あれは今のような、寒い冬のことだった…
ワイ「ふう…疲れるな…」
これは東山 隆佐。至って普通の中学生だ。友達からは「ワイ」と呼ばれている。
どうやら部活が20日連続で続き、精神的にも肉体的にも疲れている様子。
ワイ「今日もサバパナ☆モンスターかなぁ…」

*サバパナ☆モンスター
ワイが忙しく、時間がなくて編み出した究極のメニュー。
鯖缶、クリームパン、モンスターエナジードリンクの3点セットなのだが、
モンスターは学生のワイには少し高いため、安いギガビタンで済ませることも。

コンビニ店員の雑な挨拶が耳を掠める。
ワイ「すいません、これお願いします。」
コンビニ店員「温めっすかぁ?」
ワイ「?はい、お願いします。」
コンビニ店員「かしこァしたぁ」
鯖缶など、今まで温めていただろうか?
しかし、それを判断するほどの余力はもうワイには残っていない。
こんなものは、たった12時間を乗り越えるためだけのものである。
栄養なんてあったもんじゃない。それはワイ自身が一番よく知っている。
部活では県中大会以上の成績など残したことがない。 
いつも誰かが、自分の上位互換が上をいくのだ。
それを知っている。よく知っている。
しかし、もうどうでも良くなった。
生きていればそれでいいのだ。人に迷惑をかける事をなく、ひっそりと生きていけばいいのだ。

そんな事を考えていると、先ほどとは打って変わって、若い女性の声が耳を通った。
「…ィッ…バー…、どうぞ」
何が起こっているのだろう。この女性は何者なんだろう。
そんな事を考えるまもなく、ワイの手には茶色い紙袋が渡った。
それを受け取らない選択肢は、なかった。