法廷バトルという新ジャンルをうち立てた、人気シリーズ第2段。弁護士・成歩堂龍一(なるほど・りゅういち)として、検事や証人と丁々発止のやり取りを繰り広げながら、絶体絶命の状況から依頼人を助け出し、事件を解決していく。2002年にGBA版で発売され、2006年にDSに移植。今回ベストプライス版となり、さらに入手しやすくなった。
証人の心の扉を開く「サイコ・ロック」システムなど、若干の変更はあるが、おおむねゲームシステムは前作が踏襲されている。収録シナリオは全5本。前作でライバルだった御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)に変わって、新たに検事として狩魔冥(かるま・めい)が登場。登場キャラクターもさらに濃く、リアクションもオーバーに、ハッタリやツッコミを駆使した応酬も熾烈になった。
アドベンチャーゲームの開発は、グラフィックとシナリオが中心で、それほど開発スキルが問われない。本シリーズの価値は、この常識を覆した点にある。ボタンの反応や、映像・音声の同期が秀逸で、まるでアクションゲームを遊んでいるかのよう。リズミカルにテンポよく進むストーリー展開は、まさに職人芸だ。だからこそ細部のウソや矛盾が目立たない。ハリウッド映画などと同じく、一流のエンターティメントにはリズムとテンポが最も重要なことを、ゲームというメディアでよく示している。
DS版「1」には、「1」と「2」を繋ぐミッシングシナリオ「蘇る逆転」が収録された。しかしDS版「2」には英語版が収録されたのみで、GBA版と比べて追加要素はない。そのためGBA版でプレイしたユーザーには、本ゲームは勧めにくい。逆に未プレイの方には、ぜひDS版の「1」「2」を同時に遊ばれることをお勧めする。「2」のエンディングでホロリとさせられることは確実だ。ベストプライス版の意義はそこにある。
ちなみに2007年春には最新作「4」がDSで発売される。残念ながら「3」はGBA版のみで、DS版は未発売だ。GBAよりもDSの方が遊びやすい。ぜひ「4」にあわせて「3」のDS版も発売して欲しいところだ。
(小野憲史/1971年生まれ。「ゲーム批評」編集長を経て、フリーライターとして活躍中)