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ハコキング
No.11048361
2011年06月09日 00:31:13投稿
引用
————
『現実夢』
「お父さんは遠き所へ出る」
「お母さんは近き所へ出る」
玄関で両親は私にそう言いました。
お父さんの言う所は共産党大会であり、
お母さんの言う所は遠く離れた東京の伊勢丹デパートの集中清掃要員です。
ドアが閉まり、両親は消え、私が残りました。
私が何をすべきか、何日居ないのか、両親は何も言わないのです。
ドアを開けて姿を追おうにも、既に両親は消えていました。
「…これはつまり私が自由であると言う事だろうか」
家の表には道路が有り、裏には広い森があります。
森は無条件に、どこまでも私の庭でした。
「森へ行け、全てを聞け」
そう私の心に誰かが言いました。
夏の熱い日差しの中を私は駆け出ました。
〜〜〜
皆さん、驚かないで欲しいのですが、私は動物の言葉がてんで分かりません。
驚く事に、世の中の七割の人は自国語以外に犬や猫や木々はもちろん、イグアナからコケまで
あらゆる生命と交信するそうです。
残りの三割は、つまり遅れた存在なのです。
私は遅れた存在を負い目に感じたくは有りませんが、
森に入って、精々木々の葉の揺れる音しか聞こえないのは寂しいことでした。
小さな、パルコン式の家を出て、裏の広い森に私は入りました。
荷物は何も有りません。
「森よ、私は君の奥深く、心臓、腸、子宮、すい臓、あらゆる物を見よう」
森が良いよと言ってくれた気がしたのです。
私は益々奥に入りました。
森は深く茂って、所々日が漏れています。
ブナやスギの木が、仲良くお互いを庇い、否、日を奪い合っています。
でも夏だから日差しが強くてさぞ嬉しいことでしょう。
〜〜〜
森の中に、少し間の開いた場所がありました。
そこには見覚えの無い、大きなイタチの像が立っています。
ブロンズで出来ていて、目にはガラスがはめ込まれていて、
イタチが二本足で立てるかは僕は良く知りませんが、実に堂々としたものでした。
夏の日差しがイタチのガラス目にきらめきます。
「イタチ君、私の母親の勤務時間を教えてくれたまえ」
「…」
私は無機物とも交信が出来ないのです。
劣等と呼ばれても仕方が無いのです。
生き物係なんてとても出来ないのです。
「では共産党大会が何時終わるか」
「…」
「キャッキャッキャッ」
後ろでサルの笑い声がしました。
後ろを見ると、こんな森にチンパンジーが居るのです。
「キャッキャッキャッ」
「何がおかしいのか、サル君」
「私が笑っちゃいけないかい」
私は耳を疑いました。
サルの言葉が分かっている様です。
しかしサルはそれを否定しました。
「君が分かっているんじゃない、私が君に判る様に言ってるんだ」
「そうか、やはり僕はバカなのか」
「言葉が分からないだけでバカと考えてはいけないよ」
チンパンジーに慰められるなんて、今日はなんて良い日でしょう。
「君は今何をしているのかね、ホモサピエンス」
「森を探索して、森の子宮の確認、そして私の両親の帰宅日を調べているのだ」
「それは素晴らしい、私も行くよ」
〜〜〜
チンパンジーの、私が名づけるに箱崎アインシュタインは私を先導しました。
もう既に日は暗くなり始めています。
「はて、この森はどこまで広がっているのだっけ」
先がいつまでもどこまでも木々に覆われている様に見えます。
それに、相当歩いた気がするのです。
「君、この森は広いのだよ」
「どれくらい」
「エルサレムと同じくらい」
エルサレムがどれ位の大きさなのかも判りません。
「今日は私の親友の家に泊まろうじゃないか」
「箱崎アインシュタイン、君の親友って誰だい」
「箱崎アインシュタインって誰だい、僕かい」
「そうだよ、君だよ」
「僕の名前はアイだ、私の親友はイエス・キリスト」
〜〜〜
森の開けた場所に小さな丸太小屋が建っていました。
ご丁寧に、太陽光発電システムが付いています。
脇にはドラム缶の風呂があります。
「キーッ」
箱崎アインシュタイン改めアイは、呼び鈴の変わりに高い金切り声をあげました。
すると、ドアが開きました。
「入りなさい」
中に入ると、イエスキリストが、浅黒い肌に小さな笑みを浮かべて立っていました。
イメージでは白人ですが、このイエスは浅黒く、白い服ぐらいしかイメージの共通点は無いのです。
小屋の中は案外広く、色々揃っています。
「やあアイ、地デジ対応したかい」
「したよ、したよ」
「その方は地デジ推進委員の方か」
「いや、森の子宮と親の帰宅日を探っている少年だ」
イエスキリストは手を差し出しました。
「宜しく、君の名前は」
「僕の名前はホレイショ・ネルソン」
「偽名を使うのはよしたまえ」
「すいません、連田金太郎です」
イエスキリストは小さな食卓に私たちを招き、おいしいミートローフを振舞ってくれました。
食事の終わった後で、アイはイエスに聞きました。
「神の国は近付いたかい」
「ああ、今は多分、木星に接近しているよ」
「ガリレオはもう死んだかな」
「死んだよ、彼には地動説は似合わない」
イエスは私に向き直りました。
「ホレイショ・ネルソン・連田金太郎、君の両親は人の子だ」
「確かにそうだけど」
「人の子、の子が森の子宮を探すには、あと五年待たねばね」
「それはどう言う事でしょう」
「全ての仏教徒の家が電化される日、があと五年先なんだ」
「両親の帰宅日も?」
「それは判らない」
私は頭を抱えて、黙り込みました。
「大丈夫、五年経ったら迎えに行くよ、今日は泊まって、明日お家にお帰り」
「ありがとう、アイちゃんも?」
「ああ、私も泊まるよ」
その日、私はチンパンジーと混浴し、床まで共にしましたが、
誓って言います、変なことはしていません、絶対に。
〜〜〜
イエスキリストが手を優しく振り、私たちを送り出してくれました。
お土産は新鮮なザリガニです。
夏の暑い日にはザリガニが旨いのです。
「さようなら、また会う日まで」
「五年後、また会いましょう」
「バイバイ」
私はイエスの小屋が見えなくなるに従って、泣きたくなってきました。
「良い人だったなあ」
「そうだろう、そうだろう」
「ここは天国だろうか」
「それに気付くにはまだ早いよ」
アイの言葉の意味が判りませんでしたが、これ以上問答はしたく有りませんでした。
このチンパンジーとの友情はこれからも続くでしょう。
アイと言う名は、私の心に刻まれたのです。
〜〜〜
あのイタチの像の所まで来ました。
「僕は此処までだ」
「そうかい、寂しいなあ、アイ」
「大丈夫、僕はまた会えるよ、さあお家にお帰り」
「親はまだ帰ってないだろうに」
「さあ、僕には君の親の事は判らない」
アイはそう言って、お土産のザリガニを一匹袋から取ってそのまま食べました。
「おいしい、これは病み付きだ」
「僕は家に帰ってから食べよう、じゃあね」
「じゃあね、ホレイショ」
日はまた傾いていました。
日差しは弱くなっていて、熱くありません。
チンパンジーの別れの叫びが聞こえます。
〜〜〜
家の裏口へようやく付いた頃は既にあたりは真っ暗でした。
裏戸を開けると、すでに両親が帰ってきていたのです。
「どうしてこんなに遅い、心配した」
「どうしてこんなにザリガニが居る、上手そうだ」
父親は、共産党大会でカストロとマルクスと小林多喜二のラインダンスを見たそうです。
母親は伊勢丹でお客様のこびり付いた排泄物を丁寧にこそぎ取ったそうです。
そうして私は夕食の後、布団にもぐりこみ、五年後の事を考えます。
神の国と言うから、きっと浮遊するディズニーランドなのでしょう。
チンパンジーもディズニーランドに入れるか、気になりましたが、
表の道路を暴走族が通っていったので、早く寝る事にしました。
(醜)