プロローグ
遥か昔、師団(ディーン・神使)と眷属(グレナダ・魔族)。
二つの軍勢があった。
師団は、「永遠の平和」、眷属は「恐怖による支配」を秘宝“ディセント”の使用目的とした。
対立した二つの軍勢は、この世界に伝わる秘宝の所有権を決めるべく、《神魔戦争》を繰り広げた。
長きにわたる戦争・・・・・。それは、眷属の軍勢が有する
《破壊魔神 瑠璃》 によって、眷属の勝利で収束しようとしていた。
だが、結果は違っていた。
戦争は、師団の勝利という形で終わったのだった。
何故、師団の勝利で終わったのか。
それには、師団が有する、《銀狼》・《鳳凰》・《陰陽師》・《覇王》・《緋色》。
この5人がいたからであった。
この5人の活躍により、《瑠璃》は封印され、一気に形勢逆転したのであった。
終戦後、秘宝は5人の魔力を源とし、世界は「永遠の平和」がもたらされた。
そして、全てが終わったのであった・・・・・・。
そう思えたが、違った!
戦争に敗れた眷属達は、再び《破壊魔神 瑠璃》を復活させ、師団から秘宝を奪還、そして世界を混沌へと堕転させてからの支配を目論んでいた。
「その前に邪魔者の排除が必要だな!」
そう思った眷属共は、遥か未来のこの地に聳える「ディセント魔法学校」の
生徒会役員に狙いを定め、時空を超えて旅立ったのであった。
そして、物語は現代へ移り変わる・・・・・・。
続け。
ぱんしろん No.12018647 2012年10月16日 23:39:43投稿
引用
ディセント魔法学校。
ここは、この世の秩序を乱す眷属を滅する“魔法使い マツギ”を育成する機関である。
(生徒会室)
「zzzzzzzzzz (静か)。」
仮眠用のベッドから安らかな寝息がする。
枕の上にあるのは長い銀髪。
その頭頂部がモゾモゾ動き、ピョコンと飛び出したのはあろうことか同色の毛に包まれた狼の耳だった。
「zzzzzzzzz(ほぼ無音)。」
仮眠どころか完全に熟睡しているこの青年こそ《銀狼》の子孫、
ヴォルフ・フランネルである。役職は会長。
「・・・・・んぁ?」
ようやく目を覚まし、ナイトテーブルから銀製の懐中時計を取って時間を確認する。
9:00
何度確認しても 午前9時は変わらない。
「うわっ、しまった!」
あわてて制服を着る。・・・・かと思いきや、
「まだ30分もある……。起きて損した。」
と、忌々しげに言った。そもそも今日は日曜日である。
この学校の全校生徒は、寮もしくは自宅で休日を楽しんでる筈だ。
・・・・・ヴォルフを除いては。
「こんな日に転校生・・・・・か。(誰かさんの)悪意しか感じねぇよ。」
ハンガーにぶら下がった詰襟の制服のポケットからチョコクランチを取り出し、
食べる。・・・・違う。 頬張る!
2個目、3個目と食べ進め、5個目を食べ終える頃には魔力の充電力が最大になっていた!
「んむぅ・・・。ヴォルフ〜。今何時・・・?」
「9時15分だ。起きろシルバー。」
「ふぁ〜。あいよ〜っと。痛てっ!」
ベッドから滑り落ちたのは白銀の仔狼。
こんな姿をしているが、れっきとした元・眷属である。
一万二千十七年前にフランネル家六代目当主に命を救われて以降、フランネル家に仕え続けている。
「あれ?ルシファーは?」
「また眷属の群れが出たらしい。今頃、魔王の悪口で盛り上がってるだろうな。」
「マジで人望無いんだよな〜。アイツ(魔王)って。
最早、『肩書だけの存在です。』だからな。俺らの方が魔王に向いている。」
このとんでもなく酷い衝撃発言。実は的を射ている。
魔王に愛想を尽かした眷属達は新たな主人を求めてこの世界にやって来る。
それらを使役する制度が《使い魔(ファミリア)》である。
「・・・・それ良いな。今度魔王が来たらフルボッコにして、次期魔王の座を頂く。そうすれば世界は平和だ。」
「あ、それはいい考えだな!」
楽しそうに腹黒い会話をしながら1人と1匹は校長室へと向かった。
1−2に続け。
ぱんしろん No.12018661 2012年10月16日 23:44:05投稿
引用
(校長室)
「・・・・・・・・・・・・・」
黒髪黒目の青年が緊張した面持ちでソファーに座っている。
「ジーク君・・・・だったね。そんな緊張しないでお茶でもどうだい?
あ、それともコーヒーが良かったかな?」
困ったような笑みを浮かべるのは神父服に身を包んだ20代の男性。
クリーム色の長髪を垂らしている。
「お気遣い有り難う御座います。フレデリック・ワーリック校長。」
「私をフルネームで呼ぶとはね・・・・。『フレディ校長』でいいよ。
どーも、私は固苦しいのは好かないのでね。・・・あ、もうそろそろ来るよ。」
「『来る』・・・?誰が来るのですか?」
「フフ・・・。ヒ・ミ・ツ♪♪」
悪戯っぽく笑う校長。・・・・さぞや女性にモテることであろう。と。
バガァンッ!
校長室のドアが遥か彼方に消し飛んだ。
「っ!?」
「流石V10(最高レベル)! 登場も豪快だね〜!」
ジークは目を疑った。目の前にいる細身の美丈夫(※ヴォルフのことです。)が頑丈なドアを「ぶち抜きましたが、何か問題でも?」とばかりに手を叩いて埃を払っているのだから。
「ジーク君、彼がこの学校の生徒会長のヴォルフ・フランネル君。
今日一日彼が校内を案内してくれるよ。」
「よろしくお願いします。」
「ジーク・アトリオットか。セントアレックスではかなりの使い手だったのに、ディセントに来たって事は魔力の素質があるってことか・・・。」
不機嫌そうに早口でそう言い、ヴォルフは睨むような目つきでジークを見た。
「こらこら、折角の美形が台無しだよ?」
校長が苦笑する。
「俺の崇高な日曜の惰眠を邪魔するようならセントアレックスとの交流試合で向こうの校長のプライドを完膚無きまでに粉砕する。」
地の底から響くような呪詛を吐く。眠れる狼を叩き起こした罪は大きい。
「まぁまぁ、落ち着いて。まずは教室から案内してあげてね?」
「・・・・了解。あ、転校生の住処はどうします?生徒会寮にしか空き部屋はありませんけど。」
「じゃあ、生徒会寮で。」
「いや、断言されても困るんですけど。
俺、来栖、桜は事情が事情だからいいですけどね。・・・あ。じゃあ、条件付きならいいですよ。」
「・・・・条件ですか?」
ジークが聞く。
「そうだ。雑用や荒事・厄介事担当の『庶務手伝い』を引き受けてくれるなら、もれなく空き部屋プレゼント!
どうだ?この話に乗るか?」
ジークは暫く考える。
その結果、「住居無しは困る!」という結論に達し、
「その話乗りました。」
「よし。じゃあ、まずは荷物の整理からだ。寮はこっちだ。ついて来い。」
シルバーを従え、寮に向かって歩き出す。
1-3に続く
ぱんしろん No.12018670 2012年10月16日 23:46:59投稿
引用
(生徒会寮)
二階建ての広い家の前に鴉が居る。
王冠のような黄金の飾り羽が印象的だ。
「お、ルシファーか。何だ、もう帰っていたのか。」
「・・・申し訳ありません。私がもう少し早く戻っていれば・・・。」
鴉が闇色のオーラに包まれ、その姿を執事服の青年へと変化させた。
「・・・・。一体、何があった?」
「眷属の襲撃により、来栖様、ウィンター様、夜伽様が連れ去られました。
辛うじて使い魔と桜様は操られる事無く、中にいます。」
「・・・・そうか。で、今回の案件に魔王の絡んでいる可能性は?」
「0%と言って良いかと。」
ルシファーと呼ばれた青年は即答。
「犯人の正体は分かるのか?おまえ。」
「竜悴公姫(ドラキュリア)です。奴の術で精神操作を受けています。」
「面倒だな・・・。とっとと滅さないとな。」
軍人さながらの戦術予測を行うヴォルフ。
「六華とメルの力がいる。それと・・・・。」
シャランッ
「貴様のような下等生物が俺の使い魔に化けるんじゃあねぇぇぇ!!!」
ザシュッ!!
細身のレイピアを抜き、ルシファーを斬る!
「ギャァァァァァァァァァァァァァ!!!?」
ありがちな断末魔の後に残ったのは、
真っ二つに引き裂かれた小さな蜥蜴。
変化を得意とする下級眷属『鏡蜥蜴(ミラー・リザード)』だった。
使い方によっては史上最強の影武者となる汎用性の高い奴である。
「フランネルさん・・・。何故、コイツが偽者だと・・・・?」
「・・・ヴォルフでいい。香水だ。ルシファーは俺の好みの香水をいつもしている。
だが、今のコイツからは俺が最も苦手とする匂いがしていた。それだけだ。」
鏡蜥蜴の死体からは、ベリー系の甘い香りがしていた。
ヴォルフは不快そうな表情で血払いをして、レイピアを鞘に収めた。
「さてと・・・・。悪戯が過ぎるお姫様を放置しておくわけにはいかないな・・・・・・・。」
そう、言ってヴォルフは生徒会寮を後にする。
一人残されたジークは,『イノセントの瞳(通信アイテム)』で誰かと通信していた。そして通信を終えてから、
「・・・・・・。沙羅は計画通り動いてくれているようだ・・・・。早く真の黒幕を暴いて、倒さなきゃな。じゃないと世界の平和は訪れないからな。」
そんなことを呟いてから、ヴォルフの後を追った。
1−4に続く
ぱんしろん No.12020930 2012年10月18日 22:58:02投稿
引用
(生徒会室 聖域)
インターホーンを押す。
「桜、開けてくれ・・・。」
無言。返事が無い・・・。
「愛してる。結婚しよう。」
「3秒待て。」
ぱちん。
聖域の結界が解除された。
「ヴォルフ!お前のことが私は好きだ!だから、この戦いが終わったら、私と結婚して!」
「嘘だ。俺には婚約者が既にいる。諦めろ。あと、お前とは結婚しない。」
バッサリ斬り捨て、更に、プロポーズ拒否という迎撃。容赦なし。
「ぶー。(拗ねている。)ヴォルフは、いっつも、こうなんだから・・・。」
10歳くらいの少女が涙目でヴォルフに抱きつく。
「・・・全く。俺が居ない間にこれだけの惨状を作るとはな。後で、全員説教だかんな。」
「うぅ〜・・・・・。」
「ま、このメンバーなら大丈夫だろ。問題ない。何より俺の能力は応用が利く。」
「でも・・・ルシファーが操られてる。ほかの使い魔を守って・・・。」
「・・・そうか。流石、俺の使い魔。自らを犠牲に手駒を残してくれた。」
胸元のポケットからルームキーを取り出し、自分の部屋へ向かおうとするヴォルフを・・・
「この人で無し!」
ジークが全力で殴った!
「・・・・・っ!」
殴られた頬が赤く腫れ、口の端から血が垂れる。
「・・・・そんな言い方無いでしょ!?まるで、チェスでもしているような・・・。自分の使い魔が大切じゃないの!?まさか、本気で『使い魔は奴隷』とか思っているんじゃないでしょうね!?」
「思ってねぇよ!大事に決まっているだろ?たとえ、元・魔王の側近頭でもな!だからこそ最善の策と戦力で取り戻す!わかったか、この新入り!ああ、それと・・・。」
今まで隠していた耳と尻尾を出し、自嘲気味に笑う。
「俺は人間じゃない。いわゆる、化け物と言う奴だ。」
血を拭い、腫れた頬を軽く摩ると傷が消えた。
「今日は忙しくなる。気合い入れていけよ。新入り。」
そう言うとさっさと自室へ引っ込んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。(゚д゚lll)」
呆然と見送るジーク。どうやら本気で人間だと思っていたようだ。
「・・・・全く、相変わらずね、蒼紗(そーしゃ)。全く、これじゃあ何の為に正体隠してんだか・・・・。」
桜は、呆れながら蒼紗(ジーク)の肩に手を置く。
「う、うるさいわね。正体ばれなかったんだから、いいでしょ。凪沙。」
蒼紗は、少し拗ねた表情で答えた。
凪沙(桜)は、溜め息をつき、
「正体がバレたら、どうなるのかわかっているよね?」
と、蒼紗(ジーク)に聞いた。
「わかっている・・・。」
「そう、ならいいけど。…で、例の計画は上手く行っているのかしら?」
「さっき、沙羅から連絡があって、『順調に計画通り進んでいます。今のところ、問題なし。』だって。」
「そうか。なら特に対策はいらないな。じゃあ、そろそろ行かないとね。」
「そうね。」
二人は聖域を出て、ヴォルフの後を追った。
1-5に続く。
ぱんしろん No.12026829 2012年10月25日 23:27:05投稿
引用
(転送室)
「遅い!何やってんいるんだ。時間が無い。ぐずぐずすんな。」
転送室に到着した桜とジークを待っていたのは、怒り心頭のヴォルフ。
「すまぬ。」
「すみません・・・。」
取りあえず謝る二人。
「まぁ、いい。とっとと行くぞ。」
「「「はーい。」」」
四人は転送ポートに乗り、どこかに転移した。
(学園郊外の荒野)
「ここか、竜悴公姫の居城周辺は。」
「・・・そうみたいですね。」
「で、城までの距離と敵の反応は。」
「距離は、ざっと200kmぐらいかな。
あと、敵の反応は大量ですね・・・。」
「そうか・・・。」
ヴォルフとジークは取りあえず状況確認をする。
「で、フォーメーションはどうするのよ?」
「そうだな・・・。この状況から見て、二手に分かれて攻めるのが妥当な案だろうな。」
「そうね。それが一番良いと思うわ。で、その組み合わせはどうするのよ。」
「『俺・桜&ジーク』でいいだろ。おい、シルバー。」
「わかったー。オレは、桜たちと行動すればいいんだな。でも、ヴォルフ一人で大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。問題ない。俺を舐めているのか?」
「いや。そんなことはないぞ。」
「異論が無ければ、行動を開始する。準備はいいな?」
「おう。」
「ええ。」
「じゃあ、散開!!」
1−6に続く。
ぱんしろん No.12036806 2012年11月08日 00:57:05投稿
引用
(とある古城)
「おーい。沙羅!いるのか?」
蒼紗はとりあえず呼んでみた。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
返事が無い。
「あれ・・・・?いない。どこ行ったんだろ?」
蒼紗はそう言って辺りを見渡す。
だが、誰もいない。
「どこか、他の所に移動したんじゃないの?」
凪沙は嘆息混じりに答える。
「そっか。でもどこに・・・・?」
「知らないわよ。そんなの。」
二人がそんなやり取りをしていると、イノセントの瞳が鳴った。
「通信・・・・。あ、沙羅からだ。」
「早く出てよ。」
「ええ。」
蒼紗は通話ボタンを押し、通信に応じる。
「もしもし。沙羅?どこにいるの?」
「おお、やっと出たか。早く座標2347.4532に来てくれ。大至急じゃ!」
「なんで!?」
「いいから早く来るのじゃ!!」
ツーツーツーツー
通信は切れてしまった。
「で、なんだって?」
「座標2347.4532に大至急来いってさ。」
「ふーん。じゃ、行きましょう。ここにもう用は無いのだし。」
「そうね。」
二人は、指示された座標へと移動した。
(座標2347.4532)
「おまたせ。一体何が。」
「あ、主人(マスター)。どうやら、暴走が始まったようです。」
凪沙の質問に副会長の夜伽 満月(よとぎ みつき)が答えた。
「先程、始まったから、もうこっち来るのも時間の問題かな?」
そう言ったのは会計の来栖(くるす)。
「また、銀色の閃光。これで4回目。」
そう言ったのは書記のロザリー・ウインター。
全員の視線の先には、銀色の閃光。
そして、灰色の閃光。
銀色の閃光。それは、ヴォルフ。
灰色の閃光。それは、死亡した眷属。
生徒会メンバーは、体内に宿す眷属の力を抑える為、リミッターを着用している。
それは、正規の方法で解除しないと、暴走する。
つまり、何らかの原因でヴォルフのリミッターが壊れた。そして暴走。
暴走状態である時は、ある相手を殺すまで破壊し続ける。
そして、今回のその相手は、沙羅。
つまり、一直線にこちらへ向かっている。マズイ。
「・・・で、シルバーとルシファーは?」
「もうとっくにヴォルフに吸収されておる。」
「マジ・・・・?」 蒼紗は聞く。
「・・・残念ながら。」ロザリーが答える。
眷属を吸収するとより真の力を発揮できる。要は、フルパワー。
かなりマズイ。
「で、止める方法は?」
「一つしか無いじゃろ。全員で奴を拘束するしかないじゃろ。」
「そうか。じゃ、頼むよ。沙羅。」
「わかっておる。全解禁。」
「アンリミテッド・バースト、《鳳凰》。」
「アンリミテッド・バースト、《天空》。」
「アンリミテッド・バースト、《斉天大聖》。」
「アンリミテッド・バースト、《緋炎龍》。」
「アンリミテッド・バースト、《瑠璃蒼月》。」
沙羅の呪解法印で全員の力が解き放たれる。
ちなみに、今行った「呪解法印」こそが「正規の解除方法」である。
「で、最初は誰からよ。」
凪沙が聞く。
「私が行く・・・・。」
答えたのはロザリー。
「頼んだよ。」
「任せて。」
そう言って、ロザリーは、銀色の閃光の光源へ向かった。
1-7に続く。
ぱんしろん No.12056520 2012年12月11日 00:50:52投稿
引用
(とある場所)
「やっと、見つけた。ヴォルフ。貴方をこれ以上進ませるわけにはいかない。」
ロザリーは、ヴォルフを見つけ、ヴォルフの行く手を阻む。
「ソコヲドケ。デナケレバ貴様ヲ殺ス。」
ヴォルフはそう言って、レイピアでロザリーの心臓を狙おうとする。
「話し合いでは解決しないか・・・・・。」
ロザリーは溜息混じりに言ってから懐から如意棒を取り出し、防御。
「くっ・・・・。重い・・・!」
ヴォルフの一撃をなんとか受け止め、ヴォルフに跳ね返す。
だが、ヴォルフには当たらなかった。
ヴォルフは躊躇なく次の一撃を放つ。
「雷迅覇」
ヴォルフはレイピアから作り出した、雷の衝撃波を放つ。
ロザリーは、最初の1つはなんとか回避した。
だが、2つ目、3つ目は回避できず、モロに喰らってしまった。
「———————っ!!!!」
なんとか、死なずに済んだが、体中が麻痺してしまった。
多少なら、動くことができる。
だが、動作制限は痛い。
あと1手。おそらく動けるのはそれだけ。ならば・・・・・!
「・・・決着。紅天幻衝」
ロザリーの如意棒から極大のレーザーが照射される。
ヴォルフはレイピアを収め、大矛を取り出し、構える。
「魔断十六夜斬」
ヴォルフは、レーザーを物ともせず、大矛でぶった斬った。
15に分割されたレーザーは分散し落下。
各地で、爆発が起きた。
そして残る一つはロザリーに向かってくる。
ロザリーにはもう防御する力は残っていない。
—やられる!!
そう思って、目を閉じた。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
長い爆発音。
「自分は死んだのか・・・・・。」
ロザリーはそう思った。
そして、恐る恐る目を開ける。
生きていた。自分は死んでいなかった。
ロザリーの目の前には、蒼い炎の防御壁が展開されている。
どうやら、これで自分は助かったらしい。
「大丈夫か。ロザリー。」
防御壁でロザリーを助けた人物は、そう言ってロザリーの方を振り返り微笑む。
「ええ。なんとか。ありがと。もう、遅い!蒼紗。」
泣きながら、お礼を言って訴えるロザリー。
「ゴメン。離脱できる?」
「うん。なんとか。」
「じゃあ、あとは私に任せて。」
「うん。」
ロザリーは会話のあと、離脱した。
防御壁が解除される。
「何人コヨウトモ結果ハ同ジダ。」
ヴォルフは、レイピアを抜き、再び、あの技を繰り出す。
「雷迅覇 双撃」
今度は先程の2倍。
4つの衝撃波が繰り出される。
蒼紗は一息つき、静かに日本刀を抜いた。
「蒼迅覇」
蒼紗は日本刀から作り出した、蒼炎の衝撃波を放つ。
蒼炎の衝撃波は、いともたやすく雷の衝撃波を粉砕し、ヴォルフに命中。
ついでにレイピア破壊。
「馬鹿ナ・・・・・・!我ガ剣ガ破壊サレルトハ・・・・・・。許サン・・・・・・・。」
再び、大矛を取り出す。
「魔天幻衝」
どす黒いレーザーを放つ。
「顕れたまえ。伊弉那岐(イザナギ)。」
詠唱呪文と共に蒼紗の手に三叉大矛が顕現する。
蒼紗は、さらに詠唱を続ける。
「この世に存在しせし蒼炎よ。悪しき者を劫火で滅し、汚れた魂を浄化せよ。蒼天幻衝」
蒼いレーザーが放たれ、黒いレーザーを粉砕し、ヴォルフを包み込む。
「今じゃ!封殺!」
天空から声がして、ヴォルフの体に魔力制御の輪が装着される。
そのまま、気絶してしまったヴォルフを抱え、蒼紗は言う。
「帰ろう!私たちの生徒会室へ。」
そして、その場から離脱する。
こうして、一連の事件は終わりを告げる。
だが、これは大きな事件の序幕であった。
(第1章終 第2章に続く)
2−1に続く。
ぱんしろん No.12194562 2013年11月25日 23:05:40投稿
引用
2-1 近づく刻
ヴォルフ達が暮らすウェスティアーナ。
それと同じ時間軸に位置していて、正反対に位置する日本。
普段は、繋がることのない二つの世界。
だが、数年に一度世界は繋がる。
それは、眷属にとっては都合のいいことであった。
なぜなら繋がっている状態の脆くなった時空間の壁を破壊すれば、
その世界は消滅するからである。
そこを狙って、毎回毎回眷属の大群が2つの世界に侵攻する。
だが、「正反対から召喚されし人間」と「その国の統べる者」がそれを阻止していた。
これにより、二つの世界は保たれている。
そして刻一刻と「その刻」が近づいていた。
それは喚ばれる人間が選別される始まりの合図でもあった。
(2ー1 完。 2ー2へ続く。)
七海蒼 No.12237902 2014年04月24日 19:51:23投稿
引用
(学校近くの森にある石碑前)
ヴォルフ暴走騒動から数日後。
蒼紗は学校近くの森の奥深くにある”預言の石碑”の前に来ていた。
「確か何年か前に起きた事件の時もここに書いてあることが現実となったんだよね?六華様。」
「・・・・ああ。」
上級眷属の1人で九尾の狐の六華は答える。
「どうですか?接触感応(メトラリング)の結果は。」
「・・・・・・・。」
石碑に手を添えたまま六華は答えない。
「六華様?」
蒼紗が更に言葉を紡ごうとすると、
「少し静かにせんか!まだ接触感応の途中じゃ!もう少し待っておれ!」
怒られたwwww(´・ω・)
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
「ふぅ・・・。ま、こんなもんかの。大体は読み終えたし。」
六華は石碑から手を離すと一息を付いた。
「で、これに一体どんなことが書いてあったんです?」
改めて尋ねる蒼紗。
「”和平の世界に生まれし混沌広がりし時、破滅の王復活しせり。
時空間の壁歪みし時、正反対の世界より少女、天空より飛来しせり。
(たぶん降るか落ちてくんじゃね?そこらへんはランダム)
その少女、女神率いてこの世界救う。”・・・・・」
先程読んだ内容をそのままで答える六華。
「なんか、一部分だけえっらい投げやりになってません?ガチで。」
思わず突っ込んでしまった蒼紗。
「うーん。ま、そこはスルーでいいじゃろ。ほら、『突っ込んだら負け』みたいな?」
「あー・・・・。うん。ソウデスネー。」
六華の弁明に半ば棒読みで答える蒼紗。
「で、話戻して、要約するとどういう事なんですか?六華様。」
「そうじゃな・・・・。
『世界の平和を乱す存在復活
↓
時空間の壁歪む
↓
正反対の世界から少女が兎に角落ちてくる
↓
少女、女神率いて戦う
↓
世界に平和戻る
↓
めでたし、めでたし。』
・・・・・・・・って、ところじゃろ。簡単に言えば。」
すらすらとまとめて要約して説明。
「そうですか・・・。でも六華様・・・。」
何かまだ納得がいかない表情で尋ねる蒼紗。
「うん?まだなにか納得がいかないのかや?」
「『正反対の世界』って一体どこなんでしょうか・・・?」
「そうじゃなぁ・・・。時間軸が同じで正反対な所で言ったら、『人間界』の『日本』じゃろう。」
「『日本』ですか・・・。」
「そう、『日本』。」
((2‐2 完。 2‐3に続く))