11月の最初の週の内に発表すると言ってましたが若干タイムオーバーです。
すいません。かたじけないです。腹を切ります。
さて、では腹を切る前に選定結果の発表を済ませたいと思いますが、
例によって例の如く、各小説の感想文から入ります。
【諸注意】
・感想は全て、僕の考える定石、そして好みによるところが大きいです。
・強く断っておきますが、僕自身の文章力については棚に上げています。
・貴方の望んだ評価でない場合もありますが、予めご了承ください。
よし、きちんと予防線を張ったので大丈夫でしょう。
それでは皆さんにノミネートして頂いた順番に投稿していきます。
きのこのこのこ
No.11437054
2011年11月06日 00:59:44投稿
引用
作者:Ytsk 氏
感想原案を書いた後に追記が投稿されたりwikiが編集されたりしたという。
全体を通して、文学的というか、言葉を選んで敢えて難しい表現を選び見通しのつきにくい構成にしてあるけれども、しかし必ずしもそれに拘っているわけではない、という印象を受けました。
誰でも一度は複雑な漢字、回りくどい表現などを格好良いと思う時期があるとは思うのですが、ただ難解な言い回しに憧れる人の文章では、この作品のようにはならないだろうなというのは読みながら何となく思いました。
ただし。どう頑張っても、一筋縄では読ませない、近寄りにくい文章ではあります。
登場人物が英字一文字で表されていたりするのは最たる例かと(wikiにありましたが)。名前とキャラクターが結びつかないので把握しづらいです。作品の雰囲気にはマッチしていると思いますが、こういった文章を読むには慣れが必要ですし、常用ではない方の漢字を多用している書き方に関しては読む側の好みが分かれるポイントだと思います。
が、面白いのは、すんなりと頭に入ってこない文章の中に、所々笑い要素としか思えない部分が見受けられるところです。これがあるとないとでは、読み進めるモチベーションにだいぶ差があっただろうという気がします。
まあこの要素、例えて言うと、白の碁石が敷き詰められた中に黒い碁石が混じっている、そんな目立つ投入の仕方がされているので、これも好みが分かれるとは思いますが、僕のようなコミカル味大好きな人間は、ずっと粛々と進むよりかいいと思っています。
そしてそういう要素は引っ張らず、白けた雰囲気で次へと流してしまうあたりが、この作品の妙に気怠い、あるいは凝り固まらない雰囲気を醸成していると感じました。
……何だか自分も堅苦しいことを言ってますが。
文体が特徴的なので特筆していますけど、要点を言えば、取っつきづらい、けれど追って読んでいけばふっと面白さを感じる、そういう書き方だと思います。
ていうかむしろ、これを読みやすくするのは無理に近いと思うので、この読みにくさを敢えて誇ってもいいと思いますけどね。
ストーリーはどうでしょう、正直なところ何遍か読み返してみても完全に理解できた気がしないのですが、推理のミステリ味は薄いと感じました。
いや、ミステリーの雰囲気はびんびんに放出されているんですが、果たして作者さんの意図はどうであれ、推理モノ特有の種明かしの際の緊張した空気がこっちまで流れてきません。
というのも。この作品は会話を中心に話が進んでいるようなので、推理モノの定番である推理材料提示を事前にするのは限度があるはずです。展開も、予備知識なしに登場人物たちの会話を聞いてしまったようなものですしね。
反面、ブチ切れの原因が何だとか、お互いの推理合戦だとか、アンソニーが何だとか、微かに滑稽さを感じる要素が随所に散らされ、文章全体にそんな要素が滲んでいます。ナゾトキという言い回しに関しては完全にアンソニー関連だろうかと思いました。
それによって、本格推理小説……とは何か違う雰囲気になっています。「推理作品だな」ではなく、「推理を主軸にした不思議な雰囲気の作品だな」というのが一連の流れについて思った感想です。
どちらが良いのかは一概には言えないところですけど。
さて、どうも上手く言い表すことができないのですが……。
スパリとは割れません。オチはそのものずばり表されていますが、それまで何とも形容しにくい混迷した流れが続きます。繰り返し読んで、やっとこさっとこ辛うじて、話の繋がりの輪郭が見えてきました。
それくらい難しい小説であったと思います。
しかし、まあ、読んでみて、これはこうなのかな? こうなるのかな? と、色々と想像を働かせられる作品であったことには間違いありません。
読む人を選びますが、奥行きの感じられる、頭を使う小説でした。
きのこのこのこ
No.11437058
2011年11月06日 01:01:20投稿
引用
作者:朧月夜の黒猫 氏
ライトノベルですね。
一応、(乱暴な言い方ですが)萌えれば売れると思ってる類のラノベとは異なる、しっかりした骨格を持った近代的なライトノベルだと思いました。
まず、描写の確実性を持っていると思います。容易に思い浮かべられる描写、特に動作ですが、きちんとそのときそのときの必要な場面にて、行を費やしてきちんと書いてあります。ネット小説では描写足らずの人って結構多いんですよね。僕もそうです。
まあ……一般的に物書きの癖として一度使った用語や表現を再び使いがちになるという傾向がありまして、(この傾向が多いと文がでこぼこしたり、または鮮度が落ちて見えます)その癖がやや顕著だとは思いますが、その描写に関しては見習いたいものがあります。
序盤から謎やら分からないことが多めに作られている展開にも関わらず、あまりストレスを感じずに、次を読みたいなあと思える運びになっていますね。
状況解説の不足やら、そういったごたつきが一切無いとまでいえば言い過ぎでしょうが、なかなか滑らかな文章だと思います。
あとキャラクターが魅力的です。キャラの登場時などに背景説明がほとんどないのでどのキャラも触れにくいですが、性格はおいおい分かるように書かれていて……補って、余りある魅力です。
また、語彙が豊富なのだろうなと思える文章なのですが、それ故に誤字なんだかわざとなんだか分からない箇所がいくつかあります。最初の方で例を挙げると、5レス56行目の「振るえて」は「震えて」では? とか、8レス71行目の「声をかけてくるの」は「で」が抜けているのでは? とか、9レス28行目のヘカテーの台詞で、ミカが漢字呼びになっているのは意味があるのだろうか? とか、同レス56行目の「目が覚めるでしょし」は「う」が抜けてるのでは? とか、挙げればかなりの数、出てきます。
頻繁に首を傾げる単語が出てくるので、ミスだとしたら校閲は粗いかなと思いました。
レスの最初にある詩のようなものは……あると、区切りが強調されて、だらだら続いている感じがせずに引き締まりますね。そのレスの話を読むにつれて、そういう意味かと納得する面白さもあります。ただ重要なのかどうかはいまいち分かりません。
ストーリーは前にも述べましたが、謎や分からないことが多くあり、次に進むにつれてちょっとずつ内容を解説していくという形になっていると感じたので、ごちゃごちゃからのストンが好きな人には受けるんじゃないでしょうか。
基本的にサクサク次へ読み進められ、引っかかる部分がないので読みやすい話だと思います。投稿数が多いですが、話の追いやすさのおかげで、読んでいてもさほど気になりません。というより、このクオリティが連なっているかと思うとわくわくします。そして読み応えもありますしね。繋がりは唐突ですけども、構成も面白いと思います。
ただし、読みやすさに関してですが、段落がまるで超分厚いウエハースみたいに固まっている部分がよくありますね。1ページが黒々としているような。
(この感想文を遠目に見ていただくと分かると思いますが)僕みたいな詰め書きに慣れている人間は、その黒々とした書き方もほとんど気になりませんが、ネット小説というのは行間隔も大事だそうですから、詰め方を見て敬遠する人がいるかもしれません。
とはいえ僕個人としては、この作風で改行を増やした方がいいとは思いませんけど……。
それでもコンパクトを目指す分には意義があるのではと思います。
もしかして思いついたまま書かれていて見直しが足りないのでは? という感じはしますが、黒々とした見た目に反して、文も内容も比較的ソフトな小説でした。
きのこのこのこ
No.11437067
2011年11月06日 01:03:27投稿
引用
作者:ダーツクリーム 氏
シュールです。
最初にタイトルの読みを理解していなかったが為に、「アイスの実に似ている」「身体の色はピンク色」でピンキーの猿か何かかと想像しましたが、的外れでした。
こんな風に騙されるのは僕ぐらいかもしれませんが、表現の仕方次第でそういうことかと読み手に思わせる手法なのが面白いですね。
万人に分かるネタだからこそできる遊びと言えるでしょう。
小説としては出落ちだと思います。
最初の投稿が一番面白く、進むにつれてプレイ手記のようになってきています。このタイプの話はどうしても最初のネタが過ぎるとマンネリ化してつまらないものになってしまいがちなので、ある意味実力が必要なジャンルだと思います。
これは短編と長編の話にも繋がりますが、単発ネタになりそうなものは、長続きさせない方がいいかもしれません。
最初の、モチーフを理解した瞬間の貫通感は何にも負けない小説でした。
きのこのこのこ
No.11437072
2011年11月06日 01:05:09投稿
引用
作者:SGUNDAM 氏
正式にはARMAGH OPTIONなんですね。了解です。
しかし、これは既に威狩狐氏が指摘されていましたが、ARMAGHというスペルはどこから持ってきたのでしょうか。Armaghを辞書で引くと北アイルランドの州しか出てきません。舞台が日本なら、明らかに関係ないんじゃないかと思うのですが……。
これからの展開で北アイルランドが超重要な役割を果たすようには見えないので、誤解を生まないためにもせめて本文ではArmor表記を使ってはいかがかと。
さて内容ですが、立て板に水でひたすら一人の語り手が喋っているような感じです。最後の方にちらっと視点変更がありましたが、それまではノンストップスピーチですね。
これは、次から次へと話が進んでいくからでしょう。息をつかせぬ文章、といえばハラハラするようで聞こえはいいですが、そればかり続いていると疲れてしまいます。
また、句読点がないことで不自然になっている部分、前の文との脈絡がない次の文、など、荒さを感じる点が随所にあります。
特に後者に関しては、先と文の印象が異なってくるというパターンが多いです。例えば、『このAOは致命的な欠陥を持っている。別に故障しやすいとか、女しか使えないとかじゃあない。』という文。この文では重症度が「致命的な欠陥<女しか使えないこと」になっていますが、致命的な欠陥は高校生しか乗れないこと、つまり「高校生しか使えないこと<女しか使えないこと」(女性しか扱えないことの方が、高校生しか乗れないことよりまずい事態である)となるわけですよね。数は高校生の方が少ないのですから、この表現では矛盾が生じてきます。
まあ受け取り方次第なんですけどね。
とりあえず、一度書いてみたら、それを何度も読み返してみる癖をつけてはいかがでしょうか。
それから……。
僕は兵器に関する知識はそんなにないので機構については何も言えません。質量保存の法則を無視していることを論うのはナンセンス。物語中の突飛な話もある程度は受け流すべきです。ですがしかし、それを踏まえてもちょい説明に無理がありますね。
どうしてそうなるのか? ということが一切書かれないのは、ややご都合主義に偏向してしまいがちです。解説は多めなのですが、理由にも触れるようにした方がいいかと思います。
総合して、全体的に文が軽いです。戦争やら兵器やらを扱う割には重みが感じられず、学園生活と戦争中での切り替えが為されていないと感じます。【兵器(武器)×学校(生活)】というジャンルはよく見かけますが、場面の雰囲気をがらりと変えるべく、戦いの最中は文中の軽口を減らしてみるのも手かもしれません。
とまあ、ここまでマイナス評価ばかりを言っていますが、文中の(主人公の)ツッコミセンスは高いと思いました。作者の方もギャグ線は高いのではないでしょうか?
一人語りの小説は、「ああこれ作者は面白いと思って書いたんだろうけどイマイチだな」と思うような一節がありがちです。プロの作家さんにもあることです。
ですので、共感しやすい面白さのツッコミを混ぜてこれるその腕は、誇っていいと思います。
まだまだ上昇途中だとは思いますが、難しいジャンルに足を踏み出している、ストーリーを展開させる意図を感じられる小説でした。
きのこのこのこ
No.11437078
2011年11月06日 01:07:30投稿
引用
作者:こーどさん さん(←
たしか、アンケートでも感想を求めていらしてましたっけ?
相当に熱意があり、小説家を目指そうという志をお持ちのようなので、アンケにて言われた通り、思ったままの辛口なことを言うと、この作品には、どれだけ時間をかけても読みたいと思わせる掴みがありません。
まずテンポが焦っています。
テンポが早いことは必ずしも悪いことではないですが、この作品のテンポが早い理由として、短文が多く、文と文との間にゆとりを持たせていない感じがありました。加えて読点も多いので、「はい次! はい次!」という文のスピードが透けて見えます。
描写を少なくしておきながら、台本ではなく小説として仕上げるのは至難の業であり、アマチュアにはまず真似できないことなので、動作や見た目だけではなく、人の表情から感じるもの、肌に触れる場の雰囲気、そういった機微を逐一描写する心がけは持つだけ持っておくと文の幅も変わってくるんじゃないかと。
以前、典型的な学生小説だと申し上げた記憶があるのですが、あれはどういう意味かというと、『小説に魅力を感じるようになった年代が、勢い込んで考えた小説』というのを喩えて言いました。そういう小説は大抵、物語の進みはいいのですが、いかんせん描写が少ないです。主人公視点で進める手法を使います。他作品のパロディネタをふんだんに取り入れます。そしてよく叫びます。
これは僕にも言えることなので人に言ってる場合ではないのですが、そうなる理由はおそらく物語の設定や構想だけが先回りして、文、もっと言えば語彙や文章力がそこに追いついていないからこそ起こるのだと思います。
ネタはあっていいはずです。地の文に紛れている、分かる人には分かるネタなんて最高だと思います。ですがそれが目立ってはどうしようもないし、ましてやネタがその瞬間の雰囲気を破りながら登場するようでは使いどころが悪いとしか言えません。
これも僕の言った意味の学生小説にありがちなことなんです。
作品を書くにあたって、頭の中ではもう作品世界が出来上がっているのだと思います。ですからテンポが早く、理由や描写が少なくなる。物語の山場を盛り上げようという感じは伝わりますが、緊張感やその他色々な思いがこちら側に届く前に次に進んでしまっています。
打開策としては……、作者の方は今現在、どんな小説を読んでいるんでしょうか。文を書くテクニックは人から盗むのが効率的です。プロ作家のお歴々は、会話文も不自然でない程度に長く書け、動作ひとつを取ってもそれに付随する顔色や気持ちなどをこれまた不自然でない程度に付け加えています。模倣はポリシーに反する! とかでなければ、何種類か違う作者の本を読み、描写を真似てみることをおすすめします。
ストーリーは確かに長引いていますが、ご自身で豪語している通り、設定は練り込んであってどういう展開で次へ進めようかなどの枠組みはきちんと考えられていると感じます。
羨ましいです。行き当たりばったりの僕に分けてほしいくらいですよ。
であるからして、地の文が足りないことが惜しいです。落ち着いた文章が書けるようになれば、一回りも二回りも面白さが増大する作品になること、これは間違いなしです。
会話文以外のほとんどが主人公の感想風味な語りで、理由が書かれていないままに次へ移る進み方であり、深みが圧倒的に足りていない点。
この点が何とかできればクオリティが上がるのではないかなと。
学生小説を卒業して、作者の方が考えた世界がそのままこちらにも伝わるようになれば、きっと面白くなるだろうと思える小説でした。
きのこのこのこ
No.11437089
2011年11月06日 01:11:04投稿
引用
題名:暮れる夢の日
作者:バプテスマのホアン 氏
かっとんでますねぇ……。
レスの始めに暗黒世界という単語が用いられていますが、まさに暗黒世界を文章に表したみたいです。疲れた夜の夢だってこんなにカオスなことにはならないでしょう。
この作品から読み取れたことといえば、罪と政治と宗教と狂気と排泄系の下ネタくらいです。既成の小説のルールで評価するのは無理です。どういう意義があるのか感じ取るのもまあ難しいです。人は死ぬし会話は奇妙だし物語は破綻しているし、前衛的すぎて言葉もありません。
ひとつ言うなれば、様々な時代の歴史人物や用語が登場していること。これだけの言葉を振るっているのですから、知識は相当なものじゃないかと思うのですが、いやはや、狂ってますね。
文章力は本来しっかりしているのではと想像しますし、思わず吹き出すようなフレーズも混じっていて興味深いのですが、いやはや、狂ってますね。
邪推になりますが、この小説には「既存の縛りを解き放て!」みたいな念を感じます。
話の展開はもう評価する段階ではないように思えるのですが、僕の微々たる読解力ではその程度が限界です。
この真面目に論評できない作風に口を出すのは無粋かなと、そうも思うのです。
お世辞にも人に読ませる小説だとは言い難いですが、強烈かつ独特な世界観が何を言いたいのか、考えずにはいられない小説でした。
題名:赤き潮風に乗って
作者:バプテスマのホアン 氏
雰囲気から、僅かながら蟹工船を思い出しました。
……と思ったら、それを意識して書いたということなのでしょうか? 僕は映画版は知らないので、改悪とまで言うほどなのかは分かりませんが。
この作品は筋立てと文章がしっかりしていると思います。
故に主役として描かれている水兵達の立場から見たくなるし、自由を掴む努力を応援したくもなります。バランス(画像や仕切りマークを使った分け)やテーマの一貫性もきちんとしているし、理由・動機などの説明も尺をとって書いてあるので、この辺りは申し分ないと思いました。
命の描かれ方については淡泊ですよね。他作品でも思ったのですが、今作でも割とそんな風に感じます。それから古典文学のような書き方はお得意だと見受けられる反面、切羽詰まった状況下でのドラマチックアクションだとか、場を盛り上げていく緊迫感だとか、そういう描写は比較的薄めだと感じます。まあ、この作品に関しては無くていいと思います。その素朴さ、淡泊さ、派手な演出のない書き方は魅力です。
が、物足りないと感じる人もいるでしょう。年齢と意識によって好まれるかどうかが変わってくるテーマだということもあり、そういう意味では読み手は一般の小説より限られてしまうと思います。淡々として読みやすいんですが、読まれにくいジャンルです。
水兵の反乱、延いてはそこから革命っぽく立ち上がる人々を描いた、読めば誰でも分かるそのままな話であり、面白さも読んだままに準ずるので、特筆すべきことはありません。
僕は、歴史、あるいは政治、そういったことが話に絡んでくるだけで何かしらのメッセージがあるのではないかと考えるタチです。こちらでもやはり「既存の縛りを解き放て!」を感じました。
難しい含みは感じませんが、人それぞれ、思いを抱く作品だと思います。
簡単に言ってしまえば遠目に見て平らな一本道であり、スピード感やスリルの山は、突出したものはありません。それでもどことなく引きつけられるものがありますね。
読み解きやすく、テーマのあるストーリーが描かれた小説でした。
きのこのこのこ
No.11437103
2011年11月06日 01:13:23投稿
引用
作者:ハコキング 氏
ミステリアスホラーグロテスクサバイバルと、まあ、そういった類の要素が存分に含まれていて、インパクトの大きな作品だと思いました。
サイレントヒルみたいな雰囲気を感じますね。SIRENの方はあんまり詳しくないので分からないんですけども、確か制作側に関係があるんでしたっけ。
いきなりパニックワールドが展開し、悪くない意味で読者を置いていっていると思います。わけの分からない恐怖や、異形の人間と遭遇したときの緊迫した印象などは伝わってきて、こちらも不安な心持ちになってくる作りになっています。
しかしながら、文はやや浅いですね。雰囲気は充分にホラーなのですが、それはどちらかというと登場した異形そのもの、あるいは置かれている状況から感じるものであって、文章力が掻き立てているという風には思いませんでした。『何々が何々であった。何々が何々をやった。』という文の比率が高いからでしょうか。物の描写がしっかりしている反面、どこか傍観者のような文章であり、「一緒になって恐怖しようぜ!」というよりも「主人公達はこんな目に遭っています。大変ですねー」という他人事感が漂っている気がします。
ただ、それによってバイオハザード的な熱血サバイバル要素を抑え、物語の謎めいた側面を増幅させているとも取れるので、一概に間違いと断言するべきではないかなとも思います。
ついでに文章のことですが、ちょっと粗いですかね。
「歩くたびに聞こえてくる骨を砕くような音が聞こえてくる」というのは、重複しています。間に読点が入っているなら繰り返しフレーズとして読むことができますが、これではいわゆる「変な変態」現象が起きてしまっています。
それと助詞や接続語に違和感を覚えることが時々あります。同じ言葉を短い間隔で使っていて、浮いて見えることもあります。「わりぃ……あたしを助けてありがとな……」にはつい吹いてしまったんですが、「くれて」が入っていないのはわざとなんでしょうか。
作品を通して、全体的に読点が少なめですよね。また、文を詰めていますね。バランスとしてはいいのですが、詰めた文は文自体のテンションが高いときに効果を発揮するのであって、この作品のような文章の場合は展開の熱さよりも転がりを感じます。次の動作が起きたときに少し間を作る(間延びさせるのとは違います)ことを意識してみると、転がりが抑えられるのではないでしょうか。
……と、いうようなところで、文章に関してはまだ向上の余地ありと感じました。
ストーリーの方ですが、登場人物が一気に出てきて混乱すること以外は話を追いやすく、ホラーありグロあり謎ありがきちんと表れていると思います。
謎っていうか単に事態の原因把握をさせていないという言い方もできるんですけど。
クライマックスはまだこれからという風に見えますし、突っ込んだことは言えないですね。
まとめると、ストーリーの筋は立派なものであり、描写も、何だか具体的に表していない部分もありますが及第点以上だと思います。ですが、繰り返しますがいかんせん文章の『〜であった。』が目につき、ドキドキの急上昇を感じません。『〜であった。』の連続が悪いわけではないのですが、文の独立が強いと、ゲームなどの実況に似た空気が出てきてしまいます。作品の雰囲気に合わせてわざとやっているのなら納得がいくのですが、少々気になりました。
冒頭でご本人は人を選ぶ小説だとおっしゃっていますが、でもまあ、グロを除いてしまえば、読みやすいし分かりやすいしで触れやすい小説でした。
きのこのこのこ
No.11437111
2011年11月06日 01:15:43投稿
引用
作者:忍者クン 氏
これはまた新ジャンルの小説ですね。
まるで基本的な枠組みに乗っ取って評価しがちな僕に対する挑戦のようです。いいでしょう、受けて立とうではないですか!
……というノリで読んだのですが、これは歌詞というか詩ですね。
このままの文を歌の形に填め込むと、おそらく統一性のないメロディ間隔が続いてしまうだろうと思います。合唱曲ならどんな詩でも歌にできますが、明らか合唱曲っていう歌詞ではないですし。
しかし、僕は今この作品は歌詞には向いていないと言いましたが、別に現在の歌のスタイルに填める必要はないんですよね。どんな歌い方をしたっていい。非常に自由な作品です。つまり非常に評価しづらいです。
まあ……素直な歌詞ではないですね。
黒、雨、鬱、文として成立しえない言葉たち……。
大方どの作品も同じような雰囲気ですが、ただひたすら同じことを伝えたいのだという受け取り方もあるわけですし、そもそも詩なんてものは小説以上に読み手次第の作品ですから、長所も短所もやっぱり小説以上に僕の偏見になります。
それを踏まえて言えば。
何となく、こういう意味かな? と予想できるものも中にはいくつかあるのですが、大体は何言ってるのか分からないので、いくつも読もうとは思えません。
レイアウトには工夫が感じられますが。
おそらくこの作品が一番読む人を選ぶものなのではないでしょうか。
何かを感じ取れる人がいる。よく分からない人もいる。もうそれでいいと思います。
言葉に際限はないということに加え、表現も感性もその人次第だなと思う作品でした。
きのこのこのこ
No.11437119
2011年11月06日 01:17:56投稿
引用
作者:グラロイド 氏
非常にさっぱりしたお話でした。
全体的にコメディタッチ、オチで終わっていくという、構成のストンとした作品です。色文字やボールドに引用といった使える機能を使い、登場人物紹介や後書きを挟んでいくことで、読みやすい作品になっていると思います。
まあ、まともな作法に基づいた小説として評価するなら3点リーダとか細かくつつかないといけないので面倒臭いところですが、自由なネタを持つ小説だと思えば、他作品のパロディに溢れていて面白いですし、愉快なので人に好まれる作品だという気がします。
そういうわけで、型に填った評価をしたい僕にとって、何かしら批判をすると「そういう凝り固まっていない世界観の作品だと思えばいいではないか」と返ってきそうなのが短所を述べる上で一番厄介なのですが、それでも言わせてもらうと、主人公の地位が高すぎるんじゃないかなと思いました。
探偵の数って少ないんでしょうか? 最初の博物館もそうですが、名探偵とは違う普通の探偵である主人公がこうも簡単に捜査協力を得て、他の探偵が絡んでこないというのはいささか「ずっと主人公のターン!」臭が強いと思うのですが。
トントン進んでいるテンポを保つためには必要なことで、物語上仕方がないとはいえ、主人公を凡に仕立てた割には大活躍してるなあと。でも、そういう世界、で片付けられるし、気になるのにカバー材料も思いつくというジレンマです。
総括すると、これは読みやすさを追求したほのぼの系の作品であり、小説というよりもお話という方が近く、面白かったらそれでいいよね、って考えを体現している感じです。
なので小説クオリティは低いです。地の文もレイトン教授の調査メモが連なっているようで、盛り上がりや文の波からはわりかし離れています。
つまり、読んでみて楽しいかどうかだけ気にしてればいいということですね。
本格小説に至るには何歩か足りないですが、キャッチーなテーマを用いた、人好きのする小説でした。
きのこのこのこ
No.11437175
2011年11月06日 01:40:19投稿
引用
いやぁ……我ながら、とんでもなくまっくろくろすけですね。
色々言っておきながら読み辛くて申し訳ないです。
それでは気を取り直して。
発表します。
第四回の非公式オススメ小説は、
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朧月夜の黒猫氏の、クロネコヤマネコ
==================================
に決定しました。
ボリュームからくる読み応え、キャラクター性、そしてストーリーの面白さがマルチに光っていました。
選出は一作品のみとはいえ、他の作品にも、続きの気になる小説が多々ありました。
陰から更新を楽しみにしていますので、
今回ノミネートされた方々に限らず、作者の皆さん、これからも頑張ってください。
あなたの生み出す世界と、筆を執る熱意と、小説への愛に敬意を表して。