100万人のユーザーが暮らす大規模な都市「ワザップ」
そこで暮らす者の中には
生まれつき自分だけが使える特別な力「エスパー」を持つユーザーが存在する。
エスパーを持ったユーザーが歩む道は3つ
「能力を人のために役立てる探偵」
「能力で市民の平和を守る警察」
「能力で悪事を働く怪盗」
この話は、探偵と警察と怪盗の戦いを描いた物語である。
※お詫び※
物語に実際のワザップに存在するユーザー様の名前を借りる事があります。
名前を使ったユーザー様には、一報もなく使用してしまった事をお許しください。
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グラロイド No.10626459 2011年01月13日 17:34:52投稿
引用
【ワザップ】
この物語の舞台とある大きな都市。100万人のユーザーが普段は平和に暮らしている。
通貨としてポイント、名誉ある者に配られる勲章、その他に価値のある宝も登場する。
その中で今回の話は、探偵、警察、怪盗の職業にスポットライトを当てた物。
【専門用語】
P:ポイントのイニシャル。ワザップの通貨(お金)
勲章:ワザップで名誉ある人に与えられる物。
宝:価値があるさまざまな物を指し、怪盗が狙う。
探偵:市民からの悩み、相談を聞き、問題を解決する職業。
警察:平和を乱す者からワザップを守る職業。
怪盗:事件を起こしワザップに混乱をもたらす、探偵と警察の敵となる職業。
エスパー:選ばれしユーザーが生まれつき持つ特別な力、能力の種類はさまざま。
エスパーユーザー:エスパーを持ったユーザーを指す言葉
グラロイド No.10626484 2011年01月13日 17:45:52投稿
引用
【探偵】
シェリング:物語の主人公
【警察】
オールドコイン:関西弁の気さくな人物、階級は警部
【怪盗】
怪盗フィッシュ:ワザップ博物館に展示された宝石「ウラコメの涙」を狙う
怪盗ミリオン・フェイス:変装のエスパーを持つ神出鬼没な人物
【エスパー】
遊泳(スイミング):人間離れした魚のように泳げるようになる
変装(フェイク):姿形まで別人になりすませる
グラロイド No.10626500 2011年01月13日 17:53:11投稿
引用
グラロイド No.10627684 2011年01月13日 23:42:48投稿
引用
「皆さんこんにちは、ワザップニュースの時間です」
「まずは一昨日起きた大手ピザチェーン店、ピザップの売上金、8万Pが奪われた事件」
「指名手配されていたユーザー、ドミノハット容疑者が逮捕された模様です」
毎日のように起きる事件の数々、そのおかげで探偵や警察が活躍できるのも皮肉な話である。
ワザップ住民の中には、生まれつき「エスパー」という特別な力を持ってるユーザーも居て
エスパーのない一般ユーザーと比べたら、能力次第で有利な人生を送れる事だろう。
エスパーがあるユーザーは、大きく分けて3つの道を歩むという。
・市民が抱える問題を解決する探偵の道
・市民の平和を乱すから守る警察の道
・エスパーを悪用して世の中を混乱させる怪盗の道
今テレビを見ている者、シェリングもまた、探偵の職業に就いている。
シェリングは他の名探偵とは違い、エスパーを持ってない普通の探偵である。
エスパーの有無は、探偵ライセンスの取得に影響しないが
世間で名探偵と呼ばれるほとんどはエスパーを持ってる。
依頼主の多くも、エスパーがある探偵の元に依頼しに行くため
仕事がなかなか取れない点では、シェリングは後手になりやすい。
「続いてのニュースです。ワザップ博物館に、怪盗フィッシュから犯行予告が届きました。
ワザップ博物館には現在、時価数百万Pの宝石”ウラコメの涙”が展示されており
今夜0時、頂きに参上する。と犯行文には書かれていたとの事です。
警察では国宝を守るべく、多くの警官が博物館の警備に当たる予定です」
「今の時間はえーっと、17時だから0時まで後7時間ある。こうしちゃいられない」
怪盗が絡んでいるなら探偵の出番。
身支度を済ませたシェリングは外へと駆け出し、ワザップ博物館へと向かっていった。
グラロイド No.10627793 2011年01月14日 03:20:27投稿
引用
さっきまでの明るさが嘘のように空は暗くなり、ワザップに夜が訪れた。
ここからは怪盗が活発になる時間帯、こうしてる間にも、他所では事件が起きてるのだろう…。
今は他の事を考えてる場合じゃない。警察の指揮官と会って、捜査協力の許可をもらわないと。
博物館の入り口前に止まってるパトカーの前で話してるあの人だろうか。
「近くで大型車のタンクローリーが盗まれる事件が発生した模様です!犯人はそれを運転して逃走!」
「なんやて!ホンマに怪盗増え過ぎやろ…怪盗ブームやな」
「携帯ゲームの怪盗バトルロワイアルも大人気ですしねー」
「関係ないわアホ!ゲーム会社も警察バトルロワイアルを作ればええのに」
「警察が盗み合うゲームってのも問題ある気が…」
「お話中のところ失礼します、私こういう者でして」
シェリングは探偵手帳と胸のバッジを、指揮官らしき関西弁の人に見せた。
「おおー探偵さんか、現場まで出張ご苦労さん。捜査許可やな、オッケー。
わしは今日の博物館の警備の指揮官、オールドコインって言うねん。よろしくな」
思った以上に捜査許可は簡単に降りた。この人は探偵に対して嫌悪感は持ってない。
中には大の探偵嫌いも居るらしいから本当に助かった。
さて、捜査頑張るぞーと背伸びで上を向く。
あれ、屋上に何か飾られてる。あれは…こいのぼり?
今は5月じゃないと言うのに、片づけてるのを忘れてるかな。
「さあさあシェリング君、中に入ろうやないか」
「あ、はい!そうですね、行きましょう」
気さくで話しやすいオールドコインさんとともに、私は博物館の中へと入っていった。
「おお警察の皆さん、それに探偵さんまで、心強い限りです。私が当博物館の館長でございます」
この人が館長さんか、細身で身長もなかなか高い、170はありそう。
髪は白く、ヒゲの似合う高齢者紳士と言った清楚な人だ。
「探偵シェリングです、よろしくお願いします!」
「オールドコインと言います。早速やけどウラコメの涙がある場所に案内を頼んます」
「かしこまりました。着いてきてください」
博物館の中央に目立つように飾られたそれは、青く光る綺麗な宝石だった。
オールドコインさんは警官の皆さんに警備の配置を始めてる。自分も館内を探索しよう。
右にある通路の先にあるのは……トイレか。中も見ておこう。
小便器が8個、個室が4個、縦長のロッカーが1つ。
個室1つのドアが閉まってる、誰か入ってるようだ。怪しい予感…。
嫌なニオイを嗅ぐのはごめんだから、トイレの外で出てくる人を待ってみよう。
10分…20分…30分…ちょっと長すぎじゃ…?
もう一度トイレの中を……なにっ!? 閉まってた個室のドアが開いてる。
やられてしまったか、オールドコインさんに報告しに行こう。
「オールドコインさーん、実はトイレを〜」
事の一部始終を説明した。
「なんやて!そら怪しいな、ちょっと見に行ってくるわ!」
オールドコインさんは一人でトイレへと向かっていき、5分もしない内に戻った。
「どうでしたか?」
「いやービックリした、居たんだよ」
「い、居た!怪盗フィッシュですか!?」
「鏡に映ったオレがね」
「っておーい……」
「ジョーダンジョーダン、トイレには警官を5人配置したからもう大丈夫。
君は入り口付近で待機してると良い、大事なところを守ってね」
「はい!ありがとうございます!」
現在の時刻は23時、犯行予告まで後1時間……。
グラロイド No.10627811 2011年01月14日 04:48:16投稿
引用
警官の数は博物館の周りに20人、館内には15人。自分とオールドコインさんを入れて17人。
一体どんな方法で盗むと言うんだ、怪盗フィッシュ……。
「ん、外からの通信。はいこちらオールドコインだ」
「大変です!前から大きなウワアアアアアアアアアア!!」
ガ ッ シ ャ ー ー ー ー ー ー ン !
とてつもないガラスが割れる音とともに、大型車が博物館に突っ込んできた!
乗ってる奴、そいつが怪盗フィッシュか!?
「シャーーーッス!警察の皆さん、警備オツカレー。怪盗フィッシュ様の登場ダァ!
約束通り頂きにきたよ、ウラコメの涙をネー!」
間違いない、コイツが怪盗フィッシュだ。
どんな小細工で巧みに盗み出すのかと思えば、車で突っ込むというアメリカンスタイルかよ!
お約束のように車はもうスクラップなのでした。
「さーてと、こんな場所じゃ俺様のエスパーが発動できないな。
だからわざわざタンクローリー盗んで溜めてきたのヨォ!ありったけの水をヨォ!」
くっっ、極太のホースから水を出し始めた。
周りの警官もホースから勢い良く出される水で次々と。
「オールドコインさん!なんとかあれを止めないと!」
「うん、分かってる。奴がタンクローリーから降りてきた時、そこを狙うんだ」
「分かりました!」
しかしこの水の量…ハンパなく多い。いつの間にか腰まで浸かってきた。
このまま頭が浸かるほどやられたら……
いや、破壊された入り口から漏れてるからその心配はないか。
「ヒュー……水切れだ、だがこれで十分泳げるぜーファイ!」
奴がタンクローリーから飛んだ!今がチャンス、捕まえてやる!
着地、と言うより今は着水か。今だ捕ま…速い!?
手足をバタつかせず、海の生物のように奴が泳ぎ始めた。
水に足を取られる今ではとても捕まえられない。しまったそっちは!
「ウラコメの涙、確かに頂いたゼェ! んじゃ、とんずらさせてもらうか、アバヨ!」
まずい逃げられる。どこ行った!?
相手のペースに乗ったらダメだ、こういう時こそ落ち着いて…。
問題はタンクローリーが壊れた今、どうやって逃げるつもりでいるか。
水のない外に出たとすればマラソン対決、見失わない自信はある。
他に乗り物……映画とかだと高い所からハングライダーで飛んでいったりするものだ。
博物館にも屋上はあるが、屋上……そういえば!!
タッタッタッタ…と博物館の階段を駆け上がる者がいた。
ドアを開けたそこは博物館の屋上。逃げ場の無いようなところに行って一体なにを
「そこまでだ!怪盗フィッシュ!」
「ゲッなんでお前がここにっ」
「やっぱりコレは、お前があらかじめ用意した物だったんだな。
この、こいのぼりは」
「こいのぼりは破かせてもらった。これで逃げ道はない」
「俺様が自然に設置した、見た目こいのぼりのハングライダーが気づかれるなんテェ…」
「いや…5月でもないのにぶら下げられてて凄く目立っていたけど…」
「エスパーもある俺様の圧倒的有利な勝負で、負けるなんテェ…」
「いや…そのエスパーはそんなに有利じゃ無いと思う…。
むしろ、よくそのエスパーで怪盗をやっていけると思ったね…」
「グサッ!グサッ!言葉のナイフがつぎつぎトォ……ガクッ」
「シェリング君!」
「オールドコインさん!今までどこ行ってたんですか!それより怪盗フィッシュはそこです!」
「もう逃げられんぞ、観念したらどうだ? 怪盗フィッシュ君」
「くっ…クッソオオオオオオオオオオオオオ」
こうして、博物館はむちゃくちゃになりましたが、怪盗フィッシュを逮捕する事ができました。
「さあ、ウラコメの涙を出しなさい」
「はいどうぞ…これで刑軽くなります?」
「ならないだろ…常識的に考えて。さあ連行しろ。オレは館長にウラコメの涙を返してくるよ」
「分かりました。宝石に傷つけないように気をつけてくださいね」
そう言えば館長さんも洪水騒ぎから見てないけど大丈夫かな…。
やっぱり自分も戻ってみよう。
あれ、オールドコインさんがもう見えない。階段下りるの速いなぁ…。
トコトコトコトコトコ……
「館長さん、全然姿が見えなかったですが無事でなによりです。
ありゃ、オールドコインさんはもう帰られました?」
「いえ、オールドコインさんの姿は見てませんが」
「え? 今さっき屋上からウラコメの涙を返しに降りていったんですよ?」
「おかしいございますね。怪盗フィッシュを連行した警官の人なら通っていきましたが
オールドコインさんの方は見ておりません」
「そ、そんなはず……」
どうなってる、オールドコインさんはどこに。そしてなんだろう、妙に胸騒ぎがする。
この胸騒ぎはまるで、トイレの個室に異変が起きた時のような。
トイレ……ちょっと見に行ってみよう。
もしかしたら…大変な事になってる可能性が…!
まただ、個室が1つだけドアが閉まってる。
「んー!んー!」
声! 明らかにトイレをしてる声じゃない、助けを求めてる。
「くっ、このドア、えいっ、えいっ、えいっっ!」
開いたドアの中には、縄でグルグル巻きにされて、口をふさがれたオールドコインさんがいました。
それを見た自分は、全身の力が抜けてその場にしゃがみこむ事しかできませんでした。
ウラコメの涙は、まんまと盗まれてしまったのです。
あの、オールドコインさんそっくりの……誰かに。
第1話 終わり
グラロイド No.10631304 2011年01月15日 18:00:04投稿
引用
ワザップ博物館の事件後、深夜3時という事もあり
事情聴取は明日にしていいと言われて、私は家に帰って眠った。
耳に響くキンキンとした音、目覚まし時計が鳴っている。
もう昼なのか、起きたくないけど起きねば、14時に警察に行かないと。
朝の1杯に牛乳を飲んで体を起こす。そろそろスパゲティが茹で上がる頃。
今日はアッサリとした明太子スパが食べたい気分。
できたできた、テーブルに持っていってテレビをポチっとな。
「昨夜起きたワザップ博物館に怪盗フィッシュが現れた事件で
警察は怪盗フィッシュを逮捕しましたが、ウラコメの涙は他の何者かに盗まれた模様です。
警察はウラコメの涙を取り戻すべく、盗んだ者の特定を急いでます」
逮捕に協力した自分の事が一切触れられてなくてショボーン。
名探偵シェリング、とまでは言わないけど、探偵の一言くらい言ってくれても…。
あ、もう13時過ぎてた、警察に向かうとしよう。
グラロイド No.10631528 2011年01月15日 19:13:38投稿
引用
ようやく案内された小部屋で簡単な事情聴取をして私は解放された。
うわ、事情聴取10分もかかってない。
こんなに待たせておいて聞くのはちょっとだけ、病院と変わらないな。
さっさと帰ろっと。
あ、あそこに居るのは……
「オールドコインさーん」
「おおーシェリング君、事情聴取に来てたのか、ご苦労さん」
「今も偽物なんですか?」
「その通りやウヘヘヘヘー、って本人や本人!安心してや」
この感じ…よかった。オールドコインさんで間違いない。
それより、オールドコインさんソックリの姿で
ウラコメの涙を持っていった人は分かったのかどうか聞かないと。
「ところで、ウラコメの涙を盗んでいった人は分かったんですか?」
「おおもちろんや、まだメディアでは発表されてへんけど特別に教えたるわ」
「ありがとうございます!」
「盗んだのは、誰にでも化けられるという変装のエスパーを持った
怪盗ミリオン・フェイスって奴や」
怪盗ミリオン・フェイス、名前だけは私も聞いたことがある。
変装のエスパーか…それであの時、オールドコインさんと入れ替わって
その場にいた全員をあざむいて、堂々とウラコメの涙を持ち去っていったわけか。
「コイツは神出鬼没な奴やから、警察も捜索は諦めてる。
捕まえる方法は現行犯しかないからなぁ」
誰にも化ける相手じゃ、目の前で正体を見破るしか逮捕のチャンスは無いと言うことか……
「そうですね…。では私はこの辺で帰ります、お話ありがとうございました」
「ええよええよ、気になる事があったら、また聞きにおいで」
「しのびないなぁ」
「かまへんよ」
「ではでは、失礼しましたー」
「気ぃつけてなー」
グラロイド No.10631659 2011年01月15日 20:07:21投稿
引用
生活費のPを稼ぐため、探偵の依頼が集まる掲示板を確認する。
依頼の獲得は競争力が高く、1分の遅れがチャンスを棒に振る。
簡単な依頼で報酬の良い話は、既に他の探偵が契約済み。
難しい依頼は契約に名乗り出た探偵の中から、依頼主が自分で決める。
こういうときはエスパー持ちの探偵が頼もしいと思われ、優位に立つだろう。
自分に合った依頼は……えーっと
【とても大切な黒いノートを落としました、探してください】
うーん、なんか死神とか出てきそうだから関わるのはやめておこう。
【パソコンがバグりました、画面の中にいる僕のお嫁さんが出てきません!】
それはあなたの頭がバグってます。
【リュウクエ6のテリーが弱いです、なんとか強くしてください】
仕様です。リメイク版ではわずかだけ強化されましたよ。
【世界は美しい、けど僕の方がもっと美しいよね?】
知らんがな。もはや依頼でもない。
良さそうな依頼がないな…今日は空振りだろうか…ん?
【何者かに狙われているので、守ってくれる人を探してます】
興味がある、詳細文も読んでみよう。
なになに、「最近家に変な手紙が届くようになり、気味が悪くて夜も安心して眠れません」
要は手紙の送り主の特定と逮捕という依頼か。
依頼主の住まいがある場所は遠いが、列車で行こうと思えば行ける。
できない事でもないから、引き受けメールを送っておこう。
いい返事が返ってきたら次の仕事は決まりだ。
グラロイド No.10632736 2011年01月16日 02:06:35投稿
引用
ずいぶんと早い、他に立候補した探偵はいなかったのだろうか。
返事があるとしても、明日以降になるとばかり思っていた。
この事から、依頼主は一刻も早い解決を望んでいて焦ってる所が伺える。どれどれ……
依頼主との約束は明日の昼1時、乗っていく列車の時刻表もチェックしておかねば。
一段落ついたところでテレビでも見てみるかな。
「イブニングワザップニュース、まずは今日起きた事件から、
今日午後8時頃、モバイル地方にある談話公園で爆発があった模様です」
何かの工場で爆発事故はよく聞くが、公園で爆発……。
「現場周辺の建物に被害はありませんでしたが、公園は地面に大きな穴が空き
遊んでいた数名が、全身にひどい火傷を負って病院に運ばれています。
全員意識はあるようで、死亡者は出ていません」
周りに被害が及ばず公園だけを爆破する、そんな器用な爆弾職人がいるとは…。
「実は数日前、公園を管理されてる人の元に、公園を爆破する犯行予告が届いてましたが
イタズラだろうと警察に届けてなかったため、爆発を防ぐ事はできませんでした。
警察は、犯人が”怪盗バリアス・ボム”の可能性が高いと見て、捜査を始めています」
怪盗バリアス・ボム……コイツとはあまり出会いたくはないな……。
さてと、今日はもう遅い、明日に備えて休もう。
グラロイド No.10632923 2011年01月16日 09:17:26投稿
引用
まだ少し眠気で頭がボーっとする、昨日は布団に入ってすぐには眠れなかった。
依頼を引き受けて神経質になってるらしい。
こんな細い神経で、よく探偵になったものだと自分でも思う。
だがけして、安楽椅子探偵ではなく、事件現場には行こうと思える。
事件に関わる好奇心、それを解決する達成感に、味をシメてしまったのだから。
出かける時間に余裕があるからネットのニュースをチェックしてみよう。
テレビもいいが、ネットはテレビでは取り上げられないネタもあり
なによりも情報が早い点がなにかと便利である。今日のトップニュースは…
「第28回ワザップ小説コンテストの最優秀賞が決定」
小説か…面白い話を考える事も文才もない私では予選さえ通過できない。
何かの間違いで最終選考に残ろうものなら、大型のトルネードがワザップを襲う事になるだろう。
「最優秀賞に輝いたペンネーム”めたるぽりす”様の作品は書籍化が決まり
賞金50万Pと特別な勲章が、SPによって運ばれ、本日中に送り届けられる予定です」
賞金50万P……いいなぁ。本になる事で印税も入る。
小説家や漫画家は、当たるとデカイ職業だと改めて感じる。
未だ当たらず、下積み生活が続く作家も何千人といるはず。
将来デビューするのは、その中から10〜20人と言ったところ。
挑戦してる何千万の作家達は、全員が自分はデビューできると思って今日も机に向かってる。
それを私はバカだとは考えない。
なぜなら、夢は途中で諦めたらつかめない物なのだから。
おっと、たそがれてる場合じゃなかった。列車に乗り遅れる。
外に出て、歩いたり時々走ったりしながら自宅からドンドン離れていき
目の前に駅が見えてきた。旅の始まりという気分がこみ上げてくる。
神様、仏様、守護霊様、向こうで事件を解決して帰ってこれる事を見守りください。
第2話 終わり
次回「ワザップ急行の紛失事件」
グラロイド No.10638346 2011年01月18日 18:14:44投稿
引用
登場人物紹介
・シェリング:探偵
・ラチェット・アックー:SP
・サイラス:警察
・ヘクター・ヴァイン:医者
・オルソン・カデット:野球選手
・ニュークリア:配送業
・ミシェル・グリム:ファッションデザイナー
・ハバード・ミルラス:自動車整備
・帽子とマフラーとロングコートを着た者:?
何者かに狙われてる自分を守ってほしいと言う依頼を受け、私はワザップステーションへとやって来た。
ここから列車に乗って依頼主の元へと向かう。
買う切符は前もっての下調べで、急行列車にする事にした。ホームに止まった列車へ駆け寄る。
列車は1両編成の小さな車体だが、小さくとも私を送り届けてくれる事に変わりはない。
列車に乗り込み周りを見渡すと、既に乗り込んでる人がちらほらと見える。
野球のユニフォームを着た者、白衣をまとった者、ツナギを着ている者。
ビジネススーツの者、サングラスをした私服の者と、見事なバラつき様。
1番後ろには帽子を深々と被りマフラーをして、ロングコートを着ている高身長の者が座っている。
足下にPが1枚落ちてる、この人のだろうか?
「あの、これ落ちてましたよ」
「……」
「こちらのPってあなたの者じゃ…」
「……」
返事がない、ただのしかばねのようだ。
ずいぶんと物静かな人だな、吐息の1つも聞こえてこない。
「どうかしましたか?」
後ろからサングラスの男が話しかけてきた。
「この人の足下にPが落ちていたので、拾って聞いてるんですが返事が…」
「きっとお休み中なんですよ。起きてから言っては?」
「そうですね、そうしておきます」
今は諦めて自分の席に着く事にする。
私はなんでも前の方に座るのが好きだ。遊園地の乗り物も、映画館の席も、
列車でも当然前の方に座った。近くにはビジネススーツとさきほどのサングラスが座っている。
そんな時、新たに2人の乗客が入ってきた。
1人は茶色のジャケットの若者、もう1人はモデルのようなオシャレな格好の女性。
合計9人を乗せて、小さな急行列車はドアを閉めて動き始めた。
グラロイド No.10639180 2011年01月18日 22:09:15投稿
引用
本を読む者、弁当を食べる者、ヘッドフォンで音楽を聴く者。
皆それぞれ自分だけの時間を満喫している、私も落ち着いて窓からの景色を楽しむとしよう。
列車がトンネルに入り車内が、少し暗くなる。いや…ちょっと暗すぎやしないか?
やっぱりだ、車内に蛍光灯などの光がない。これはトンネルに入らないと気づかない事だった。
周りの席も客の姿もまるで見えないこの状況は、目を閉じてるに等しいと言える。
なにかドタバタとする音が聞こえる、誰が席を立って動いてるらしい。
おとなしく座ってればいいものを、この暗闇で動くのは危なすぎる。
突然大きな物音が車内に響き、私の心臓が激しく鼓動を打った。
他の客が騒ぐ声も聞こえる、けして暗闇による恐怖で聞こえた幻聴ではない。
列車の何かが壊れたのだ、早くトンネルを抜けてくれ。今はそう願って自分を落ち着かせた。
座席の前から光が見え、それは次第に大きくなっていく。
たった1分前後の出来事でも、私の体感時間はやけに長く感じた。
ようやく車内に明かりが戻る……
グラロイド No.10639640 2011年01月19日 01:54:14投稿
引用
すると前から「な、ない…」とつぶやく声がした。
そう言ってビジネススーツの男が立ち上がり、首をひねって席の周りを見ている。
何かを発見したように列車の後ろへ歩き始めたので、私も立ち上がって後ろを確認した。
後ろの方にアタッシュケースがパカッと開いて落ちてのが見える。
それを拾い上げた男は「誰だ!私のアタッシュケース持っていったのは!?」と大声を上げ
周りの乗客も、取り乱した彼に注目した。
ここは自分の出番、そう思って私は男の元に駆け寄った。
「どうかされたんですか? そのアタッシュケースはあなたの物で?」
「自分の席の足下に置いていたんだ! それがいつの間にかこんな所に…。
中に入っていた大事な物も無くなってる! 誰だ盗んだのは!」
一連の流れはつかめた、列車がトンネルに入り、車内が真っ暗になったあの時。
誰かがこの人のアタッシュケースを持ち出して、中身を盗んだと見て間違いないだろう。
「失礼、私こういう者です」
あのサングラスをした男が、警察手帳を見せて私たちの話に入ってきた。
「話は聞いてました。この列車内で窃盗事件が起きたと言う事でいいですね?
何者かがアタッシュケースを持ち出し、中に入った金品を持ち去った」とサングラスの男。
「そうです! あの中には現金50万Pと特別に作られた勲章が入ってました…」とビジネススーツの男。
「あーそれってもしかして小説コンテストの優勝商品?」とオシャレな格好の女が聞いた。
「そうです、私は小説事務局から依頼を受け、優勝者の元へ届けていたSPなんです」とビジネススーツの男。
朝一でネットニュースに出ていたアレか…まさかそのSPと同じ列車に乗り合わせるなんて。
「皆さん、自分の身の潔白を証明するためにも、ご自身の名前と、所持品のチェックにご協力ください」
そう言ってサングラスの男がその場を仕切り始め、周りからブーイングを受けている。
それを見て、私は男に偉そうな印象を受けた。
いや、警察ならこれくらい態度が大きくて当然か。ここは任せてみるとしよう。
グラロイド No.10639656 2011年01月19日 02:37:12投稿
引用
被害に遭った彼の名はラチェット・アックー。大切なものを守るSPである。
白衣をまとったのはヘクター・ヴァイン。医者であり、持ってた鞄には医療器具が入っていた。
野球選手のユニフォームを着たのはオルソン・カデット。鞄には野球道具が入っている。
プロ野球球団ワザップ・ファイターズに所属する。
茶色ジャケットの若者の名はニュークリア、配送業をしてると言う。所持品はなし。
ツナギを着ている男は自動車整備勤務のハバード・ミルラス。いくつかの工具を持っている。
唯一の女性であるのはファッションデザイナーのミシェル・グリム。化粧道具を持つ。
そしてサングラス警官の名はサイラス。最後にこの私、探偵シェリングの計8名。
……待て待て、あの人を忘れてるじゃないか。
目が覚めたら落ちてたPを渡そうと思っていた、あの人。
最後尾に座ったロングコートの人だ。事件が発生してから、まるで存在感が無かった。
これだけ騒がしいと言うのに、まだのんきに寝てると言うのか?
ん、あれ……もう少し近づいて見れば……。まさかっ!
最後尾からロングコートの人が消えていた。そしてそこの窓だけが割られているのに気づく。
その瞬間、脳裏をよぎるあの音の事を思い出す。
そう、暗闇の時に鳴り響いて驚かされた大きな音だ。あれは窓が割れた時の音と見て間違いない。
暗闇で誰かが動いた気配。割れた窓。消えた優勝商品と人。
これらから推理して、たどり着く答えは、ロングコートの人が優勝商品を盗み
窓を割って逃走したという結末。
顔も分からない上、今もなお、前に進む列車に乗ってては追う事ができない。
しかし、100kmは出てたであろうこの列車から、飛び降りて無事で済むだろうか?
どこか納得いかない何かが頭に引っかかる。
確かにこの中で1番犯人に近いのは、盗品とともに消えたロングコートの人。
ならば、ロングコートの人を除外した場合。他に犯人に近い人物は誰かを考えてみるのはどうだろう。
無駄な推理かもしれないが、このまま何も考えずに目的地に着くよりは良い。
目的地の駅に着くまでの90分間に、新たな答えを導き出してやる。
グラロイド No.10641933 2011年01月20日 19:40:09投稿
引用
捜査範囲は列車の中だけなので、町で猫を探すほど苦労する事も無い。
他の乗客と会話でコミュニケーションを取り、情報を集めよう。
「どうも、ヘクターさんでしたよね。今日はどこに行く予定だったんですか?」
「今日はね、医院に来れない患者の往診に行くつもりだったんです」
「なるほどそれで医療器具をお持ちなんですね。失礼ながら見せてもらえませんか?」
「さっき警察の人に見せてます、あまり出し入れするのはね…」
「そこをどうか…私は探偵です、お願いします」
「探偵ねぇ…まぁそれで疑いが減るなら。大切に扱ってくださいね」
中に入ってるのは、聴診器、注射器、体温計、銀のヘラ、小さい懐中電灯、痛み止めの薬、書類。
当然ながら盗まれたPと勲章、怪しい物は入ってない。
「ご協力、ありがとうございました」
「お隣の席に失礼してよろしいですか?」
「ああはい、どうぞ」
「オルソンさんはプロ野球選手なんですよね」
「ねぇこれって長引きそう? 練習に行く途中だから遅れたくないんだ」
「犯人が見つからないと…全員警察の方に事情聴取になるかと思われます」
「うわーやっぱりかぁ…練習して次の試合に活かしたいのになぁ」
「私は野球経験が遊び程度しか無いんですが、プロ用のバットって結構重いんですか?」
「鍛えてればどうって事ないよ。持ってみる?」
「いいんですか? では、お借りします」
「うおっ…さすが本物は違いますね、これで振ったりするわけですか…」
「フルスイングでボールが当たる時の衝撃は結構くるね、それで肩を外す選手だっている」
「野球選手は肉体が強くないとやっていけないんですね…お返しします」
グラロイド No.10642631 2011年01月20日 23:17:32投稿
引用
耳にイヤホン、更に本を読んでて、いかにも話しかけるなオーラがただよってる…。
だけど今は遠慮してる場合じゃない、一歩前へ行け自分。
「あのー…」
「ちょ、急に肩触らないでよね!」
あ、女性にいきなりボディタッチはまずかったか…。すっごいにらまれてる…。
「ご、ごめんなさい…。ちょっと話を聞かせてもらいたいなと…」
「あなたも警察?」
「いえ、探偵です」
「あっそ、じゃあイヤ」
い、イヤって…。完全に機嫌が悪くなってる、とりあえずホメて機嫌を直そう。
「ミシェルさんってすごくオシャレな服装をしてますよね」
「なに人をじろじろ見てるの、いやらしい」
「髪も…えっと…サラサラで綺麗ですし」
「もしかして、ワタシを口説いてる?」
「違います違います! カバンも有名ブランドの最新モデルですよね?」
「うん、結構高くてねーって金目当て?」
「ちっがぁぁぁいます!!」
うぅ…言うこと言うことが裏目に出てる気がする…。
でも、初めよりは彼女も口数が多くなった。このままもっといけば…!
「そういえば、ミシェルさんもサングラスされてますよね」
「目じゃなく前髪まで上げていて、目に下ろせば、サイラスさんとお揃いになりますね」
「あんな人とお揃いになんてなりたくないわ。このサングラスだってイイヤツなんだから」
「あの人のサングラスはなんか変だわ、レンズの色が不自然でダサイのよね」
「なかなかの辛口チェックですね…私にはサングラスのレンズまでは」
「って結局だらだら話してるじゃない。もういいでしょ、他へ行って」
「は、はい、お忙しい中失礼しました」
はぁ…無駄に気を遣って疲れてしまった。こんなので疲れる自分は探偵に向いてないのかな…。
だけどまだ全員の乗客と話ができてない、ヘコんでる場合じゃ…
「んあーー、いい加減犯人は名乗り出ろよー。こんなかにいるんだろ、なぁ?」
ニュークリアさんがこの状況に耐えれず、シビレを切らしたようだ。
「オレぜってぇ警察で事情聴取なんてイヤだかんな、さっさと名乗り出ろよ!」
「静かにしろ、犯人の特定を待ち望んでるのはお前だけじゃない」
騒ぐニュークリアさんに、ハバードさんが噛みついた。念のため私は2人に駆け寄った。
「だからさっさと犯人見つけろってオレは言ってんの。肝心の警察様(笑)は?」
「今、ラチェットさんに事件が起きた時の話を聞いてます」
「まだそこかよ、次の駅に着くまで1時間切ったぞ、ホント警察は無能だな」
「場の空気を悪くする誰かさんよりは有能だがな」
「オレのこと言ってんのかテメェ?」
「やめてください2人とも! イライラするのも分かりますが喧嘩はダメです!」
「そっちが先に静かにしろってふっかけてきたんだぜ?」
「そのうるさい口を溶接したくなってな」
「やっぱ1発食らいたいらしいな」
「なに騒いでるんだ君たち、席に戻りなさい」
よかった、サイラスさんが来てくれた。
「はい」
「チッ、はいはい。1秒でも早く犯人見つけてくださいね警察様(笑)」
グラロイド No.10643200 2011年01月21日 18:00:29投稿
引用
だがけして、2人の口論は無駄では無い。どちらかが犯人だとしたら、目立つ言動は避けるからだ。
もし両者が犯人だとしても、共犯なのを隠すため、ボロが出ないように接点は持たない。
2人は犯人候補から外してもいいだろう。
さてと、残る2人に話を聞きに行こう。
「ラチェットさん、話は済みましたか?」
「一応は…」
「私はこれでも探偵なので、事件が起きた時の話を聞かせてもらえます?」
事件が起きた、トンネルに入った時の事を話し始めるラチェットさん。
その時のアタッシュケースは、足下に立てて置いていて
トンネルに入り、異常に暗くなった車内に違和感を持っていた。
すると何かがドタバタと動く気配を感じ、それは自分の近くまで来ていたと言う。
気配が無くなったかと思えば、ガシャンと大きな物音が立ち、
身に危険が迫ったと思い、両手を頭の上に当てて守るようにした。
結局何も体にはぶつからず、トンネルも抜けて一安心していたら
足下のアタッシュケースが消えてる事に気づき立ち上がった。
これが事件発生当時のラチェットさんの証言。
出来事の順番は、アタッシュケースが持ち出されて、その次に窓が割られたと見て良いだろう。
最後の人物に話を聞きに行こう。
「サイラスさん、一気に聞きますが、事件の真相はどこまでつかめてますか?」
「うーん……盗まれた物はまだ見つかってませんが、犯人の可能性がある人物なら」
「それは一体…?」
「落ち着いて聞いてくださいね、それは……ラチェットさんです」
「え、えっ……。ラチェットさんは被害者ですよ?」
「彼は多額Pに目がくらみ、あの時Pと勲章をどこかに隠して盗まれたフリをした」
「そ、そんなバカな…。ラチェットさんはSPですよ?」
「善良な職業の人ほど中身は黒いというやつですよ」
あまりにも予想外なサイラスさんの発言に私は戸惑う。
確かにここまで、私はラチェットさんが犯人という可能性は完全に捨てきってた。
まさか本当に……ラチェットさんが……。
「そういうわけで、次の駅に着いたら私はラチェットさんを連行していきます」
「他の皆さんも事情聴取なしで、これから行く予定のところに行ってください」
そう言い残してサイラスさんは歩いていった。
自分の中で、とてつもなく納得いかない気持ちがあふれてくる。
ラチェットさんを連行する前に、まだ謎はいっぱい残ってるじゃないか。
隠したとされる50万Pと勲章はどこにあると言う?
そして、最後尾から消えたロングコートの人はどう説明する?
幽霊?ふざけんじゃないよ。私はこの目でハッキリと見た。幻なんかじゃない。
謎を残したまま、ラチェットさんを連行なんて絶対させない。
丁度全員の話を聞き終わったところだ、ここから自分で推理して、謎を解いてみせる。
グラロイド No.10646017 2011年01月22日 19:39:57投稿
引用
まずは現場の確認。
当時、列車はトンネルを通過する最中で、車内は暗闇に包まれていた。
暗闇の中、誰かが動く気配と、大きな物音が鳴った。
列車がトンネルを抜けるのにかかった時間は、およそ90秒。
トンネルを抜けると、最後尾の席の窓が割れていて、そこに座っていたロングコートの人物が消えた。
続いて犯行方法の確認。
犯人は列車がトンネルに入った瞬間、なんらかの方法で暗闇でも動ける手段を使い、
ラチェットさんが座る席の足下に置かれたアタッシュケースを持ち出し、
中に入った50万Pと勲章を取り出した後、アタッシュケースは車内後部へと捨てた。
続いて最後尾の窓ガラスを割り、ロングコートの人物を消す。
これらの行動を取り終えると、自分の席に戻って何事も無かったようにやり過ごした。
これらの事ができる人物を割り当ててみよう。
まずは医者のヘクターさん、医療器具を持つ彼なら暗闇でも動けた可能性がある。
化粧道具を持つミシェルさんも、夜光塗料の入った化粧品があれば可能。
次に野球選手のオルソンさん、バットを持つ彼なら窓ガラスを割る事はたやすい。
窓ガラスに関しては、自動車整備で工具を持つハバードさんにもできる。
所持品も無く、犯行手段が当てはまらないニュークリアさん。
だが、もしも彼がエスパーユーザーだったとしたら…?
こういう時の、能力によって未知数の事ができるエスパーは非常にヤッカイな一因
できれば犯行手段にエスパーの使用は、あってほしくない。
最後に皆から聞いた今日の予定を思い出してみる。
ヘクターさんは医院に来れない患者の往診。
オルソンさんは野球の練習。
ラチェットさんは小説コンテストの優勝品を届ける途中。
ミシェルさん、ニュークリアさん、ハバードさん、サイラスさんからは聞けなかった。
こうして個人から聞いた話を思い出してみると、いろいろ引っかかる発言がある。
あの人が言ったあの発言、あの人に対する疑問、それらを繋ぎ合わせてみると…。
脳を駆けめぐるアドレナリン、高ぶる気持ちの興奮。
私の考えてる通りなら……真犯人はあの人しか考えられない。
このやり方、よくもここまで私たちを騙し続けてくれたな。
その化けの皮、今からはがしてやる。