“天野月人”に対してサラっと悪口を言いながら、彼の居場所を教えた。
・伊須羅譜入(24歳,男性,刑事)
芽留木の後輩刑事。体格は大柄だが、それに不釣合いな情けない性格、何故か常に持ち歩いている不思議さ。その事から惚れた四上楠葉に何気なく存在が疑問視されてしまった。自分とすぐ近くにいる相手に掛かる音を遮断する力を持っている。
第一話では芽留木と共にスタジオの準備室の警備をした。
・天野月人(17歳,男性,高校三年生)
天野照子の一つ下の弟。剣道部に所属しているが、それ以上に目立つのは勉強での驚異的な成績、それと情報収集に精通していることである。どんな些細な事も、彼が開発した情報データーベースの中に記録され、その情報を自分を怒らせた相手に仕返しをするための武器とするという、よくよく考えれば相当な危険人物である。
第一話では照子と渦女が彼のノートPCを使ってラジオを聴こうとする時に出てきたが、その時に丁度ノートPCがウイルスに掛かって使えなくなっていた。
・御殿郡(37歳,男性,高校教師)
照子のクラスの担任をしている。担当は現代文。常にネガティブな雰囲気を醸し出し、授業に対する文句もネガティブな言葉で軽く受け流してしまう、ある意味での大物。
第一話では照子が遅刻して学校に着いたときに、彼女のクラスで丁度授業をしていた。
・書本蓮天(??歳,男性,学校の図書室の受付)
彼についての記述だけで、学校の七不思議が全て埋まる。それほど謎に包まれた人物である。と、思いきや——
何故、常に制服ではなく黄色いコートを着ているのか?
何故、家に帰る姿が一度も目撃されてないのか?
何故、夜中は常に学校で本を書いているのだろうか?
何故、学校の授業も受けずに学校の図書室の受付をやっているのだろうか?
何故、彼はこの学校に入っているのだろうか?
何故、彼は存在しているのだろうか?
と、最後辺りは思ったよりも強引になってしまう。
第一話では、図書室に入った照子と渦女に、照子の弟である天野月人の場所を教えた。
・四上楠葉(??歳,女性,歌手)
謎めいた綺麗な女性。常に黒いドレスを着ており、その容貌は清楚なイメージを見る者に植えつける。彼女はオペラの歌声もバラードの透き通るような声も得意とし、共通点は夜を連想させることである。その事から彼女は“夜の歌姫”という肩書きが付いている。
第一話ではラジオ局で久しぶりの歌声を披露するが、それを利用して狂気に満ちた歌声で聴く者全ての気を失わせた後に社長室へと向かい、社長である“白鳥頼傅”を殺害したが、果たしてそれが真相なのか……?
・天野薙(32歳,男性,建築士)
天野照子、月人、寿茶男の父親である。
ハコキング
No.11015617
2011年05月21日 23:14:39投稿
引用
・天野照子
屋上へ近づく二人の会話が聞こえてくる……
「照子の姉貴の言う事だから従ってやりますけど、母ちゃんの歌声なんてもう何度も聞いてますよ?それに昨日はキャバクラで働いている"親戚の姉ちゃん"から、何か頼まれたせいで結構ダルかったんですけどね」
「まあまあ、ソムリエ的な奴が居ると色々と心強いだろ?」
「心強いってなんだよ……」
二人の内の一人は"天野照子"だった。もう一人は身長は並だったが、顔を見れば絶世の美青年というのが分かる。男のものとは思えない程に肌が綺麗だし、瞳もクッキリしていし、顔立ちも精錬された美術作品のように整っている。彼こそが“四上大奈斗(しかみ たなと)”である。まさに文句のつけようのない美青年っぷりだ。外見は。
そうして、二人が屋上へたどり着くと、寿茶男がイヤホンを付けた状態のまま倒れていた。それを見た照子は面倒臭そうに背中を掻いた後、彼の体を強く揺すって起こした。
「あぁ——頭痛いぜ……」
「頭痛いじゃねぇよ。何で少ししか経ってねぇのに寝るんだよ」
「あぁ、寝てた……?」
そう言いながら、寿茶男は首を傾げて考え込んだ。が、暫く経つと何かに気付いたのか、急にハッとした。
「ああ、そうだ!なんかさぁ、大奈斗の母ちゃんの歌が急に聞こえたと思ったら、急に頭が痛くなったんだよ。でも、余りに痛かったから訳も分からないまま気を失っちゃったんだよなぁ」
「——!」
大奈斗は息を詰まらせながら表情を真っ青にした。まるで、何かに焦っているような——
「おい寿茶男!本当にその歌で頭痛になったんだろうな!」
「え、え、いや、ちょっと落ち着け……」
余りにも大奈斗の言葉の勢いが強いものだから、流石の寿茶男も返事に戸惑ってしまった。だが、そんな時、一人の人物の介入が寿茶男をフォローした。
「どうやら本当のようだぞ」
その言葉の主は照子が学校に遅刻した時に授業をしていた教師であり、彼女のクラスの担任でもある"御殿郡"だった。
「おでん先生?」
「どうやら、面白がってこのラジオ局の放送を聞いた奴全員が倒れたらしい。幸い死人も怪我人も出なかったけどな」
「んじゃあ、なんでアイツまだイヤホン付けているのに頭痛くなってねぇんだよ!先生!」
大奈斗は思いっ切り声を荒らげていた。
——アイツがここまでキレてる理由は、自分の母親が皆を傷付けることになるから……
そんな単純なことで済むのか?何かもっと複雑な事も絡んでいる気がする
そう思った時、寿茶男が言い難そうな表情で口を開いた。
「あぁ、それはな。もうイヤホンから何も聞こえてこないんだわ。
誰かが歌を止めたんじゃね?」
冷静に考えれば誰かが歌を止めると言うのはおかしいが、どうやら大奈斗は“イヤホンから何も聞こえてこない”ということは納得していた。その証拠に寿茶男のその言葉によって大奈斗は目を見開いている。
が、その後は突然諦めたような表情になった。
「照子の姉貴、寿茶男、ついでに先生。俺、悪いけど麻凛町に行ってくるわ」
大奈斗がここから立ち去る時、照子は彼から凄まじい虚無感を感じた。
何も無いのに"凄まじい"——
矛盾しているようで、最も正しい表現だった。
「……ったく、先生を“ついで”にしやがって。
おい、照子と寿茶男よぉ——」
御殿に呼び掛けられたのは、大奈斗が立ち去ってから暫く経った後だった。
「……お前の知り合いの中で、学校抜けだしてまであの放送を聞いた奴が居たら、そいつを助けてもいいぞ」
その言葉を聞いた照子と寿茶男はその言葉を聞いて、一人の人物を思い浮かべる……
——"雨宮渦女"
「ああ、行くよ。あそこにバカ一人野放しにしたからな……行こうぜ、寿茶男」
「やれやれ……面倒なことになっちまったなぁ……」
そうして、照子と寿茶男も屋上から立ち去っていった。二人とも面倒臭そうな表情だったが、少なからず不安という感情もあった。
ハコキング
No.11021993
2011年05月24日 23:06:39投稿
引用
「それで、四上楠葉はどうした?」
「彼女には手錠を掛けた後、14階にある第6応接室へと軟禁しております。それから、"あの歌"に対する対策は譜入によって"彼女の出す音を遮断する"という形を取りました」
「そうか。それはご苦労だ……それで、彼女から話は既に聞いたのか?」
「報告の前に、“譜入”に尋問させました。ただ、アイツの事なので上手く聞けるかどうか分かりませんがね……」
「確かにそっちに関しては私も期待できないな……」
芽留木は荘厳な雰囲気がある中年の男に四上楠葉に関する報告をしていた。彼の名前は"那典瑠師(だてん るし)"、麻凛警察署の刑事部長——つまり刑事のトップであるが、何故か今回のラジオ局の警備の指揮を取っている。普通は出る幕なんて無いと考えると思うが……
しかし、それでも刑事としての腕前は否定のしようがなく、一時期"輝く刑事"という異名が広まるほどであった。本人はその異名を余り気に入ってないみたいだが。
——ただ、なんと言っても気になるのは彼女を追いかける時に聞いたあの"叫び声"だ……
楠葉を追いかけて、エレベーターの前まで到着した時に上の方から聞こえた"女性の甲高い叫び声"である。良く考えれば分かることだと思うが、実はあの叫び声には決定的に"おかしい点"があるのだ。
——確か、四上楠葉はあの後に……
「そういえば、私から伝え忘れていたことがあった」
彼の言葉のせいで芽留木の思考が遮られてしまった。
「伝え忘れていたことというのは……?」
「いくら気絶しなかったといえ、あの歌の効力はお前たちも身を持ってしっているだろう。あの、世界が終わった様な気分と共に出てくる強い頭痛……もしも、あの気分を運転中に聞いたらどうなると思う?」
「……まさか!」
芽留木は悪寒を感じた。が、瑠師の答えは意外なものだった。
「そう大騒ぎになるだろう。それで確かになったんだが……死者は一人も出てない」
「……つまり、奇跡が起こったと?」
「いや、それがな——彼女がやったとしたらその奇跡的な結果すら、必然的な結果になってしまう。何故ならば、彼女の歌に秘められている能力は"聴いた者の運命をねじ曲げる"という、とんでもなく強力な力だからだ」
「それは確かに強力な力ですが……それでも、あんな大規模な事件を起こすには相当な覚悟が必要です。彼女の動機が気になりますね」
だが、その言葉の裏腹に芽留木はちょっとだけホッとした気分になった。
「そう、そこだ。何故、彼女のように強力な能力を持っている人間がこの世の中には沢山居るのに、社会が成立しているのか……それは聞くまでもなく、"法律側にも強力な能力を持った味方が何人も居るから"だ。法に背いた使い方で自分の能力を使えば、彼らから直接厳しい処罰が送られるだろうな。
勿論、四上楠葉も自分の脳力を使って世間を大騒ぎにさせてしまった以上は軽い処罰を期待することは出来ない。そして、更に"人を殺した"という罪があるからな……」
「……」
「さて、四上楠葉への尋問は奴に任せ、我々はある人物へ尋問をしようか」
「ある人物……四上楠葉の傍にいたDJですね」
「名を言ってないのに分かるとは——流石はお前と言ったところか……まぁ、ベタ褒めするのは好きじゃないから、さっさと行こうか」
「はい……(俺もベタ褒めされるのは好きじゃないな……)」
芽留木は本音を心の中にしまいながら、その人物が待っている第5面接室へと歩いた。