初投稿だからってちょっと妥協気味な訳だけど、ちゃんと真剣に書いているからご安心。
誤字や、脱字は御愛嬌だから生温かい目で見守ってもらえれば嬉しいかな。
多分、面白くないと思うから最初のトコで判断してスルー方向でお願いね。
感想は小説の感想スレへどうぞ。
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ゆっぺんさん No.10767218 2011年03月05日 22:46:10投稿
引用
普通、人には『飛ぶ』という概念は存在しない。
人は『落ちる』や『浮く』という概念しか存在しないものだ。
例え、人が空中へと飛んだとして、次に起きるのはただの落下。
それが人の宿命なのだろう、紛れもない事実だ。
もし、飛ぶことができる人間がいるとしたら。それは多分人間じゃない。
少し話を戻そう、そんなことを考えている僕は一体何がしたいんだろうか。
——そんなことを考えていた僕は今、空を切り、地面へと頭から落下した。
鈍い音と共に僕の身体は地面へと衝突し、全身に強烈な痛みが走った。
視界に深紅の液体が飛び散り、頭蓋骨が大きな音を立てて砕けたような気がした。
否、そうなったのだろう。
頭蓋骨骨折、脳震盪、それ以前に僕の身体はぐちゃぐちゃになっているだろうな。
死んだ、そう思った。死ぬと思ったから落ちた。
肢体から力が抜け、身体中から血の気が引いたようだった。
ゆっぺんさん No.10769124 2011年03月06日 18:18:18投稿
引用
誰もここに来ないことを願うだけだ。
よく死ぬ時には、走馬灯が脳を過るらしいが、そんなことは起こらない。
少し期待外れだった。
僕の命も後僅か、微かに燃える命の灯もあと数秒で消えるだろう。
身体を這い回るような強烈な痛みと、妙な悪寒が如何にも生々しい。
でも、何か可笑しい。身体中の痛みが、何だか引いていくような気がする。
否、気のせいじゃない。痛みが段々と治まり、薄れていた意識も戻っていくような
味わったことの無い、えも言われぬ感覚が身体を駆け巡る。
力の抜けていた指も、今は少しだけ動かすことができる。
憶測だけで考えるのはあまり気が進まないし、
こんな如何にもSFファンタジーみたいなことがありえるはずが無いと思いたい。
鉄の味が広がった口を動かして、自嘲気味に一言呟いてみた。
「僕ってもしかして、人間じゃない?」
誰もいない虚空へと同意を求めた。
ゆっぺんさん No.10769202 2011年03月06日 18:37:54投稿
引用
只今、五月上旬、暦上では立夏という夏が訪れる辺りの頃だ。
丁度、春休みが終わり、新クラス、新学校に馴染み始めるこの時期だが、
僕に限ってはこの上なく、面倒な時期だ。
毎年、例年通りクラスで浮き彫りになっている生徒を
友達に誘うグループが沸く頃だ。小学から中学まで毎年同じだ。
そして、それは高校になっても同じ、推測は現実となった。
高校入学しても、ここまで友達を作りたいと思うのだろうか。
僕にはそれが一ミリも理解できない、人と信頼関係や、友好関係などの構築の
意味が理解できない。
たった一人でだって何不便なことは無い、今までそうだったように、これからもそうしていきたいと思う。
そう一人が良い、それなのに何故——
ユウヒイン
「ねぇ、夕日院君」
——声をかけてくるのだろうか。
鈴のような声に、僕は視線を窓から声の主へと合わせた。そこには一人の少女。
小柄な身体と、栗色の髪が特徴的な彼女は多分、僕の隣の席に居る人だろう。
名前なんて覚える気は無い、馴れ合いなんてする気も無いし、
一人で居たいから。でも何でだろう。
「なんだい?」
返事してしまうんだろう。それは多分彼女のせいだ。
小柄なのと栗色の髪が特徴と言ったのに、一つ追加内容が増えたようだ。
ゆっぺんさん No.10770272 2011年03月06日 22:10:50投稿
引用
雪のように白い肌に、栗色の瞳、形の良い眉に、色のいい唇。
何処かあどけなさの残る顔つきは、見た人を恋に落とす位の可愛さ。
だと、僕は主張する。憶測だが、熱狂的なファンが
存在しそうなレベルに達している。
なのに、彼女には大凡、友達と呼べるものが存在しない。
僕の見解では、女子からは嫌われているようだ。
理由は解らないが、何か事情があるらしい。
否、そんなことは円周率並にどうでもいい。
多分、僕が彼女の問いにだけ応答してしまうのは、彼女が可愛いからなのだろう。
「また一人で居るの?昼休みなんだから、誰かと机並べて、
一緒にご飯食べたらいいのに」
また彼女が口を開いた。綺麗な微笑みと共に。
「そんなの僕の勝手だろ、一人がいいんだ」
「なら、私と一緒に食べよ。私、今一人だし、
まだ食べてないし。持ってくるわね」
「おい!ちょっと……」
ゆっぺんさん No.10775731 2011年03月08日 21:33:07投稿
引用
踵を返し、弁当があるであろう、ロッカーまで小走りで走って行った。
取り残された自分は虚しさだけが残り、渋々、鞄から弁当を取り出した。
彼女が帰ってくると、机を向かい合わせにして、弁当の蓋を開いた。
殺風景すぎる弁当は、絵に描いたような、ご飯の上の梅干しと、
卵焼き、唐揚げという定番だった。
対して彼女は、まるで御節のような重箱に入れても批判は無いと思うくらい。
むしろ、重箱に入れた方がいいと思う位の出来だ。
カラフルに彩られた中身は、もはや神の領域と言っても過言ではない程、
自分との歴然の差、多分三〇倍程の腕前だろうか。
考えてるだけで、自分のレベルが如何に低いかと思い知らせれる。
「あら、どうしたの?もしかして、料理スキルの歴然の差に
引け目を感じたとか?」
図星だった。かなり痛い所を突かれてしまった。
「男が料理上手くなくなっていいだろ?
昼食は殆ど、インスタントで済ませてるし、料理なんてあんまり必要ないだろ。
ていうか、お前は自分自身で、料理が上手いと言っているだぞ」
「ということはその弁当は毎朝、夕日院君が作っているわけね。
因みに私は料理が上手いわよ。神々しい程にね」
ユウミ ヒナノ
どうやら、彼女——悠美 陽菜野は、自意識過剰らしい。
ゆっぺんさん No.10775832 2011年03月08日 21:56:51投稿
引用
「そうなのね。じゃあ、お手並み拝見といきましょうか」
彼女は徐に僕の弁当箱へと箸を伸ばし、流れるような動作で卵焼きを掴んで
口へと運んだ。
たった、二秒くらいだったが、僕は何も手を出せず、呆けていた。
眉を寄せ、どうやら僕の卵焼きの味を確かめているらしい。
数秒後、飲み込んだ卵焼きの感想を教えてくれた。
「な、中々やるわね、でも、わ、私の作ったものの方が美味しいわよ」
「焦っているところから見ると、お前自分のほうが負けたと思っているんだな」
「そんなわけあると思う?高が、夕日院君が私に勝てるとでも?」
「何だそのあからさまに人を見下した言い方は」
「だってそうでしょ?夕日院君は私には、日本海溝と、成層圏並の
力量の差があるのよ。もしかして、気付いていなかった?」
悠美に友達が居ない理由が今、理解出来た。
外見の可愛さとは裏腹に、内面的問題が存在するからだと、推測した。
ゆっぺんさん No.10780848 2011年03月10日 16:46:48投稿
引用
落胆して、肩を落としている僕には目もくれず、
食事に専念している悠美を一瞥して、僕も食事に専念することにした。
因みに僕には、二歳年下の妹がいるが、
弁当など作ってくれる筈も無く、
虚しくも、毎朝二つの弁当を僕が作る羽目になる。
なんていうか、悲愴だな、僕は。
荒野に咲く一輪の花のような気分だ。
「貴方の場合は、荒野に転がる一つの屍じゃないかしらね」
「それってもう悲愴じゃないじゃん!!僕ってそんなにお粗末な存在だったんだ。
ていうか、何でお前は僕の考えていることを読めるんだ!?」
当然なる疑問だった。
「貴方の存在なんて儚げなものよ、美しくも何ともないわ。
私より思考能力が格段に低い貴方の行動パターンや、
思考パターンぐらい、簡単に読むことができるわよ」
「超人かよ、お前は」
どうやら、こいつは超人らしい。
まぁ、僕が言える立場じゃないけど。
ゆっぺんさん No.10782777 2011年03月10日 22:31:29投稿
引用
「今度はまさかの神様発言ですか。
お前は人間の枠に収まりきらず、一線を越えちゃったわけか」
「まぁ、嘘だけど」
「やっぱり、嘘なのか」
嘘だった。ていうか、想像通りだった。
「貴方は私を信頼していないのね」
「僕は誰も信用しない。僕は誰とも友達みたいな、
馴れ合いとかの関係を構築する気は無い」
「随分と冷たいこと言うのね」
これは本当だ。この僕の経験上、そんな関係を作ったとして、
最終的には裏切られる。当然の結果だろうな。
例外だって居るかもしれない
裏切らない奴だって居るかもしれない。
でも、それは超少数派の意見であって、
世界に一握りも居ない人種のことだ。
僕は、今までの短い人生で、考えたのはやはりそれだった。
誰とも関係を持たなければ、自分への反動も無くなる。
この街では、この様な思考を持った人間は、大勢居ることだろう。
なぜなら、この街で、生き残る方法はそれだけだからだ。
ゆっぺんさん No.10786628 2011年03月11日 21:26:20投稿
引用
弁当を処理するように食べた。
無言という状況が、居心地悪くて、僕から言葉を紡いだ。
「それでさ、最終的にお前は僕に何か、用があるのか?」
「あると言えばある、無いと言えば無い」
実に曖昧な返答だ。生返事みたいなのに似ている。
「実は、相談事があるのよ、貴方に」
ちゃんと用があるじゃないか、と言いたかったが、
口に出すと、また罵詈雑言で罵られるので、言葉を飲み込んだ。
「私の父を救って欲しいの」
「は?」
呆れたのか、驚いたのか、自分でも意味の分からない溜め息をついた。
そんなイマドキのドラマみたいな展開は必要無いなんて、考えもしてみる。
「私の父は、この街のヤクザの一味に誘拐されたの。
どうやら、身代金目当てだったみたいね」
「でもさ、そういう身代金目当ての誘拐ってさ、
普通はさ、娘とか、息子とかが誘拐されるんじゃないのか?」
「それは多分、私の最強っぷりを知って、標的を変更したんじゃないかしら」
やはり、こいつは自意識過剰なのか?否、誇大妄想なだけか。
「それも嘘だけど、理由は分からないわ」
「お前はさっきからそればっかりだな。
ていうかさ、何で警察には相談しないわけ?それは、お決まりの理由か?」
ゆっぺんさん No.10786656 2011年03月11日 21:31:27投稿
引用
「ほら、よくドラマとかである『警察にチクッてみろ、こいつを殺すぞ』みたいな理由か?」
「まぁ、簡略的に言うと、それに近いわね」
「そうなのか。だけどさ、それをなんで僕なんかに相談したんだ?
僕なんか、何の役にも立ちはしないぞ」
「役に立たない訳はない」
「なんでさ、こんな僕みたいな、平凡の代表みたいな僕にさ」
彼女は、僕がそう言うと予測していたように、
携帯を取り出して、弄りだした。
探していたものがあったらしく、彼女はあるページを僕に見せた。
そのページには、『都市伝説』というものが書かれれいた。
これは、所謂、噂みたいなものだ。都市であった、目撃情報とかから、
架空の団体や、人や、怪奇現象とかのいわば伝説のようなものだった。
でも、この街においては、その話は実在の話と化す。
この街は特別だ、ここに住む人も、ここの暮らしも。
ページに書かれていた内容は『不死身の男』そういう見出しで書いてあった。
少しだけ驚いた、その情報は正しく僕のことだ。
「これ、貴方でしょ?」
「違うけど、何でそう思うんだ?」
確かにこれは僕だが、易々と赤の他人に教えられる個人情報じゃない。
これは親にだって隠していることだ。今まで誰一人にも教えたことはない。
「惚けないで。私は見たから」
正直見られた、というのは心外だった。
本当に死なないのかを試すために、僕は何度か自殺している。
でも、それは全て未遂で終わったけど。
動揺しているのを、顔で出さないように返事を返した。
「何時、何処で?」
「丁度、一ヶ月前ぐらい、この近くの廃ビルで、飛び降りたでしょ」
驚愕した。本当に見られていた。確かに僕は、一ヶ月前、飛び降り自殺をした。
これも未遂だけど。ていうか未遂にしかならないし。
僕は暫し、沈黙した。ここまで正確に知られていては、
嘘を突き通すことも難しい。こんな、初対面に等しい奴に、
大事な秘密を教えてしまってもいいのだろうか。
ゆっぺんさん No.10791202 2011年03月12日 21:31:54投稿
引用
「確かに飛び降りた。でも、見られていたのか。
ちゃんと周囲を確認して、万全な状態で落ちた筈だったんだけどな」
「普通に道を歩いてだけなのに、見つけられなかったの?
貴方の目は節穴?それとも、馬鹿なだけなの?」
「さっきから思ってたが、お前は一言何か多いんだよ」
拳を握って、怒りを表現しつつ、悠美を睨みつける。
当の本人は、平然と、冷淡な口調で喋りだす。
「それで、夕日院君は協力してくれるの?
無論、夕日院君には、拒否権は存在しないわ」
「無論じゃねぇよ!強要させる気か!」
「何言ってるの、それ以外何があると?」
妖艶に微笑んだ彼女は、僕を罵倒することしか考えていない様だ。
この女は、僕の推測的にサドだな。いや、絶対。
ゆっぺんさん No.10795963 2011年03月13日 22:41:13投稿
引用
一度深呼吸をして、言葉を紡ぐ。
「でさ、何で僕が必要なんだ?はっきり言って、僕が行ったとしても、
戦力には、到底ならないし、役にも立たないぞ」
当然の疑問だ。僕一人が、ヤクザの一味に飛び込んで行ったとして、
何も変わらない。人質が一人、増えるだけだ。
なのに何故だ?こいつには他の理由があるのか?
僕を連れて来いとか、そういう条件があるとかじゃないだろうな。
「ただ向こうに殴り込みに行かせて、フルボッコされてる間に、
私がお父さんを救出する、という手順だけど。
どうせ、どれだけ殴られても、蹴られても、悪ければ銃で撃たれても、
最終的には死なないんだから良いんじゃない?」
こいつは俺を殺す気らしい。まぁ、死なないけどさ。
幾ら死なないって言っても、痛いモノは痛いんだぞ。
腕とか切断されても、ちゃんと切り口から接着できるし、
傷の治りが、常人の数倍程だけど、骨折したら、治るのに最低でも、
三日は掛かるんだぞ。そこんとこ理解しろ。
なんて、言うことも出来ず、口の中だけで呟いた。
ゆっぺんさん No.10802157 2011年03月15日 20:25:47投稿
引用
人間ではないと思われる僕は、はっきり言って死ぬ心配は必要ないが、
監禁とかされると結構痛いんだよな。
「まぁ、しなないってのは本当だけど、結構曖昧なものなんだぞ」
「曖昧?どういう意味で?」
「不死身ってあるだろ。あれは結構曖昧で、よく分からないとこが多いんだよ。
もし、宇宙に放り出されたら、身体中にかかる圧力がなくなって、
身体が保てなくなる、っていう説があるけどさ、
不死身だったらどうなるんだ?って話だ」
喋りつつ弁当を片づけながら言葉を続けた。
「それとか、溶岩の中に放りこまれたりしたらどうなるのか。
そういうところが曖昧なんだ。まだ自分自身でも解明できてない。
というか試す気が無い。もしものことがあったら怖いからな」
又は、試してみたいと思うが、そう簡単にできることじゃない。
宇宙なんてそうそう行ける場所では無いし、溶岩なんてそうそうある場所も少ない。
世界には存在しないものなのだから、前例が無いのも無理はない。
ゆっぺんさん No.10872476 2011年03月31日 11:57:05投稿
引用
貴方だけが頼りなんだから」
「今思ったが別に僕じゃなくても大丈夫じゃないか?
ここに住む人間は特別なやつが多いから、俺より役に立つやつなんか
まだまだいるだろ」
「身近にいるんだから、探す手間が省けるじゃない。
それじゃ頼んだわよ」
言い終わると同時、まるで狙ったように重たいチャイムが鳴り響いた。
彼女は踵を返して自分の席に戻って、鞄の中に弁当を入れた。
深い落胆の溜め息を吐いて、此方も弁当を仕舞う。
椅子に深く座りなおして、授業に備えた。