鼻血のついたティッシュ [スレッド]

特異な猫 No.10677186 2011年02月01日 23:59:32投稿

今日も同じ風景だ。
黒い部屋で変わりが無い。
今日もいつもと同じ空気だ。
ジメジメして暗い
今日もいつもと同じ声がする。
諦めにも似たため息が。

ぼくはもうここに何年いるだろう？
<外>の情景がわからない。<外>の意味すらわからなくなるほどここにいる。
あぁ、そうだ。幾らか前にここにきたやつが言ってた話を回想してみよう。

特異な猫 No.10677226 2011年02月02日 00:22:15投稿

引用

男は若かった。
男は会社では目立たない者であった。
仕事ぶりもそこそこ、問題は起こさない。

だが、同い年の上司が会社にはいた。
上司は男と男の彼女をよくいびっていた。
男の彼女はそれに一言も反論せずただただ唇を強く噛むだけであった。
男はその彼女を見ていられなかった。

友人は男にときどき上司の悩みをぶつけていた。

特異な猫 No.10677233 2011年02月02日 00:28:47投稿

引用

男は彼女の悩みを聞く事しかできなかった。
[すまないな…なにかしてやれることはないか？]
{大丈夫だよ。聞いてもらえるだけ幸せさ}
彼女の声は震えていた。

上司のいびりはエスカレートしていった。
彼女はそれでも言い返さなかった。
だが目は赤くなっていった。

特異な猫 No.10677236 2011年02月02日 00:34:34投稿

引用

男は彼女に呼び出された。
いつもなら男の方から不満を聞いてやるのだが
今回に限ってはなぜか彼女から声をかけてきたのであった。

[どうした？]
{・・・あのさ}
彼女は喉から出るようなかすれた声で言う。
[ん？]
{上司を…}
とまでいったところで俯いた。そして、深く息を吸い
{殺してほしい}

静まる。だが、彼女の目はすでに赤くそまっていた。

特異な猫 No.10677242 2011年02月02日 00:48:56投稿

引用

彼女は続ける。
下準備は出来ていると…
ーちょうどよいー
男は彼女に協力する事にした。
彼女は徐に計画を話す。
{今日上司を私の家へ呼ぶ事になっているの。そこで飲み物に毒を入れるから死体を処理するのを手伝って。}

男は手際よく手袋などの用意を済ませあとは実行のみの状態にした。

特異な猫 No.10677248 2011年02月02日 00:58:00投稿

引用

当日

彼女は上司をもてなす、というより殺すための用意を終えた。
小一時間後上司が彼女の部屋にやってくる。
男は彼女と一緒にもてなすという形で彼女の家にいた。
上司の飲み物に毒を入れ、そのあとは睡眠剤で心臓の動きを徐々に弱らせ殺す。
表向きは心臓マヒにしか見えない。

あとは救急車で危篤っと。

と、ここで上司がやってきた。ーご機嫌だ
上司はあたり構わず馬鹿騒ぎをし馴れ馴れしく接してきた
飲み物を飲む前ーというより死ぬ直前の一言は

お前らの能は俺にメシを奢る事くらいだな。

上司は急に倒れた。

特異な猫 No.10677252 2011年02月02日 01:02:10投稿

引用

男は手際よく睡眠剤を多量に投与する。
毒もともと心拍数が弱い。少し多ければ睡眠薬でも死ぬ。
だがなぜ毒で殺さないかと言うと検死に引っかかるかもしれないからだ。
酒に睡眠薬ならアルコールによる雑魚寝でも十分通る。睡眠薬を入れていても
きづかないだろう。

男の心拍数は上昇、上司の心拍数は低下していった。
ーそして

上司の心臓はリズム取らなくなった。

特異な猫 No.10677256 2011年02月02日 01:09:17投稿

引用

あとは、上司が危機的状況ということを電話だけ…
と受話器を取ろうとしたとき悲鳴が起きた。ー彼女であった。

隣人が駆けつけると血相を変えて男の方を見て言う。
{この人が殺したんです！}

男は額然とした。
ーこいつは上司でなく俺までも消したかったのか…？
じゃあ俺はなんなんだ…？
こいつは利用したかっただけなのか…？

男は徐に包丁をキッチンから取り出した。

特異な猫 No.10677258 2011年02月02日 01:12:50投稿

引用

男は手にした包丁で押さえ込もうとする隣人を切り裂く。
逃げようとした彼女を切り裂く。

頭髪。
四肢。
乳房。
臓器。
頭部。

裏切られた悲しみより自己価値の喪失の方が男にはおおきかったのだ。

後にこの事件は警察により、
容疑者一名、被害者三名内二人が死亡と伝えられた。
生き残ったのはー彼女であった。

特異な猫 No.10677261 2011年02月02日 01:18:42投稿

引用

ーーという話だ。

ぼくには<外>の概念は分からない。
けれども悲鳴はたくさん聞いた。
これからその男の死刑が執行される。

男はぼくの前に立った。男の顔は歪んでいた。

執行人が質問する。
何か言い残すことはないかと。

男は
[失うものは何もない。自分さえも。]
と言った。
執行人はしかと承ったと了解し後ろへ下がる

男はついにぼくの上に座った

大臣が死刑執行の書類を読み上げる。

電流がぼくを伝って男の体を貫いた。
男の死に顔は歪んだままだった。

以上