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キューホ〜救世主候補〜

雑談

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    mochizo No.11210939 

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    第115話「殺してくれて、ありがとう」

     光と共に繭が割れ、金色の渦が現れた。
    「あれが・・・原初?」
    「いや、まだ動くぞ!!」
     イヅチの言葉に、ハイマスは指を指して言った。見ると、金色の渦の中心部が蠢いている。まず、現れたのは巨大な腕、バハムートですら片手で鷲掴みに出来そうなほどだ。続いて、金色に輝き、虹色のオーラを放つ胴体と、天を覆うかのような巨大な翼、そして、威圧感がありながらも、感情らしきものが感じられない龍に似た頭部が現れた。その姿は、下半身が渦になっている龍といったところだ。その場にいる全員が確信する。あれこそが、原初だと。現れた原初にフェニックスがゆっくりと近づいていく。と、その時、倒れ伏していた破壊神が起き上がり、熱線でフェニックスの翼を射抜いた。
    『・・・ッ!!』
    「「「!!!」」」
     完全な不意打ちにフェニックスはたまらず倒れる。破壊神は嘲りの声と勝ち時の声をあげた。
    『フハハハハ!!油断したな、フェニックスよ。よもや、貴様の力が本当に我に勝っているとでも思ったか?敢えて負けてやれば、貴様らが油断し、絶好の機会が回ってくると踏んでいたが、こうも上手くいくとはな!』
    『卑怯ですよ、破壊神!この戦いは正々堂々行うべきものです!』
     フェニックスの抗議に破壊神は応じた。
    『今更人間らしい言葉を吐くな。そもそもこの戦いはルール無視のはずだ。勝てばよいのだ、勝てば!』
     その様子を見て、ネオ・エレメントは破壊神に向かっていく。が、ツクヨミが間に割って入り、ネオ・エレメントを殴り飛ばした。
    「「「!!」」」
    「バンリ!!」
     吹っ飛ばされながらも、ネオ・エレメントは何とか体勢を立て直した。
    『そのまま、ゴミ共を抑えていろ。我は原初と同期する。』
    『ギカカカカ・・・』
     ツクヨミに指示を出し、原初に向かう破壊神。焦りが渦巻く中、強烈な雷撃がツクヨミを襲う。ギル達が振り返ると、そこには、グレア達がいた。
    「早く破壊神を止めてくれ!ここは僕達が!」
    「でも、あいつは・・・」
    「あいつが強ぇことくらい分かってらぁ、だけど、考えてる時間もねぇ!!急げ!!」
     戸惑う救世主候補にヴェノンが激を飛ばす。それを聞いた彼らは、黙って頷き、破壊神に向かおうとする。
    『ギカカカ!』
    「させないよ!」
     自分の横を通り過ぎようとする救世主候補やユグ・ドラシアに攻撃を加えようとするツクヨミを、アルバートが放った無数の魔法球が襲う。それを手にした剣で斬り裂きつつ、ツクヨミはグレア達を睨みつける。
    「さて、少し付き合って貰うぜ!!」
    『ギィカカカカカカカカカカカ!!!』
     ツクヨミも彼らを倒さないと厄介だと判断したのか、まっすぐに襲いかかってきた。それに対し、グレア達も力を振り絞って向かって行った。

     一方、毒蟲と改造飛竜に襲われている世界では、決着が着こうとしていた。最初は、大地を、空を覆い尽くすほどにいた毒蟲達も、統制のとれた治安維持局の攻撃部隊や、経験豊富なカルバ・ヤナイ率いるサトリの軍勢に討ち取られ、改造飛竜も半数以下に減っている。そして—
    『シャアアアアアアア!!』
     追い詰められ、真の姿を見せたハークが巨大な毒蛇になって、セグマに襲いかかる。怒りの乗った攻撃をセグマは鮮やかに逸らすと、その胴体を一閃した。
    『グハァァッ・・・ば、馬鹿な・・・無能な治安維持局に俺が・・・俺が負けるなど・・・』
     苦しむハークにセグマが言った。
    「我々がお前を捉えられなかったのは、お前が蛇のように隠れるのが上手かったからだ。最後の最後に油断して姿を見せたのが運の尽きだったな。お前への対策など、とっくに立てていたわ。後、痛めつけはしたが、殺しはせん。罪は償え。」
    『・・・フッ・・・俺とした事が、まったく、格好がつかんな。負けたよ・・・。』
     そう言うと、ハークは気を失った。その様子を望遠鏡で見つつ、ヒルトは呟いた。
    「潮時ですかね。私は、世界がどうなろうと、ここで果てるのはゴメンですからね。ここらで、姿を消しましょう。」
     そう言うと、ヒルトは手元の機械のスイッチを押して、踵を返した。直後、ヒルトの改造飛竜達が次々と自爆していく。爆炎の中、ヒルトは悠々と姿を消した。

    「喰らいやがれ!!」
     グレアとアルバートの援護を受けつつ、渾身の力で、ヴェノンがジェノサイドブレードを振り抜いた。それをツクヨミが受け止め、逆にジェノサイドブレードに強烈な一撃を加えた。
    —バギィィィィン・・・
    「「!!」」
    「何・・・!?」
     その一撃で、限界が来ていたのであろうか、ジェノサイドブレードの巨大な刀身は砕け散った。衝撃で動きを止めたヴェノンをツクヨミの熱線が貫いた。
    「ガハッ!!」
     血を吐いて吹き飛ばされるヴェノン、しかし、彼の攻撃は無駄に終わらなかった。ジェノサイドブレードに隠れる形で、アルバートとグレアが迫る。
    「秘技、超聖球!!」
     アルバートが自身の力とエクスカリバーの力を全て注いだ魔力球を放つ。しかし、ツクヨミはそれを受け止め、手を焼かれつつも、魔力球を引き裂いた。だが—
    『!!?』
    「ハァァァァァァァッ!!」
     魔力球の背後、いや、魔力球の中に隠れていたグレアが、ツクヨミに向かう。虚を突かれたツクヨミに頭部に、グレアの剣が突き刺さる。
    『ギィカカカッカカカカッカァァァァッ!!』
     痛恨の一撃に、ツクヨミは苦しみながらグレアを突き飛ばす。ヴェノンを助けていたアルバートがギリギリのところでグレアを助ける。彼らの目の前で、ツクヨミが苦しんでいる。見ると、ツクヨミの中の負のエネルギーが浄化されている。すると—
    『・・・がとう。』
    「「「!?」」」
    『解放してくれて、殺してくれて、ありがとう。やっと、やっと救われた。ありがとう・・・』
     ツクヨミの中に封じられていた魂や残留思念が、グレア達に礼を言いながら、消えていく。そして、ツクヨミはゆっくりと塵となって消えていった。
    「・・・勝った・・・のか?」
    「しっかりしろ、ヴェン!!」
    「うっせぇよ、くたばらねぇよ・・・。」
     アルバートの呼びかけにヴェノンが小さく返した。
                    —続く—
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    mochizo No.11214102 

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    第116話「絶望クライシス」

    「好きにはさせんぞ、破壊神!!」
    『フフフ・・・今更、遅い。貴様らは負けたのだ。指をくわえて見ているがいい!』
     破壊神に追いついたゼウスが斬りかかるも、破壊神は結界を張り、攻撃を凌いだ。
    『どれほどこの時を待ちわびた事か。やっと、我が原初を手にし、全てを無に帰す時が来たのだ!』
     破壊神の言葉に、少し離れた場所で見物する事に決めた黒の魔女が呟いた。
    「・・・全てを破壊し、無に帰する事で新たな世界の創造を促す、というのが破壊神の役割らしいわ。確かに、産み出されるだけの世界はひどく不安定で、飽和する可能性もあるわね・・・。」
     だが、たとえそうだとしても必死に抵抗を試みるのは、人間としての性、生き物としての性だ。可能なのであれば、破滅を避け、生にしがみつく、一見すれば、無様にも見えるが、それが本質だ。だから、救世主候補やソーマ達はなおも戦おうとする。微力ながら、運命を変える為に。
     今にも原初と同期しようとする破壊神に黒竜騎士の熱線が襲いかかる。それを受け止め、破壊神が嘲笑う。
    『今更、我を止められるとでも思っているのか?貴様の力の源たる肉体と魂の大半は我が持っているというのに。』
    『・・・・・・。』
     無言を貫く黒竜騎士を一瞥しつつ、破壊神は何かに気付いたかのように呟いた。
    『ほぅ、よもやツクヨミが負けるとはな。まぁ、いい。充分役には立った。』
     あれほどの強さを誇ったツクヨミですら、破壊神にとっては手駒に過ぎなかったのだ。それを想うと、ギルの胸に怒りが込み上げてくる。相手は、神、人間とは違う存在だとは理解している。それでも、人々の思いを踏みにじり、罪の無い者達を殺してまで原初を求める姿に、嫌悪感を抱かずには居られなかった。それは、皆も同じだったようで、ソーマの言葉を皮切りに総攻撃が加えられた。
    「これ以上、奴を原初に近付けさせるな!動きを止めるんだ!!」
    「「「おお!!」」」
     しかし、戦艦による砲撃、十魔人や八剣聖の攻撃、救世主候補やネオ・エレメントの攻撃を受けながらも、破壊神は嗤っている。
    『フハハハハ、ぬるいぬるい!!今や我は原初による加護を受けている。原初も我と同期する事を認めたのだ!もはや、貴様らに勝利は無い!!』
     とうとう、原初に触れようとする破壊神を止めようと、ソーマがニーベルングを張ろうとした、しかし—
    「グフッ・・・!!」
    「「「!!!」」」
     ソーマは小さく呻くと、吐血した。
    『無理はせぬ事だな。いくらお前がエルフの平均寿命より若いと言えど、度重なる戦いは着実に貴様を消耗させている。我を止めるほどのニーベルングなど、容易くは張れまい?』
     ソーマは血を拭いながら、息を整えつつ破壊神を睨みつける。
    『やれやれ、往生際が悪いな。まだ諦めていないか。』
    「当たり前だ。諦めた時点で、どんなに可能性があろうと、敗北は決まる。戦いなんざ、最後は気持ちの問題だ。」
    『エルフとは思えん言葉だな。ならば、これならどうだ?』
     そう言うと、破壊神は9本の首で原初に噛み付いた。途端に光と共にエネルギーが迸る。
    『これだ、これこそが、我が求めていた力。さぁ、我と同期し、世界を無に帰す力を!!』
    「よせーっ!!」
     ソーマの言葉も虚しく、破壊神と原初の同期が始まった。神々しい虹色のオーラが、たちまちどす黒く変わっていく。そして、破壊神と原初が溶け合う様にして姿を変えていく。原初をベースとして、全身が黒く染まり、頭部には赤く輝く角が生え、全身を覆う鱗のような物は鋭く尖っていく。翼には呪印の様な物が浮かび上がり、金色の渦であった下半身には無数の触手が蠢いている。
    『フハハハハハハハハ!!素晴らしい、素晴らしいぞ、原初の力!!』
     破壊神が原初と同期した事を知らしめるかのように、超空間もその雰囲気を変えていく。たちまち空間が暗くなり、淀んだ空気へと変わっていく。
    「そんな・・・」
    「遅かったのか・・・」
    「これじゃ、もう・・・」
     絶望が広がり始める中、一つの影が破壊神に向かう。黒竜騎士だ。黒竜騎士は臆することなく、剣を抜き、破壊神に斬りかかった。
    『フン・・・役には立ったが、この力の前では、ハテノの力もまた小さきもの。そして、貴様の力もな。』
     そう言うと、破壊神は腕を一閃した。直後、凄まじい爆風と衝撃波が起こった。無論、破壊神の正面にいた黒竜騎士はそれをまともに受ける形となった。
    「「「!!!」」」
    「やられた!?」
     だが、黒竜騎士は健在だった。無傷とはいかず、所々が破壊され、片腕がもげているが、戦う意志は残っているようだ。なおも突撃してくる黒竜騎士に嫌気がさしたのか、破壊神は吐き捨てた。
    『もう貴様には価値が無い。消えされ。』
     そう言うと、破壊神の触手が黒竜騎士を貫いた。
    「「「!!!」」」
     全身を何か所も貫かれ、黒竜騎士は完全に沈黙した。が、次の瞬間—
    『ウグッ?オオオオオオオオ!!!』
     突然破壊神が苦しみ始めた。すると、その場にいる者の心の中に声が聞こえて来た。
    『こいつの、破壊神の中には、まだ俺の魂と肉体が残っている!まだ、完全に原初と同期していない今なら、少しの間、奴を止めておける!!奴と原初の繋がりを断ち切ってくれ!!』
    「ハテノ・・・」
     そう、それはまさに救世主—ハテノの声だった。すると、黒の魔女が言った。
    「これがハテノの作戦だったのよ。もしも破壊神が原初との同期を成功させようとしても、自分の一部さえ自由であれば、肉体や魂に影響を及ぼす事が出来る。長時間は持たないけど、確実に相手は不安定になるわ。ハテノは、気付いてたの。自分達を裏から操った者がいる事をね。」
    『急げ!そう長くは持たない!!』
     ハテノの声を受け、艦隊は、救世主候補は武器を構え、圧倒的存在に向かっていく。これが、正真正銘、最後の戦いだと悟ったのだ。
                  —続く—
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    mochizo No.11218734 

    引用

    第117話「原初の開放」

    「撃ち惜しみはするな、全弾撃ち切れ!!奴に少しでも傷を!!」
     ユグ・ドラシアを始めとする戦艦が、残った弾丸を一斉に放つ。大半は、強力な結界に阻まれながらも、数発は命中する。それによって生じた傷を破壊神は原初の力で再生しようとするが、ハテノの妨害のせいか、再生は遅い。それを見て、士気は向上していく。既にジェノサイドブレードを失っているヴェノンもチャクラムを投げつけて攻撃を加える。更に、獣化したヴリィが渾身の斬撃を叩きこむ。それらの攻撃は決して致命傷にはなりえないが、ハテノの妨害により、着実にダメージは蓄積しているはずだ。
    『ウオオオオ・・・貴様ら如きに・・・我がぁァァ!!』
     怒りに震える破壊神は、ろくに狙いを定めずに熱線を放つ。ハテノの妨害により狙いが定まらなかった熱線は、信じられない標的に向かった。
    「しまった!ユグ・ドラシア!!」
     そう—撃った本人すらも分からなくなった熱線の射線上には、果敢に砲撃を続けるユグ・ドラシアがいた。
    「回避ーー!!」
     ルピの叫びが艦内を駆け巡る。しかし、回避行動は間に合わず、ユグ・ドラシアは熱線に貫かれ、爆炎をあげる。
    「ああ・・・!!」
     思わず声にならない叫びをあげるユぺル。だが、ユグ・ドラシアはぎりぎりのところで持ち直した。どうやら、命中はしたものの、動力部に損傷は無かったようだ。それでも失速し、砲撃も止まる。船体が傾きかけるが、ソーマのニーベルングが辛うじて支える。
     無理やり熱線を放ったせいか、一瞬破壊神の動きが鈍る。ここぞとばかりに、ギルとバンリが仕掛ける。ネオ・エレメントの熱線が破壊神の結界を打ち破り、ヨルムンガントの真の力を解放したギルの斬撃が破壊神を切りつける。しかし、破壊神は揺るがない。痛みと怒りで錯乱し、原初とハテノの妨害を抑えきれなくなり、暴走し始めてすらいる。辺り構わず放つエネルギー球や熱線が超空間を飛び交う。避ける事は可能だが、このままでは、ハテノの妨害にも限界が来てしまう。すると、突然、巨大な蔦が稲妻を纏いながら、破壊神に纏わりついた。
    「何をしている!?早くやれ!!そう長くは抑えていられない!!」
     見ると、ゼウスが必死に破壊神を抑えつけている。本当は自分自身の手で倒したいのだろう。それでも、ネオ・エレメントと自分達に賭けようとしているのだ。この思いを無駄にする訳にはいかない。仲間達と呼吸を合わせ、攻撃を仕掛けようとした、次の瞬間、でたらめに放たれたエネルギー球から仲間を庇う形で、ネオ・エレメントが被弾した。
    「バンリ!!」
     さすがのネオ・エレメントも原初の力によって底上げされたエネルギー球に深手を負ってしまった。
    「このタイミングで・・・!!」
     ソーマはそれを見て、歯噛みをした。そもそも、この場にいる全員と救世主候補、ネオ・エレメントで攻撃を加えて、何とかできるかどうかという相手だ。ネオ・エレメントが深手を負ってしまっては、勝てる見込みは少ない。
    「大丈夫か、バンリ!?」
    『・・・大丈夫だよ・・・、必ず勝って、皆で帰ろう?』
     そう言うと、傷を負ったネオ・エレメントが光になって、ヨルムンガントに降り注いだ。刀身に凄まじいエネルギーがみなぎり、光を放つ。
    「合体・・・した?」
    「これなら、いけるか!?」
     新たな希望が満ち始める中、とうとうゼウスの蔦が焼き切られた。このままでは、ハテノの妨害も持たない。
    「小さな攻撃を続けている暇は無い!一撃で倒さないと!!」
    「そうだな、じゃあ、ギル、お前がやれ!」
     唐突に指を指され、ギルは動揺する。
    「な、何でだよ!?ユぺルやハイマスの方が強いだろ!?」
    「ぐだぐだ言ってんじゃねぇ!バンリがお前を認めてんだ!力を分けてやるから、さっさと決めろ!!」
     戸惑うギルの胸倉を乱暴につかんでヴリィが言う。驚きつつも周りを見ると、仲間達も同じ気持ちの様で、自分の事を見つめている。
    「・・・・・・分かった。力を貸してくれ、皆!!」
    「「「おう!」」」
     ギルの言葉に全員が応じ、ギルに自分達の力を注いでいく。それを感じて、破壊神が阻止しようとするが、ニーベルングがギリギリのところでギル達を守る。ソーマとゼウスが援護をしているのだ。さらにグレア達が破壊神の気を逸らそうと攻撃を加えている。誰も諦めてはいない、それほど自分達に賭けているのだ。この思いを無駄にする訳にはいかない。そして、とうとう救世主候補の力が一つになった。
    「チャンスは一度、必ず決めて見せる!!」
    『うん!!』
     グレア達の攻撃で、一際大きな爆発が起こるのと同時に、ギルは真っ直ぐに破壊神に向かって突進した。
    『小癪な!消えよ、ハテノ!!』
     ギルの攻撃開始から一拍遅れ、破壊神はハテノの妨害から解放される。
    (この状態で、あれを喰らえば、原初との同期が解除される・・・それだけは・・・)
     破壊神はおもむろに翼を広げると、回避行動の構えを取った。
    「しまった!」
    「避けられては・・・!!」
    『ぬっ?これは・・・ニーベルング!?』
     回避しようとする破壊神の脚と翼にニーベルングが張りつき、動きを止める。
    「逃がすものか!!」
    「これで終わりだ、破壊神!!」
    『貴様等ァァァ!!!』
     最後の魔力を振り絞って発動されたニーベルングはなかなか砕けない。そして、ギルが射程圏内に入った。
    「行けぇ、ギル!」
    「ぶちかませ、坊主!!」
    「ぶった切れぇぇ!!」
    「「「行けぇぇぇ!!」」」
     仲間達の声援がギルに更なる力を与える。そして—
    「ウオオオオオオオオリャアアアアアア!!!!」
    『!!!!』
     鎧を纏った大蛇の一撃が、破壊神と原初との繋がりを断ち切った。
    『グゥオオオオオアアアアア!!!』
     凄まじい光と衝撃で破壊神は吹き飛ばされ、原初は何事も無かったかのように、その場に現れた。そして、腕を軽く振り、超空間に亀裂を入れると、そこから消えていった。力を使い果たしたギルとバンリはその場で倒れこむように浮かび上がった。
    「・・・どうなったんだ、ありゃ?」
     ヴリィの疑問に傷を癒したフェニックスが答える。
    『原初は、元々いた空間に戻ったのです。ここは、私と破壊神が戦うためだけの空間、戦いが終われば消滅します。私がゲートを開きます、急いで!』
    「機関最大!超空間から離脱する!!」
     勝ち時の声もそこそこに、満身創痍の艦隊は、崩壊を始めた超空間から脱出した。

    『・・・連中は、去ったか。間抜けな奴らよ、我が死ぬはずがない。』
     破壊神は静かにほくそ笑んだ。確かに原初との同期は解除された。だが、あの光の中、自分は原初の影に隠れ、原初のいる空間についてきたのだ。ここに来る事さえできれば、いつでも同期する事が出来る。そのうえ、邪魔者もいない。と、その時、破壊神の視界を原初が通り過ぎていった。
    『そこか・・・、さぁ、今度こそ、我と一つに・・・?こ、これは・・・』
     破壊神は周囲を見渡して強張った。超空間とは違う、光の粒が輝く暗い空間だと思っていた。だが、違う、ただの光の粒と思っていたもの全てが原初だ。数え切れないほどの原初がこの空間にいる。状況を把握できない破壊神の目の前で、原初達が集まり、渦を巻いていく。
    『キュオオオオオオオオオオオオオオン・・・・・・』
     すると、その渦の中心から、他の原初とは比べ物にならないほどの威圧感を持った巨大な原初が現れた。
    『あれが、あれで子供だというのか・・・!?馬鹿な・・・』
     困惑するちっぽけな破壊神を巨大な原初が鷲掴みにする。そして、そのまま口元まで持って行く。開かれた口の中には、煌々と輝く灼熱のエネルギーが満ちている。
    『こんな・・・破壊神たる我が、このような・・・このようなァァァァ!!』
     抵抗も虚しく、破壊神は巨大な原初に一呑みにされた。破壊神を喰らった巨大な原初は、再び原初達の渦の中に消えた。残ったのは、暗く果てしない空間の中をひと玉のように舞う原初達だけであった。

    「バンリ、目を覚ませよ、バンリ!!」
     その頃、超空間から脱出し、目を覚ましたギルは必死にバンリを揺さぶっていた。しかし、バンリが答える様子は無い。
    「どういう事なんですか!?」
     涙交じりに尋ねるザイアにフェニックスが答える。
    『神殺し—ネオ・エレメントは役目を果たし、新たな適合者を求めて旅立ちました。彼女の命を使いきって・・・』
    「「「!!!!!」」」
     フェニックスの言葉にその場の全員が絶句する。では、バンリはもう・・・
    「ウソだろ?バンリ・・・バンリィィィィ!!」
                   —続く—
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    mochizo No.11218900 

    引用

    最終話「新たな時代の幕開け」

     何も無い真っ白な空間でバンリは目覚めた。彼女は分かっていた。戦いが終わるとはどういう事か、それでも、自分の事を愛してくれた人達の世界を守りたかったのだ。そして、彼女の願いは、恐らく叶った。もう、思い残す事は無い、はずなのに、彼女の目からは涙が溢れていた。
    『それはそうだろう。君はまだ死ぬべきじゃなかったのだから。』
    「!」
     声に振り返ると、そこには優しそうにほほ笑む一人の男—ハテノの姿があった。
    『今回の一件は、きっかけがどうあれ、古い時代の人間が招いた事、君が死ぬ必要は無い。君は生きるんだ。』
    「・・・でも、僕はもう・・・」
    『命ならあるさ、この、俺の来世の命が。』
    「!!」
     そう言うと、ハテノは輝く光の珠を取りだした。
    『生前の行いのせいか、俺には来世に転生するチャンスが約束されていた。そして、破壊神から解放された今、俺はこれを自由に出来る。そして、俺はこの命を君に渡そうと思う。』
    「でも、それじゃ、ハテノさんが・・・」
    『俺は好きに生きたし、輪廻転生したいとも思わない。ここで時代がどう変わっていくかを見続けたい。シェイラやソーマも直に来るしな。それに君には待っている人が沢山いるはずだ。悲しませちゃいけない。さぁ、生きなさい。』
     そう言うと、ハテノは光の珠をバンリにぶつけた。すると、強い光と共にバンリは白い空間から消えた。それを見届けると、ハテノは満足げに頷いた。

    「「「「「・・・・・・!!」」」」」
    「バ・・・ンリ?」
    「・・・ギル・・・。」
     死んだはずのバンリが目を覚まし、一同は一瞬驚くも、次の瞬間には歓声が巻き起こった。バンリの生き返りの事実を悟ったフェニックスは静かに空を見上げた。空は汚れない青空だった。
     破壊神の敗北と同時に毒蟲による襲撃も完全に鎮圧され、ようやく世界の危機は去った。そして、戦いの疲れを取る間もなく・・・
    『それでは、バンリ・ヴェールと、ギルの結婚式を取り行いたいと思います!!』
     ソーマの完全な思いつきで、ギルとバンリの結婚式が行われる事になったのだ。本人達が一番戸惑っていたが、相思相愛だったようで、何の問題も無かった。
    「あ、あのさ・・・バンリ・・・」
    「いっぱい、幸せになろうね。ギル。」
    「・・・ああ!」
     2人の口付けに、急造りの教会に祝福の声が上がった。簡素な披露宴を行った後、今後の復興活動について話し合う場を設ける事を十魔人同士で決めた後、戦いに疲れた者達は深い眠りについていった。
    「286年か、そう悪くは無い人生だったな。戦争に巻き込まれはしたが、最高の家族が出来た。もう、俺があいつらの心配をする必要なんてない。あいつらなら、この世界を、これからの時代を任せていける。そうだろ?ハテノ。」
     ベッドの上でソーマが呟く。既にカウントダウンの残り時間を示す眉間の数字は1になり、消えかかっている。次第に身体の感覚が失われていくなか、ソーマは穏やかな顔で言った。
    「ああ・・・、本当に良い家族だよ、お前達は。シェイラ、今行くからな。」
     そう言うと、彼は目を閉じた。それと同時に眉間の数字が消えた。

     翌日、ユグ・ドラシル跡地は深い悲しみに包まれていた。ユグ・ドラシルを創立し、メンバーを見守り続けていた親父こと総隊長、ソーマが天に召されたのだ。彼自身が公表していなかったため、カウントダウンの副作用が死因である事を知る者は少なかったという。多くの者が泣きじゃくるなか、ルピが哀しみを抑えつつ、一枚の手紙を見せて言った。
    「・・・父上の机の上にあった。恐らくは・・・遺書だろう。・・・読むぞ?」
     その言葉に全員が静かに頷く。そして、ルピが手紙を読み始めた。

    —この手紙を読んでるって事は、俺はもうこの世にはいないだろう。だが、未来を担う若者、我が子たちよ、悲しみに支配されないでくれ。俺は、もういないが、俺の意志を継いだお前達はまだいる。俺がいなくても、驚くほど世界は周っていくものだ。だが、総隊長として、次期総隊長について言っておきたい事がある。俺は、特定の人物を挙げるつもりは毛頭ない。現副隊長と、ファナ・メルタナ、ゼウス辺りで役割分担し、まとめていってくれ。その中で一人に絞る必要があるなら、そうしてくれてもいい。その代わりと言っては何だが、ちゃんと墓参りくらいはしてくれよ?後は、無駄に悲しまない事、人である以上死は免れない。俺は、いつも元気で自由なお前達を見るのが好きだった。これからもそうあってくれれば言う事は無い。
    —最後に、子供たるギルドの隊員を心から愛している。 ソーマ

     手紙の内容に、多くの隊員は涙を流しつつも笑った。悲しくて、嬉しくて、こみ上げる想いに耐えかねて。
     その後、世界はユグ・ドラシル出身者や救世主候補の手によって復興を果たし、新たな時代が訪れ、物語が綴られていくが、それはまた別の話。


                    —完—
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