〜プロローグ〜

「きゃあっ!!!」
ダスッ!
リリナは獣におそわれていた。当時のリリナにとって歯のたたない獣だ。全身毛むくじゃら、どんじゅうそうな巨体。素早さは…、まあ早いといったところだ。
(術を…術を使わなくっちゃ…。)
獣にたたかれ、地面に転がるリリナはそう思った。術とは、いわゆる魔法みたいな物で戦うためにもっとも重要だ。この獣は術を使っていない。術を使えば逆転は簡単だ。リリナは立ち上がって呪文を唱えた。
「氷の精よ…。私の名はリリナ。力を貸してください!」
シュウウウゥゥゥゥ。
リリナが唱えると、獣の片方の前足に白い煙が吹き出した。これは、術の伴奏のような物だ。
(フフフ…。)
哀れな獣ののちを想像し、リリナはクスクスと笑った。しかし、キュルルウン!と、高い音がして、煙は宙に消えていった。
(嘘でしょっ!?)
さっき使った術は基本中の基本の中より簡単な術だ。そんな簡単な術が使えないことに、リリナはがっくりと肩を落とした。獣は前足を上げた。そして………。
ザアアアアァァァァア!!
(えっ………………?)
目の前の獣の前足に氷の刃がついたのだ。このような現象は術でしかありえない。つまり…。この獣、術が使える!その前足がおろされる。
「リリナーーーーーーーーーーーー!!」
その時兄のクレラが出くわした。クレラはとっさに叫んだがもちろん、リリナは気づいていない。2、3秒もしない内に前足はリリナにおとされるだろう。
(もうダメーーーーーーーーっ!!)
「キャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
氷の国。通称アイスクリスタル。その中でも数少ない森の中。リリナの声は響きわたった。
それも5年前の話。だがクレラの心にはしっかりと記憶に残っている。なぜならみてしまったからだ。

「ひとりでに」「獣が」「たおれる。」

その瞬間を。