その日も、雲一つ無いカラッとした青空で相も変わらず平和な日常だった。
…俺の家の中以外は。
『だぁ〜かぁらぁ、あたしと付き合いなさいよ、って言ってるでしょ。何で言うこと聞かないのよ!この鈍感!。』
…彼女は昨日からこの調子で俺に猛烈アタックを仕掛けているのだが、どうにもその行為というか言動が過剰的すぎる…というよりは…まぁアレな訳で。
それを事あるごとに断っている俺は朝っぱらから、しかも日があけてまもない4時頃に俺のベッドの上で抗議している彼女の声でやむなく起こされた。
『…っうか1日たてば止めるかと思って無視してみれば、まだ他人んちで騒いでんのかよ。
煩いからいい加減その可愛いお口を閉じてはもらえまいか?近所迷惑になるから。』
『あっ!あんたがあたしの事を無視して寝ちゃうからでしょうが。
素直にあんたが
「はい!わかりましたお嬢様」
…って言えばあたしだって止めてあげるのに』
…ああ、誰かこの可哀想な女の子を
家から連れ出して
そして下僕という彼氏に
なってあげてください。
atik No.12049560 2012年11月28日 14:32:40投稿
引用
『お兄ぃ朝だよ。起きてる?起きてないなら私が今から果物ナイフと包丁でお兄ぃのコレクション破壊するよ☆』
一瞬にして俺の部屋の廊下辺りから凄まじく冷たい風が入ってきた。
『おい、いい加減諦めて出て行ってくれ。さもないと交番にお前を届けるぞ』
『ふん!出来るもんならやってみなさいよ。あたしはただじゃ動かないんだからね。』
そう言った彼女はその場に座り込んでしまった。
物は試しにと俺は片手に力を込めて彼女の首を持ち上げようとしたのだが………これは驚き!本当に動かねぇ。こいつ!
『いい忘れたけど何の能力もないあんたにあたしをどうにかしようだなんて無理よ!何て言ったってあたしは、超能力のエキスパートなんだから!』
…その後二時間くらい無駄な労力と知りつつこいつをこの家から追い出そうと必至にもがいてみた結果ウンとも寸とも云わず俺は遂にバテてしまった。
atik No.12049699 2012年11月28日 21:23:51投稿
引用
『ちょっと待て、俺はそこら辺にいるごく普通な一般人だぞ。そんな何の能力かわからんものを動かせって無理があるだろ!
第一にお前昨日から今現在に至って自己紹介の一つもしてないだろ。』
『……あんた本当に鈍感ね!あたしは知ってるから呼び出したのとばかり思っていたけど?』
…………いつ俺がそんなことを知る余裕が昨日あっただろうか?
『わりぃ俺は全く知らない所からいきなりお前が出てきたから全くお前のことはわからないんだ』
素直に自分の気持ちを伝えると相手は許してくれる。そう思って言ってみたものの、彼女は何故か俺が知らないという事実にショックを受けた為か急に目に涙を溜ながら怒った様子で、
『なんで知らない癖にあたしを呼び出したりするのよ!いくらなんでも失礼でしょ。』と俺をポカポカ殴ってきた。
……こいつ妹みたいで可愛いな。
多分こいつなりにかまって欲しくて、不器用だと知りながらも頑張って気を引こうとしているのだろうけど、基が不器用だからこれが俺じゃなくても誤解されちまうんだよな!。
atik No.12049726 2012年11月28日 21:52:23投稿
引用
『わるかったわるかった。俺が何にも知らないで呼び出しちまったのは謝る。
…だからお前も今更だけど自分の事を話しちゃくれないか?』
そう言うと、彼女は少し戸惑った感じで数秒間あらぬ方へ顔を背けていたが、その後諦めた様子でこちらを見つめたあと、
『仕方ないわね。一度しか言わないからしっかり聞いておきなさいよね!
いい?あたしはある企業から産まれたプロジェクトベビーって奴で、とある計画によりここの町に送られてきたって訳。
そしてそこの環境がどの様なものか知識を記録し企業に全貌を提出するの。
因みにあたしの名前は無いことも無いんだけど、こっちの世界だと発音しにくいからそこの共同者の名前をつかうしかないってこと!』
…成る程、それならこの娘が何者かわからないことになっているのも頷ける。
しかし名前が無いんじゃ今後どうやって生きていくつもりなのだろうか?
『なぁ?そのある企業とやらには連絡はつかないのか?』
……一応呼び出しちまったのは俺な訳だしその企業に話でもできりゃあこの娘を引き取るのも問題はないんだけど、もしもの為に連絡は取れないと色々まずい。
『まだ何の用意もしてないから連絡しようにも機械が無いのよ。』
atik No.12049756 2012年11月28日 22:23:52投稿
引用
企業様とやらは、子供をほったらかしてまた次の実験を繰り返しているのか!
『なのであんたに恥を忍んで命令するわ!あたしをあんたの家に住ませなさい☆』
さて、俺は一体この娘に何をしてあげれば良いのだろうか?
このままうちに住ませて厄介事でも起きようものなら絶対責任の半分は俺に来るわけだが、俺にはまだそんなことをする資格なんて持ってないし仮に、それができたとしても、絶対今より苦労は倍は増す。
『取り敢えず一週間くらいなら何とかできそうだけど、お前も一週間で他に住めそうな所見つけてそこで居候させて貰うって手はどうだ?』
『はぁ、あんたじゃそのくらいが限度ね!分かったわ。じゃああたしも一週間くらいなら準備も出来そうだしそうさせて貰うわ!』
交渉成立!そして…ある程度情報をここに来てGET!
かくして、この赤髪幼女とのハチャメチャな居候生活が始まろうとする訳だがまだ解決していない問題が一つ………
『……なぁ?お前のことはこれから何て呼べば良いんだ?』
『さっきも言ったでしょう?あたし達は住み着く現場の人から名前を得なさいって言われてるのよ?それであたしに聴くのはおかしいでしょう!』
…ふぅ〜む、この娘に合いそうな名前か!何が良いだろう?
『…小百合なんてどうだ?なかなか可愛らしい名前だと思うが!』
『……………………』
……沈黙してしまった!
atik No.12049775 2012年11月28日 22:54:41投稿
引用
もう少しましな名前ないの?』
…あっ!人が折角親切に名前を考えてやったのにこいつ仇で還しやがった。
『んじゃあ何が良いっつんだよ?ツンデレ幼女略して「つよ」にするぞ!』
『…今度は名前でも無くなってるし!』
…困ったもんである。こう言ったときにセンスが無いのは!
………すると妹が、『じゃあさ小百合とツンデレ少女合わせて「津百合」でどうかな?』
おお!でかしたぞ我が妹よ!
『…まだ臭い感じはするけど、まぁそれでいいや。…ただ名前は津百合って書いて「かなで」って読むでいい?』
ちょっとそれは無理があるだろ!………とツッコミたい気持ちを心のタンスにしまい込む俺!
『じゃあ、かなでちゃんこれからよろしくね☆』
『ええ、一週間程しかいないけど、こちらこそよろしく』
………妹とは仲がいいのに対し、俺はというと、
『別にあんたの為にここに住む訳じゃ無いんだからね!勘違いしないでよね!』
…っと早くもツンデレ発言をかましながら俺の鳩尾にダブルアッパーをくらわせるかなでだった。
そしてここからが、本当の物語の始まりである。